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八重咲きの大飛燕草

作者: 花冠

このお話で、しがらみに囚われている方が、少しでも元気になってくれたら幸いです。

花の一生など、儚い。美しいのは一瞬で、すぐに花は散ってしまう。その後に残るのは、ただ茶色くなった乾いた花だったものだ。そんなことを思って、豪邸の庭で横たわったまま空を眺めていた。横たわっていると、愛犬のバレイアがやって来た。やって来て、顔をべろべろ舐める。大型犬で、犬種はゴールデンレトリバー。

「こら、やめろ。あはは。」

バレイアは、構ってほしそうに顔を舐める。それを押しのけるように、体を起こしたその人は、この豪邸の一人息子である(つばめ) 鶄斗(せいと)である。


彼の職業は、バレリーナ。しかし、鳴かず飛ばずの連続である。現在25歳。家の跡継ぎを迫られており、今度のコンクールで入賞しなければ、辞めさせられると言われている。半ばバレリーナとしての人生を諦めているものの、どうしても手放せないでいる。怪我も決して少なくはなかった。それでも、続けてきたのは、やはりバレリーナとして活躍したかったからなのだ。鶄斗は、夏の終わりで高く感じられるようになった空に、手を伸ばした。

「悪いな、バレイア。遊んでいられない。休憩は終わりだ。稽古に行ってくる。」


鶄斗の一日が終わると、彼の体はもうほとんど動かない。疲労困憊なのだ。ベッドに倒れ込み、そこから死んだように眠りに落ちる。

(俺は、何をして……いるのだろう……?)

不意に涙が頬を伝った。生暖かい。生きていることを実感した。

(俺の一生は、花の一生よりも儚く、脆いのかもしれない……。)

止まりつつある思考回路で、そんなことを思った。


そんな、ある日、鶄斗が庭で舞っていると、ある花が目に入った。それは、八重咲きのデルフィニウムであった。花に興味があった頃、その花の花言葉を調べたことがあった。鶄斗は、花に語り掛けた。

「お前は、本当に美しい色で、花言葉の通りの花だな。確か、花言葉は清明だったか。」

花の前に座り、寄り添うように体を傾けた。方々に顔を向けて咲くデルフィニウムをしばらく眺めた。すると、ふと、ある考えが心に浮かんだ。それは、鶄斗の悩みを瞬く間に吹き飛ばし、被ってきたものがすべて取り払われていくような感覚だった。

(俺は、何に囚われていたんだ???俺には、この花のような清明さが足りなかったのではないか??今まで、型にはめた踊りをし、誰かの思う踊りをして、自分の満足するような踊りをしてこなかったのではないか??)

鶄斗は、心に誓った。今から、自由に咲くデルフィニウムになろうと。自由であるが、整った花びらと美しい色を併せ持っている。鶄斗は、そんな花のように、踊ろうと決意した。彼の迷いは、晴れたのだ。


それから彼がどのように舞ったかは、ご想像にお任せしよう。彼が出たコンクールの結果は、今までで1番最高のものだった。

こんにちは。

いかがでしたでしょうか。読んでいただき、誠にありがとうございます。

ストーリーの展開は、とても単純ですが、誰しも経験する事象が作品の中にあったのではないかと思います。私自身、感じたことをお話に致しました。なので、共感していただけるところがあれば、嬉しく思います。

それでは、またどこかでお会い致しましょう。

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