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年が明けて一月。

相変わらずシリルは忙しそうに候補地に旅立って行った。


まぁ、来て一週間くらいはのんびり休養してるらしいけどね。(本人談)

私を手伝いながら色んな話をして、情報収集や今後の計画をたてているようで、それで休んでいるのかと思うけど。


今年十四歳になるシリルは、当然来年十五歳になる。成人だ。しかもお誕生日が二月なので、実質あと一年ちょっとしかない。

正式に観光大臣に任命されるのは成人してからだけど、すぐに実働できるように環境を作っておきたいんだって。


この二年、出資してくれそうな有力な貴族をうちに送ってきたシリル。

今年の夏にも、あと何組かうちによこして、その人たちも出資してくれたなら、秋から色々スタートできそうだ、と。


叙任じょにんまでにはぎりぎり間に合うかな」


笑顔で言ってるし!恐るべき十三歳!

漠然と観光業を考えていた十一歳もすごかったけど、それをこの二年でここまでもってきたところが物凄い!!


「コハルのおかげだ。このお宿を見て、コハルと話して、やりたい事の形が固まった。まだしばらく世話になる」


ニコニコ。

十三歳の正統派王子様びしょうねんなんだけど、どうも黒いオーラが見えるんだよね。


私が見えない黒オーラを祓っていると(気分!)


「コハル、何をしている…」


王子様が呆れた声を出す。


「いやぁ。シリルの苦労というか、疲労というか、まぁぶっちゃけ邪なものを祓おうかと」

「……」


絶句したシリルの両ホッペを軽くつまむ。


「シリルは上に立つ人だし、まぁ王子様だしね、しょうがない事もあるんだろうけどさ。まだ十三歳みせいねんだよ、小春さんは子供らしく笑った顔が見たいなぁ。せっかく美少年なのにもったいない!」


シリルが噴出した。


「美少年がもったいないって!なんだそれ!」


そのまま大声で笑いだした。


うんうん。それそれ。

エラムといる時に、たまぁに見た事はあったけど、面と向かってのこの笑顔は初めてだ。


子供の笑顔っていいね!しかも美少年ときた。

あ、十三歳って中学生だから、子供っていったらダメかな?


「私はずっと年上の大人だよ。お世話するなんて当たり前!まぁできる事限定だけどね。気にせずド~ンとおいで!」


シリルは笑いを止めた。それから小さく笑うと(これも初めて見る!)


「コハル、頼りにする」


うわぁ…。すっごい、すっごい…。(語彙力!!)

混じりっ気なし、純度百パーセントの無邪気な笑顔は、一目惚れするほど綺麗だった。親子ほど年が離れてるけどね!(異世界基準)


がんばれシリル!




春になった。

こっちがヤキモキするほど進展が遅いシリンとナルセだったけど、毎度お宿のお休みの日の夕ご飯時、二人そろって、みんなにお願いがあると言ってきた。


「シリンが求婚、を、受け入れてくれて…。それで、あの…。この家の隣とか、隣じゃなくても、ジャマにならない敷地内に家を建てさせてください!」


赤い顔をしたナルセは大汗をかいている。

偉い偉い。よく言えたね!


ナルセはこの春で十九歳になったばかりだ。元の世界でいったら私にとってはまだ子供だよ。一生懸命は微笑ましい。


「シリンおめでとう!」

「わー!やっとか!シリンよかったね!」

「シリンよかったね。おめでとう」

「おめでとう。よかったな」

「おめでとう」


ユーリンとマリカが言うと、ちょうどお風呂の日だったアイシャとテオスもお祝いの言葉を続けた。ジダンはユーリンと結婚してから表情が柔らかくなったよ。


「ナルセやっとか。おっせーよ!」

「おっせーな!でもおめでとさん」


今夜はカシムとサリナが来ていて、年下の仲間に寿ことほぐ。

ナルセはますます顔を赤くしたよ。


ちなみにシリンはいつものポーカーフェイス。だけど、ほんのり赤くなっているのがめちゃくちゃ可愛い!!

みんなもそう思ってるんだろうなぁ。微笑ましく見てるし。


「シリン、ナルセ、おめでとう!家を建てるのは、私はいいよ!みんなはどう?」


うちの子たちを見回すと、みんな「「いいよ~!」」と賛成してくれた。

カシムとサリナが羨ましそうな顔をしてるのが笑える。


「シリンもお宿で働いてるし、ここに住むのは合理的だね♪ ナルセはほぼ毎日通ってきてるから、朝はちょっと遠くなっちゃうけど、帰らなくてよくなった分いいね!」


という訳で、シリンも(ナルセも)敷地内で一緒に住む事になった。


新居の建設はもちろんジダンのところだ。

もうしばらく後、お金を貯めてからとの事だけど、親方たちは喜んで請け負ってくれた。

みなさん仕事上がりの入浴とか、お楽しみの一杯なんかを喜んでるでしょ☆


まぁそんなおめでたい事があり、季節は初夏へと移っていった。




今年もそろそろ王都の貴族の方々がやってくる頃だなぁ、と思っていたある日。

王都のエラムのところにいる魔獣さん経由で、シリルから連絡がきた。


出資者候補の羽振りのいい(ここ大事!)貴族の家の子が長患いをしている。温泉は癒しの効果があるから逗留して完治させたいのでよろしく頼む。と。


その子は今年成人を迎える。

一般的に貴族社会では成人して社交界デビューをする。物語によくあるヤツね!


今までは治癒魔法使いにかかっていたけれど、いっこうによくならず、とうとう成人する年を迎えてしまった。

もう時間がない。その子のご両親はわらにもすがる思いでいたところ、シリルの登場だったという訳だ。


シリル、出資者を募るためとはいえ周りをよく見ているなぁ。


ずっと治癒魔法使いにかかっていても治らない病気かぁ…。

いや、治癒魔法使いがどんなものかわからないけどね。何なら魔法使いも見た事がないけどね。うちの魔法?は、見えない魔獣さんたちの魔力だから。


あ、スーさんの魔法は一度見たか。

私の茶髪と茶色の瞳もずっと変わらないし。

とにかく、長逗留の用意をしなくちゃだ。


ちなみに、避暑地への行きの初夏から、王都に帰る夏の終わりに訪れる貴族の皆様の予約は、ちゃんと半年前からされるよ!

シリルは権力を使ってズル込みはしない。

まぁそんな子だったらお宿には入れないけどね!


しかし、どうしよう…。

二つしかない離れは予約でいっぱいだよ。

でも断る事はしたくないなぁ。病気で苦しんでるなんて気の毒だ。うちの温泉で治せるものなら治してあげたい…。


やっぱりこういう時は、困った時の魔王妃様かな☆




『なるほど、話は分かった』


毎度子供たちが寝た後、深夜の源泉。

久しぶりのスーさんに呼びかけると、相変わらずすぐ応えてくれた。そして訳を話すと


『もう一棟ひとむねあればいいのだな』

「そうなんですが、お宿の建築は三ヶ月ほどかかりました。今回離れを一つ増築するといっても、単純計算で一月はかかります。そのお嬢様が来るのは二週間後なんです…」


シリルもわかってて頼んできてるんだろうけどさ。


『だからわたしに話をもってきたのだろう?』

「はい、すみません。いつも困った時に頼って」

『何、かまわぬ。わたしたちは人にできぬ事ができるからな。

おい、お宿は記憶しているだろう。戻ってこい』


フッと、ルナが消える。


『できるものに仕事をふろう』

「ありがとうございます!」


こうして突貫工事で三つ目の離れが出来上がった。

最初からあったと思うほど同じ造りの離れは見事な出来だったよ!


魔族の方々すごいな!!




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