表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/80




夕方の鐘が鳴るのに前後して、上の四人とやらが帰ってきた。


台所には夕食の支度が出来上がっていて、あとは盛り付ければ食べられるってところでみんなを紹介される。


「一番上から、テオス十四歳」


十四歳って中学生じゃん。百六十センチの私より少し背の高い男の子を見る。

濃いグレーの髪は短く清潔感がある。深い緑色の瞳は利発そうで、長男っぽさを醸し出しているなかなかのイケメン君だ。


「アイシャ十三歳」


こっちも中学生か。

私よりやや小さい女の子は、落ち着いた赤い髪に薄いグレーの瞳をしている。

全体的にふんわりおっとりした雰囲気で、こちらもなかなか綺麗な子だ。


「マリカ十二歳」


えっ、小学生なの?!というお姉さんっぽさ。

私より少し背の高い女の子は、真っ赤な髪と、明るい茶色の瞳をしている。

しっかり者の雰囲気をしていて頼りになりそうだ。年齢小学生だけど。


「ジダン十二歳」


えっ!この子も小学生?!なのに子供たちの中で一番でかくて厳つい…。

テオスよりちょい背の高い男の子は、マリカとは種類の違う真っ赤な髪と、濃いグレーのキツイ目つきが印象的な…、というか、厳つい雰囲気をまとっているのはこの顔つきのせいじゃない?

笑えば可愛いかもしれないけど。


「ユーリンとシリンはわかるね。二人とも十一歳」


ユーリンは濃い茶髪と濃い緑色の瞳。

シリンは薄い茶髪と薄い茶色の瞳。

二人とも私より十センチくらい低いかな。

一緒に夕食を作っていて少し話した。

ユーリンは色んな事に興味津々の積極的なタイプ。

シリンは大人しくてはにかみ屋さん。

顔つきも性格も違うのに、とても仲がよさそうだ。


「エラム十歳、ローラ八歳。二人は兄妹だよ」


エラムは明るい金茶髪と明るい茶色の瞳をしている美少年だ。

ローラはこれぞお手本のような?金髪碧眼の美少女だ。

髪と瞳の色は違うけど、兄妹だから顔つきはよく似ている。二人とも将来かなりもてそうだ。


よくある異世界物は中世ヨーロッパっぽい設定が多いから、勝手に西洋人みたいかと思っていたけどちょっと違った。

西洋人にオリエンタルな風味がプラスされているというか…。

エラムとローラがきっぱり西洋人のようだから他の六人の微妙な違いに気づいたというくらいなもんだけどね。


子供たちの後で、私も挨拶をする。


「コハルです。みんなと一緒に暮らす事になりました。よろしくね」


今更だけど自己紹介を少々。

鈴木小春、三十二歳。五年つき合った彼と別れて、なんとなくもう結婚はいいかな~と三十歳でマンションを購入。大好きな物に囲まれて、仕事も生き方も満足しているアラサー女である。

なので切実に元の世界に帰りたい!

マンションのローンだってまだまだあるのだ。両親や妹たちに迷惑をかける訳にはいかないんだよ~!!


脳内自己紹介終わり。


「一緒に暮らすんだ~?」 

「そうだよ。仲良くしてね」

「コハルさんもばーちゃんに拾われたの?」 

「グッ…(言い方!外れではないけれど…)」

「大人なのに捨てられたの?」 

「……(捨てられたのと違うわ!何だかわからんけど)」


異世界転移とか言えないし、何と言っていいか困っていると


「コハルは、ばあちゃんの代わりにみんなの世話をしてくれるんだよ。これからはコハルのいう事をよくきいて、みんな元気に暮らしていきなさい」


スーさんいきなりだな!前置きなしに本題かい!!

子供たちが動揺しているじゃないか!


「え!ばーちゃんどこかいっちゃうの?」

「ばーちゃんいなくなっちゃやだよー!」


子供たちがまとわりつくと、スーさんはうっすら光った。


「そろそろじいちゃんのところにいかなくちゃならないんだよ。じいちゃんが待ってるからね。大丈夫。コハルと仲良くお暮らし」

「そっか~、じいちゃんのところにいくのか」

「じゃあしょうがないね」

「うん、わかった!コハルさんと仲良く暮らすよ!」


スーさん、何やら魔法を使ったんでしょうかね?

子供たちはケロリと見送る体勢になった。

ところでじいちゃんって魔王様の事だよね?

推定四百歳以上なら、たしかにおじいちゃんと言えるけど…。


「じゃあ夕食にしようかね」


スーさんは、これでおしまい。というように食事の催促をした。




夕ご飯のメニューは、スーさんリクエストのケン○ッキー。これとパンを窯の熱で温めた。

石窯ってすごいね!冷めたチキンは、外はパリパリサクサク、中はジューシーになったよ。温められたパンもフワフワだ。


ちなみに石窯はユーリンがご指導してくれた。

徐々に覚えよう…。


それから野菜のコンソメスープと、ちぎっただけの簡単サラダには手作りドレッシングを作ってみた。

家電のない不慣れな台所では、それくらいが精一杯だったよ。


「何これ!初めて見る!いい匂い!」

「こんなご馳走…、本当に食べていいの?」

「うわっ!何これ!!こんなの初めて食べた!!」

「すっげえ美味ぇ!」

「美味しいね~!」

「美味しいね~!」


めちゃくちゃ大好評だった。

さすが世界のケン○ッキー。

パンも日本のメーカーさんは高レベルだしね!


私が作ったものはスープと(スープの素をポチャンの簡単スープ)ドレッシングは手作りと言うのもおこがましい、オリーブオイルに塩コショウをふっただけのものだ。

まぁメインがケンタだから、他はあっさりにしないとね。


「たくさんあるからあわてて食べなくて大丈夫だよ!みんなが満足するくらいあるから!」


わーい!と、みんなガツガツ食べている。

私の言った事聞こえたのかな…。


さて、たくさん?と、気づかれた皆様。

そうなんですおかしいんです!


邪魔だけど、食材が入っているのでキャリーケースもゴロゴロ台所に持っていき、ケンタの入った袋を取り上げたら、あ~ら不思議!ケースの上にはもう一つ十本入りのパックが現れたのです!


錯覚かと思って真面目に目をこすったよ!

二度見、三度見したしね!

ジーと見続けていてもなくならない。

ためしに現れたそれも持ち上げたら、あ~ら不思議!!ケースの上にはもう一つ十本入りのパックが出現!!


もしやと思い、キャリーケースの中の食材も取り出すと、取ったそばから同じものが現れる。

思わず『ポ~ケットを叩くとビスケットがひとつ♪』なんて歌ってしまった。

ポケットじゃないし!叩いてもいないけどね!!

もちろんリュックの中身も同じだったよ。


まあ、異世界転移なんていう現実離れした事が起こっているんだ、何でもありだろう…。

私はムリヤリ受け入れた。

だけどこれってやっぱり、チートですかね?


夕食が終わると、女の子チームが後片付けをしてくれて、スーさんが家の中を案内してくれた。


靴を脱がないので玄関はないのかな?出入り口のドアを開けると、すぐ大きなリビングダイニングになっている。

さっきまでみんなで食事をしていたところね。

台所はその右手。大所帯用に大きい。

その他水回りはまとまっている。


建物は平屋で部屋数が多い。

「多い時は十人以上育てていた時もあったからな」とか。

今は少し余裕があって上四人は一人一部屋。

ユーリンとシリンは同室、仲良しだね~。

エラムとローラも同室、二人はまだ小さいから一人部屋は淋しいもんね。

それからスーさんの部屋と、空き部屋には私が入る。今夜からはスーさんの部屋が空き部屋になるけど。


「井戸と洗濯場は台所の外にある。コハルの仕事は掃除、洗濯、食事の支度、買い物などだ。下四人をうまく使ってやっていけ。上四人は昼は見習いの仕事に出る。弁当も頼む。」


そういいつつ、袋に入った金銀の硬貨を渡してくれた。月々補充してくれるとの事。

ついでに貨幣価値も説明してくれた。


「色々と慣れるまで子供たちに頼りますよ。だけどしっかりお世話しますから安心してください!」

「ああ、頼んだ。困った事があったらあの源泉に語りかけるのだぞ」


そう言うと、スーさんは魔族らしく?夜のうちに去って行った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ