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なかなか衝撃的なことがあった日の夜。

今日はサイードが来た。


町の外まで買い付けに出ていたサイードは、魔獣が出て戻ってこられなかったんだって。

買い付けに行った村で、討伐してくれるのを待っていたらしい。

 

ちょうど討伐した人たちを見たよと、みんなで夕ご飯を食べながら話をする。


「それにしても…、この辺りにはいない筈のAランクやBランクの魔獣がなんでこんなに大量発生してるんだか…」


サイードは思案顔で言う。

ほぉほぉ。


「町の外は危ないの?」

「とりあえず今回だいぶ数を減らしてくれたらしいけど…。また増えないとも限らないし、町の外に出るのは止めておいた方がいいな。といっても、おまえたちは出る事もないだろうけど」


子供達を見回す。


「まぁね!」

「怖い怖い。絶対行かなーい!」


昼間のあれを思い出す。


「騎士さんとか冒険者さんとか、すごく傷ついていたよ。あれではまたすぐに討伐なんていけないんじゃないかな」

「魔獣が増えない事を祈るしかないね」


それにしてもと話は続く。


「何で今までいなかった魔獣が現れたんだろうね?」

「う~ん…。 聞いた話によると、大きな脅威がなくなったから安心して縄張りを広げてきた…、みたいな感じだそうだよ」


……ん? んん……?? う~ん…… 

もしかして…。 心当たりあるかも…。 


「魔獣の脅威っていったら…、神の加護とか?」


いや…。 神ではないな…。


「かもしれないなぁ。みんな一生懸命祈ろうな」


祈ってもダメだと思う! 

源泉に通信だ! スーさ~ん!!




スーさんと早く話がしたかったけど、みんなが起きていたら話に行けない。

なのでみんなが寝るまで起きていようと思っていたのに、いつの間にか寝ちゃってたよ!


今日は出かける用事もない。

ジリジリとしながら家事を済ませ、お昼ご飯を食べたら、ずっと気になっていた字を教える事にする。

昨日テオスにみんなの名前を書いてもらった。 

うん。読めるし、書ける。


リュックから手帳とボールペンを四回出して子供たちに渡す。

私の手帳は新年度の四月始まりの物だから、十ヶ月分はまだ白紙のままだ。そこを練習に使わせようって訳♪


ボールペンの持ち方、使い方を教えて(ここではインクを付けて使うペンだけど形状はそう変わらないでしょ)まずは本人の名前を一人一人お手本に書く。


「自分の名前が上手に書けるようになったら、他のみんなの名前も書けるように練習してみようね!」

「うん!」

「がんばる!!」

「おれの名前ってこういう字なんだ~」

「面白いね!」


興味とやる気があるようで何よりだ。


「じゃあ練習していて! 私はちょっと外を見てくるね!」 


しばし自習にして、ソッコー源泉に走った。




「スーさん!スーさん! 聞こえますか?ど~ぞ!」

『……コハル、数日ぶりだな。どうした?また問題が起きたか?』

「問題はまだまだありますけど、それはぼちぼち改善していきます。それより大変な事になりました!!」


私は今回の魔獣の大量発生の事、たぶんスーさんがいなくなったから縄張りを広げてきたんじゃないかという仮説を、脅威(本人)に話した。


『そんな事が…。まったく忌々しい下等生物が!すぐにでも殲滅してくれるわ!』


魔王妃様こわっ!! 

ハスキーな艶っぽい声で、言ってる事は殲滅とか!


…でもまぁこれで一安心だね!


「ありがとうございます!この町の騎士さんたちとか冒険者さんたちとか、しばらく戦えないようなケガだったから助かります!」

『魔界でも五指に入る強者を向かわせよう。殲滅させた後も時々マーキングさせにいかせるから、今後は下等生物の心配はないだろう』


お礼を言いながら、ついでにもう一つ。


「安心したところで思い出しました。相談というかお願いがあるんですが…」


というのも、お風呂と同じくらい日本人には大事な問題のおトイレ事情ね!


中世ヨーロッパのトイレ事情が最悪と聞いた事がある。ここはそれ程ひどいものではなかったけれど、もちろん水洗ではなく、早々に改善が求められる優先順位上位の案件だった。


それなのに、こちらに来て一週間以上たつのに手を付けていなかったのは、どういう風にしたらいいのか考えあぐねていたからだ。

だってトイレだもん。衛生的に考えてもどうしても水洗にしたい!


水洗水洗……、と考えていて、ふと思い出した。

ローマ人のお風呂の映画だったかな?便座の下に、常時水が流れているという水洗トイレ!

済ませたブツの流れ先の事もあるし(やっぱりスライムさんかな?)これはスーさんに相談だ!と…。


『なるほど、コハルは面白い事ばかり考えつくな。なぁにそれ程の事なら造作もない。夕食が終わるまでには作らせておこう』

「さすがスーさん!ありがとうございます!! あ、温泉の脱衣所にも個室が作ってあるので、ずうずうしくてすみませんがそっちにもお願いします」


ちゃっかりお願いする。


『なに、子供たちのためでもある。コハルが快適で暮らしやすくしてくれるから、わたしは嬉しい』


寛大で太っ腹なオーナーで大変ありがたい!


「色々とありがとうございます! トイレ楽しみにしてますね!」


やれやれ、不安も不満もなくなった。

魔獣がいるなんて、町の外とはいえ裸で温泉に入るのは微妙だったしね。


トイレは本当に嬉しい!

なくならないトイレットペーパーもあるしね!

水洗になればトイレ生活は快適だよ♪


……そういえば、スーさんなら温泉の泉質とか効能とかわかるかな?

わかるならぜひ知りたい。


後日スーさんに効能を聞いたら

「人になら万病に効くだろう」との事。 

さすがファンタジー!ザックリだ!!




さて、出かけなかったから時間に余裕がある。

今夜はちょっと新メニューにしてみようかな。


「そろそろ夕ご飯の支度の時間だから、字の練習はまた明日にしよう」


初めての事に夢中になっている子供たちに声をかける。

そういえばおやつを食べるのも忘れていたね。

まぁ私はいいんだけど。


和食が続いていたから、今夜は洋食?にしようか。

うちの竈は三つある。子供の人数が多い時もあったそうだから、きっとそのためだろう。

三口コンロのようなもんだ。


「今夜はスパゲティにしようね。作る人の特権で私たちで味を選びま~す♪

食べたい味に手を上げてね! 塩味がいい人~?」

「「はーい!」」 一、二。


「トマト味がいい人~?」

「「はーい!!」」 一、二。


「あら、もう一つあったんだけど。クリーム味がいい人~?」

「はーい!」 お、一人移動。


「多数決でトマト味になりました~! 塩味もクリーム味もまたすぐ作るからね!今日はトマト味を作ろう」

「「うん!」」

「コハルさんが作るなら何でも美味しいもんね!」

「スパゲティって初めて!どんなのだろ~?」


と、こんな風に楽しく仲良くやっている。


子供たちは可愛い。

もっと赤ちゃんにも接してみたかったけど、私は産んだ事がないからハードルは遥か彼方の上の方だったろう。

このくらいがちょうどよかったと思う。


夕ご飯の支度はほぼ終わり、後は上の子たちが帰ってきたらすぐスパゲティを茹でられるようにお湯を沸かしておく。

ほどなく「ただいま~」と順々に上の子たちが帰ってきた。


「おかえり~!手洗いうがいをしてきてね!」


乾麺を茹でようとして…、サイードは今日はどうだろう?

作っておいても麺が伸びちゃうよね。

レンジもないから温められないし…。


まぁいいか。スパゲティがちょっと残念でも味は悪くないと思うし、スープは温かいのを出してあげよう。


来なかったら明日の朝のサンドイッチにしちゃえばいいかと、十人分茹でちゃう。

私はよくいえば豪快、悪くえば大雑把なのだ。


子供たちは初めて食べたスパゲティがめちゃくちゃお気に召したようで「美味しい」「美味い」と連呼しながら食べていた。


大皿ドーンではなくて、一人一人に盛り付けて出しているから争奪戦なんてものはない。

足りなかったらお代わりはあるし。


大人数の食卓はかなり賑やかだ。

食事は美味しく楽しくがいいよね♪




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