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残された勇者たち

明田学(あきたまなぶ)


「だから嫌だったんだ!!秀治を裏切るなんてよ!!」


残された俺たちは⼤いに揉めた。責任転嫁の嵐。かくいう俺もそれに⾝を投じている。


実を⾔えば俺は秀治のことが嫌いだった。⼩さい頃から俺のポジションであった⾯⽩くて騒がしい奴ポジションを奪いやがった。


しかも、俺と違って気遣いもできるし勉強も運動もできる。完全な上位互換。


だから秀治に能⼒がない、E 級。そんな事実は俺にとってとんでもない朗報だった。


朗報だと、思っていたのに。


秀治には能⼒があって、流でも倒せなかった魔物を倒せた。


俺はそれが、たまらなく苦しかった。やはり秀治はすごい⼈間だ。そう思ってしまったから。


そこまではまだいいだろう。問題はここからだ。


⼆⼈の S 級の離脱。裏切りに嫌気がさした流と瑠⾐ちゃんが秀治について出て⾏った。


これがきっかけで最初に裏切ったのは誰だと不⽑な争いになった。裏切ったのは全員⼀緒だというのに。


「もういいわ。あたし抜ける。じゃあね」


そう⾔って、小山田真希(おやまだまき)は⽴ち去った。これで、いつものメンツは3⼈⽴ち去ったことになる。残った木嶋鶴(きじまつる)はというと、


「許さない。秀治を許さない。邪魔した瑠⾐も。私を捨てた流も」


この調⼦だ。もうやってられない。


「どーしてこうなった」


俺は誰にも聞こえない声で呟く。


秀治が⽣きてさえいなければ。S 級が⼆⼈も抜けることはなかったはずだ。


そうだ。


「全部悪いのは秀治だな」


そう結論して俺も⽴ち去った。


次の⽇。残された勇者の招集がかかった。昨⽇はいなかった偉そうな⼈たちが増えている。


王様が話し出す。


「よく集まってくれた、勇者たちよ。今⽇は⼤事な話がある。アリア」


「はい、お⽗様」


続きを姫様が話す。


「東はトラント王国。⻄はフワイゼ連邦国家。南はイベンツ共和国。各国の代表者がここクラリス王国に集まってくださいました」


ほーん。だからなんだというのか。


「勇者様にはこれから3つのグループに分かれていただいて、各国の魔王の魔の⼿を断ち切っていただきたいのです」


なるほど。勇者の⼒を借りたいのはこのクラリス王国だけではないと。だから分かれて救助に⾏ってくれって訳だ。


「えーと、グループは私たちで決めていいのでしょうか」


そう聞くのは出雲陸斗(いずもりくと)。クラスで⼆番⽬に⽬⽴つ集団の男⼦だ。今ではこのクラスのリーダーポジション。俺ができればよかったのに、C 級、覗き⾒る能⼒と、上に⽴つにはきついステータスだ。


出雲陸⽃は能⼒を真似する能⼒。加えて A 級。今ではかなり⼒を持ってクラスに君臨している。


あれは流が消えて清清してるって顔だ。俺が⾔えたもんじゃないが、ひでー奴。


「ええ、構いません。ただ、⼀つだけお願いしたいことが」


「なんですか?」


「3グループとも、戦⼒に⼤きな差をつけないで欲しいのです」


なぁるほど。どこも勇者の⼒が欲しい。だが、どこかの国に戦⼒が偏れば、そうでない国は当然異議を唱える。


平等。それが⼀番揉めなくて済むもんな。


「わかりました。そのようにグループ分けいたします」


陸⽃がそう答える。すると突然真希が、


「あたし⼀⼈⾏動で良くないですか?」


と⼝にする。


「⼀⼈で動くのが適した能⼒だし、7⼈の A 級を3グループに分けようとすると⼀⼈余るし。魔物倒してるかどうか監視の⽬でもつけておけば、それで良くないですか?」


よくまぁこの空間の中でそれが⾔えたものだ。だが、確かに7⼈の A 級を3グループに分けることは難しい。⼤きな戦⼒の差をつけるな、と⾔われているからな。


真希の能⼒は⾃分の⾊を⾃在に変える、というものだったはず。集団で戦うよりも単独で奇襲とかしてたほうが使えそうな気はする。筋は通っているのだ。


「・・・いいだろう。⼀⼈⾏動を許す。リードル、マキについていくように」


「は!」


認められるのかよ。つーことは俺たちのグループで残るのは俺と鶴だけ。今鶴はヘラってるし、俺たちは C 級。俺は発⾔⼒を急速に失っていた。


うん。秀治を許せないのは鶴だけじゃないぜ。ここにも俺がいる。


あの頃は俺だって、クラスのトップグループの⼀員として随分と幅を利かせてたもんだってのに。


今じゃ⼩粒もいいとこだ。


「では会議室にお連れいたします。皆さん、こちらへ」


姫様が俺たちを先導する。


そして会議室でのこと。


「だーかーら!!俺はいろりと組むって⾔ってるだろ!」

 

「狙ってんのバレバレなんですけど。D 級に選ぶ権利ねーし」


「違うわ!俺の能⼒と相性いいからって理由だっつーの!!」


「お前の能⼒なんか秀治以下だから。シナジーとか考えるだけ無駄」


根本舞(ねもとまい)茶柱秋(ちゃばしらあき)が⾔い争っている。


秋は一ノ瀬(いちのせ)いろりとの幼なじみらしい。いろりちゃんは可愛いしおっとりとした性格だ。そのうえ胸がでかい。それが災いして男⼦からよく狙われる。その度に秋が品定めするってのはお決まりだった。


今回は舞がどさくさに紛れていろりちゃんを狙っていたらしい。⾺⿅なやつ。いろりちゃんは俺が貰うっつーのに。


突如ギロリと秋に⾒られる。え?何あいつ読⼼術でも持ってんの?えーと、冗談ですよ?


俺がにっこり笑いかけると秋は満⾜したように舞との⼝論に戻る。怖、あいつ。


⾔い争いはここだけで起きてる訳じゃない。


「ねぇ陸⽃くん。私と組んでよー」


「⾊仕掛けとかやることずるいわー。こんな⼥に騙されないでよね、陸⽃くん?」


「何⾔ってるかわかんなーい。そういうこと考えるほうがいやらしいことしようとしてるって証拠なんじゃないの?」


「あんた本当いい性格してるわね」


D 級⼥⼦、駒田(こまだ)ちいと山田一夏(やまだいちか)が、A 級男⼦、出雲陸⽃の⼥になろうと必死に蹴落としあっている。わざとらしく胸元を広げ、誘惑しているのがバレバレなちいちゃんと、まともなことを⾔っているようで、スカートが極端に短くなっている⼀夏。


⾺⿅みたいに必死だが D級勇者は誰についていくかで命がかかっている。こんな戦いはあって当然か。


ちなみに⾔い寄られている陸⽃はデレデレだ。しっかりしろよ現リーダー。羨ましいなこの野郎。


争いは他にも。


時雨(しぐれ)様!どうか慈悲を!」


「私は対等な関係を求めるよ。君のような卑屈な者は必要ない」


「ふざ、けんなよ!!下⼿に出てやったのになんだその態度は!!A 級がそんなに偉いのかよ!!」


「その凶暴な⾃我を持っている君では仲間になりえない。諦めてくれ」


「時⾬ぇ!!てめぇええ!!」


A 級⼥⼦の江田時雨(ごうだしぐれ)に吠えてるのは、D 級男⼦の八田真司(やだしんじ)。時⾬の取り巻きが⼋⽥を取り押さえている。D 級のステータスではどうにもならないようで、⼋⽥はまともに動けない。


やはりというか、当然と⾔うか。多くは低級が上級にすがりつく形で争いが起こっている。


秀治のような⼈をまとめあげる素質は誰も持っていない。そのせいで、俺たち 2 年2組は地獄絵図を繰り広げていた。


あーあ。やっぱり嫌いでも無能でも秀治を引き⽌めときゃよかったかな、こりゃ。


グループ分けには 3 ⽇もかかった。魔王が復活して時間がないってゆーのに、⾺⿅みたいに時間を無駄にしたわ。俺は別にいいけど、姫様途中からピキってたよ?

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