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タハミーネ様がお帰りになって、季節は夏本番になった。


春に敷地内に家を建てさせてほしいと言ったナルセは、やっと費用がたまったと、ジダンの勤めている工務店に新居を依頼した。


やっとといっても、ナルセは十九歳だ。

十九歳で家って建てられるもんなの?!日本人感覚でいったら信じられないよ!すごすぎる!!

驚きというか賞賛というか、ナルセにそう言うと


「コハルさんのおかげだよ。専属で雇ってくれて、しかも定額で契約してくれたし。夕飯も食わせてもらってたから、もらった金のほとんどを貯める事ができたんだ」

「それにしても若いんだから、遊びたいとかあったでしょ?」


ナルセはちょっと黙った。

それから薄っすらと顔を赤らめて


「雇ってもらった時には、もうシリンが気になってたし…。

俺、何も待ってないから、とりあえず金を貯めようと思って。こんな風に家を建てようとか考えてた訳じゃなかったけど。金はあれば役に立つもんな」


あら♪


「やめて。わらわないで」

「ごめん、何だか嬉しくてね♪そんなに前からシリンを思ってくれてたなんて。近くに住もうと思ってくれたのも嬉しいし。ありがとね」


まぁ、そうかな~♪ とは思っていたけどね!


「こっちこそ住まわせてくれてありがたいよ。マリカとユーリンもいるし、シリンもここにいたそうだったから」


そう言って嬉しそうに笑った。

ナルセの人となりはわかっている。シリンを大事にしてくれているし、シリンの母として安心だ。しかも愛妻家なんて(フライング!)嬉しいよ♪




そんな訳で新居の建築が始まった。

日中はトントン・カンカンと、いい音が聞こえている。


この時期は貴族のお客様もいない。

町の皆様は仕事があるから朝早くにお立ちになる。親方たちが早くからトントンやっても全然OKなのだ♪


家が出来上がったら、いよいよシリンとナルセは結婚する。

といっても毎度教会への届け出と、うちでの宴会だけだ♪


なんにしても嬉しい。マリカ、ユーリン・ジダンに続き、シリンも家に(正確には敷地内に)残ってくれる。ナルセも増えるというおまけつき!人が多いのは賑やかでいいね♪

あぁ子離れできないダメな母!でもいいのだ☆


その新居、一月たたないで出来上がったよ。

まぁこじんまりしたものだしね。この世界の建築技術もよくわからないし。

何でもいいか。新婚さんらしい可愛いおうちだからよし!


ちなみに、家具やら家の中で使う必要なものはシリンが買ったようだ。

彼女もしっかり貯金していたんだね。

あら、という事は…? うっふっふ♪


まぁそういう訳で、本日はシリンとナルセが婚姻届けを出しに行って、からの~おめでとう宴会だ♪


主役二人はお誕生日席に座る。

初々しい姿が微笑ましい。こっちまで幸せになるよ♪


宴会はアイシャ達やユーリン達と同じくお昼から夕方まで続き、二人はお開きになってから新居に引き上げていった。

もっと早く引き上げちゃってもよかったのに。どうせ酔っ払いたちは飲めていればいいんだから。


シリン、ナルセおめでとう!

今でも幸せに見えるけど、もっともっとたくさん幸せになるんだよ~!




さて、おめでたい事は重なるもので、アイシャとテオスに二人目の赤ちゃんができました~! 

わー♪パチパチ♪♪(ひとり効果音☆)


お産婆さんの見立てでは、出産予定は十月頃だそうで、シリンとナルセが結婚した七月の終わりには、もうお腹が目立ってきていた。


アディルの妹か弟かぁ♪

アディルが生まれた時も可愛かった。早く赤ちゃん生まれないかな。

十月が楽しみだ♪


アイシャは今回も里帰り出産の予定だ。

前回約二ヶ月の里帰りで、ずっと一部屋を使っていた三人。生まれたてのアディルは寝たきりだったし、テオスは日中仕事に出ていたとはいえ、やっぱ狭かったよね。


今回は動き回るアディルもいるし、元のユーリンとシリンの部屋を、ジダンとユーリンの新婚さんスペースのように改築してもらった。

これで里帰りが長くなっても大丈夫!いつでも帰っておいで♪


アディルの時同様、女子チームは全員赤ちゃんの誕生を楽しみにしている。あ、男子もか。

早く会いたいな。元気に生まれておいでね!


そうそう!

面白い事に、魔獣さんたちも楽しみにしてくれているようだ。


何故そう思うか?アディルを可愛がってくれているからね!

アディルはうちに来ると、楽しそうに一人遊びに見えない一人遊びをしている。たぶん魔獣さんたちが遊んでくれているのだろう。


という訳で、きっと赤ちゃんも可愛がってくれると思う。

魔獣さんって子供好きなのかも。


その予想は大当たり♪

魔獣さんたちは一歳半を過ぎて目を離したら危ないほど動き回るアディルや、生まれたての赤ちゃんの子守りをしてくれているよ。見えないけど☆


小さな子には、大人には見えないものが見えるとかって聞いた事があったけど、そういう事なのかな~。

私も魔獣さんを見たいんだけどな。


イゼルと名付けられたテオス家の次女ちゃんも、アディル(おねえちゃん)と同じく両親からいいとこどりの、将来モテそうな可愛い子だ。


あぁいいなぁ♪ 小さい子のいる生活♪

おばあちゃんはデレデレだよ!


なんて、毎日忙しくも幸せを感じて過ごしていたというのに、そういう時って過ぎるのが早いね!イゼルが生まれて約一月


「今回も長々お世話になりました。もうだいぶ身体も楽になったし、甘えた生活に慣れ切っちゃう前に帰るわね」


必要以上に頼る事をよしとしない、しっかり者の長男長女夫婦は町の自宅に帰っていった。

まぁ徒歩二十分くらいの距離だけど。


だけどその二十分が遠いよ~!

アディルとイゼルの賑やかさがなくなった家は、ずいぶん静かになってしまった。


しょうがない。二日おきのお風呂の日を楽しみにしよう。

私、すっかりおばあちゃんだよね。




まぁ日々の暮らしはよくできているもので、アディルたちがいなくなった淋しさは、今年も開催するお客様感謝デーで気持ちを切り変える事が出来た。


とはいっても、毎年熱烈なリクエストのカレーを大量に用意するくらいで、準備らしい準備もない。


いや、今年は何か追加しようかな。

三年間同じメニューだったし、飽きた人は…、いなそうだけど、選べる楽しさもいいもんだ☆


という訳で、今年はクリームシチューも作りま~す♪


キャリー様の中にはシチューの箱も(買って)あって、うちのご飯で作った事があった。

みんな一口食べて大好物になったよ!美味しいよね!私も大好きだ♪


毎度日本の食品メーカーさんありがとうございます!

おかげさまで具材を煮込んだお鍋に、サラサラサラ~っと振り入れるだけで、簡単に失敗なく美味しいシチューができあがります♪


そして予想通り、感謝デーではお客様はミルクたっぷりのクリームシチューに大絶賛だった!


ちょっと話は逸れるけど(元の世界の)実家では、シチューご飯は普通だった。カレーのようにして食べていたけど、どうやらそれは少数派らしく、シチューにはパンらしい。

パンも美味しいよね!洋風には洋風というのもわかる。


なので、お客様にはご飯かパンかを選んでもらう。パンも日本のパンメーカーさんの柔らかくて美味しいパンだ♪


お客様方、カレーとシチューの両方食べる方が多かったよ。

シチューなら、ご飯とパン両方!とか言われるしね。

そんなに食べて大丈夫かと心配しちゃうくらいだったよ!


全然大丈夫だった☆ 帰り際には皆様から


「来年もまたシチューを出してくれな!」

「コハルさん、シチュー美味しかったわ。また来年も楽しみにしてるわね♪」

「いや、来年と言わず泊りの飯にも出してくれ!」

「でも豪勢な飯も捨てがたい…」

「何にしてもカレーもシチューも美味かった!コハル、今年もいい夜になった、ありがとう」


なんてたくさんのお褒めの言葉をいただいた。

シチュー作ってよかった♪ 

こうして四周年のお客様感謝デーも無事終わりました☆




さて、お客様感謝デーが終わるとすぐに十二月だ。年末にはエラムとローラとシリルが帰ってくる。

毎年この流れがルーチンになってきたな。


シリルは来年成人する。観光大臣なんていう大きな役職に就くから、うちに来るのも今年で最後かもしれない。ちょっと淋しい。


そういえば春にはエラムも成人だ。エラムは卒業したらどうするんだろう?

シリルと仲がいいから、シリルのところ(王宮)に就職するのかな?

帰ってきたらその辺も聞いてみよう。


何にしても三人が帰ってくるのが楽しみだ。

家族が揃うから一年で一番嬉しい。

あと何日と指折り数えるのも楽しい日々だよ♪




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[一言] >十九歳で家って建てられるもんなの?!日本人感覚でいったら信じられないよ!すごすぎる!! プラス10して29歳だと思えば、あまりおかしくないかも、かも? 小春さんは15歳で成人は早いとよく…
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