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一応、最低限の生活環境は整ったので、これからの事を考えようと思う。

特に子供たちの行く末ね!


私の事は、まぁいっちゃえばやりようがない。

元の世界に戻れるのかとか、このままこの世界に居続けるのかとか。

何事も神様の思し召しというかね。


元の世界を諦めるにはまだまだ時間が足りないわ。

なんせこの世界に来てまだ一ヶ月もたってないんだから。




バーベキューをした日から一週間ほどたった。

午前中は家事をして、午後はお勉強をするのが日課になっている。


親バカといわれてもいいけど、子供たちは憶えがいい!優秀だと思う!

特にエラムの学習能力は素晴らしい!

それまでの何日かと、この一週間ほどで文字も全部憶えたし、四則計算もしっかり修得した。

女子チームが三ケタの足し引き算に苦労してるといえばわかりやすいだろうか?


「エラムは勉強が好きねぇ。面白い?」

「うん!」

「もっとたくさんの事を知りたい?」

「知りたい!」


エラムは賢いなぁ。知識欲が旺盛でもっと学びたそうだけど、これ以上は私では無理かも。

国語は日本と同じ教え方でいいかわからないし、地理も歴史もこの世界の事はわからない。

私は文系だったから、数学とか科学なんかはもうお手上げだ!

もっと学びたいなら学校に通わせてあげたいけど、この町には学校はないというし…。


でも貴族なんかの学校はあるよね?

異世界物では貴族が通う学園ものなんかがいっぱいあったし、優秀なら庶民でも特別に入学できるとかいう設定もあった。


いやらしい言い方になっちゃうけど、お金ならあるよ!

寮に入ろうと部屋を借りる事になろうと、通わせてあげる事はできる。

どうにかしてあげられないかなぁ…。


なんて案じていたある日。




「学校があったらいいのになぁ」

「学校?王都にはあるぜ?」


お昼ご飯の時に親バカ自慢をしていたら、クバードが何でもない事のように言った。


なんですとー!


「学校あるの?」

「ある。貴族が通うのや、商業者ギルドが経営している商家の跡取りなんかが行くのや、淑女教育なんかのお嬢様学校なんか色々」


ちなみにクバードとアゼルは、あれからもちゃんと毎日やってくる。

勝手に温泉に入ってくれて、一緒にお昼を食べたら帰って行く。


そろそろアゼルの骨折もいいようだ。 

骨折だよ?ほんとかぃな!


しかし、そうなんだ。学校あるんだ。

エラムをジッと見る。


「エラム、もっと学びたい?」

「え? うん!」


そっか~、やっぱりそうだよね。


「なら王都の学校に行く?エラムは貴族じゃないから商業者ギルドの学校になるかと思うけど」

「え? 王都? …って、どこ?」


私はクバードを見る。


「王都はここから馬車で四~五日くらい西にある、この国の中心だ」

「馬車で四~五日…?」


って、距離的にどのくらいなんだろう?

馬車が一日にどのくらい進むかわからないから、距離がわからないよ!


?が並ぶ私たちの顔を見て、クバードは大まかな地理を教えてくれた。

クバードはこの国だけじゃなくて、あちこちの国を渡り歩いていたんだって。


そもそもこの町の名前はケラススといった。(今更だけど初めて知ったよ!)国の名前はキトルス、王都はククミス。


…紛らわしいなぁ。

まぁ南国チックなネーミングは、この気候に合ってるといえば合ってるけど。


国の位置は地図的に(地図あったんだ!)大陸の東方地域のそのまた東、この町はその中でもまた東よりなんだそう。


ほぉほぉ。

東という響きはなんとも馴染み深い。


小国ながら治安はいい方だし、物価も安定していて住みやすいそうだ。

とはいえ、この地域は魔獣の出る森やら荒地なんかがあるそうで、クバード達冒険者はそれらを狩る事を生業にしているとの事。


そうなんだ~。

距離は分からないけど、王都は馬車で四~五日移動しないと会えない場所だという事はわかった。


たったひとりで、そんな遠いところに十歳の子供が行けるんだろか?

いや、行けるかじゃなくて、ひとりでいられるんだろか?

寮とかなら大丈夫なのかな…。


「エラムは十歳だろ?学校には十歳から入れるから行くならちょうどいいな」

「ちょうどいいって、クバード!そういう子って地元…、王都の子が通うんじゃないの?地方の子も通えるの?寮なんかがあるの?」

「地方でも、貴族とか大きい商会なんかの子供は王都の学校に行くのが当たり前だ。義務みたいなもんらしいな」


そうなんだ~。

と、どうも感心ばかりしているわ。


「庶民も入学できるの?」

「貴族の学園にはムリだろうけど、商業者ギルドの方なら優秀と認められれば入れるって話だぜ。ただし金はかかるけどな」

「え…」


黙って聞いていたエラムが青ざめた。

クバードったら!


「エラム、お金の心配はいらないよ!ばーちゃんが残してくれてるものもあるし、小春さんもそのくらいの甲斐性はある!君が行きたいかどうかだよ?」

「……」

「今話したばかりだし、すぐに答えなくてもいいよ。しっかり考えて、自分で決めなさい」

「うん…」


ほんと、流れで急にこんな話になってしまったよ。私もビックリだ。


学校に行くのはいいけど、家族と離れてひとりで遠くに行くのは怖いよね。

自分の将来の事だもん、よおぉぉく考えて決めたらいい。


「にぃに……」


ローラが不安そう呟いた。

あぁそうだね、エラムだけじゃない。ローラのフォローもしなくちゃだ。




スーさんが拾った子供たちは、親を亡くしたり捨てられていた子ばかりだそうだ。

小国とはいえ、この町は属する領の中では二番目の規模でソコソコ大きいらしい。

それなりに大きな町には貧富の差なんてものもあって、やるせない事だけど、貧しさから子供を育てきれないという事も、あるそうで…。


エラムとローラは親が亡くなったのか捨てられたのか、どのくらいそうしていたのかわからないけれど、兄妹ふたりで泥だらけになって必死に生きながらえているようだったって。

スーさんに救われてこの家に連れてこられても、まったく離れる事はなくずっと一緒にいたと、初日にスーさんから聞いていた。


平和な日本育ちの私にはわからない、そういう物語を読んでもきっと芯から理解する事はできない、苦労というか…、哀しみとか恐怖とか、そういったものを、ふたりで乗り越えて生きてきたんだと思う。

兄妹というだけじゃない、強い繋がりというか絆というか。


離れ離れになるのは…、そりゃあ嫌だろうなぁ…。


だけどエラムの学びたいという思いを叶えてあげたい。

学校で必要な知識を学べば、将来就きたい職業に就けるかもしれない。


テオスが、孤児には厳しい世の中だと言っていた。

ジダンの乾いた笑いや、サイードの泣き笑いの顔を思い出すと哀しくなる。

子供たちにはみんな幸せになってほしい…。


そう思っているけど、全員いっぺんにはムリだ。

ひとりひとり丁寧に、本人の意思を尊重しながら手助けしたい。

とりあえず今はエラムとローラだな。


どうすればふたりにとって一番いい事か、たくさん話し合って決めていこう。


急ぐ事はない。

時間は多くはないけど、短くもなさそうだからね。




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