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「そういえば風呂ですが!髪も身体もすっごい綺麗になっていて、今朝びっくりしました!」


サイードは思い出したように話し出した。

少々興奮していて、どうしたかと思ったけど、すぐに訳がわかった。

そりゃ興奮するよね!私も子供達もニヤニヤしてしまった。


「あぁ、明るいところで見るとわかりますよね。ツヤツヤピカピカだけじゃなくて、手触りもスベスベだったでしょ?」

「はい!ちょっと気恥ずかしい程でした。お客さんにも色々言われたし」


仕事に行っている上の子たちも色々言われたらしい。

詮索する人も出てくるだろうと、お湯で丁寧に洗ったと言うように言ってある。

そうは聞いても、きっとお湯は使わないと思うけどね。何故かって?


この国の(というかこの町がある地域なのかな)気候は、元の世界の亜熱帯くらいと思われる。

一応四季はあるけれど、春と秋ははっきりとはなく、夏と冬を緩やかに結んでいるようなものらしい。


今は初夏だけど、真夏になっても今よりもう少し暑くなるくらいだそうだし、冬場も晴れた日中なら半そでで過ごせるくらいだという。

超冷え性の私にはありがたい気温だよ~!


という訳で?この町の人たちのお風呂事情ではお湯に入る習慣はないらしい。

お湯を沸かすのも燃料費がいるしね。

燃料費といっても薪だけど。


お金持ちなら燃料費を考えなくてもいいけれど、見習いの子供たちはそんな人との接点はない。ないからわからない。


あぁ、そういえば。


「サイード、お風呂に脱衣所と洗い場と、男湯と女湯の間に仕切りがほしいんです。それをジダンのところに頼みたいと思うのですが、直接頼みに行っていいものですか?」

「ジダンのところですか…。まぁ、ジダンがいるのに余所で頼む訳にもいきませんが…」


おや?ジダンのところは問題でも?

サイードは私の表情を見て苦笑いをした。


「親方は腕は悪くないんですが…、人柄がちょっと…。料金もだいぶふっかけられますよ」


あらまぁ。

それはちょっとどうかな。う~ん…。


「あ、でも!ジダンが行っているんだから余所に頼めませんし、考えるだけムダですね!」

「まぁそういう事になります」


親方がどんなに阿漕あこぎな人でも、ジダンのために不義理はできないよね。

幸い腕は悪くないって事だし。


「仕事の依頼をするのに、子供たちを連れて行っても大丈夫でしょうか?」


サイードはちょっと考えて。


「乗りかかった船です。お付き合いしますよ。コハルさんが依頼に行っている間、俺が子供たちを見てます」

「え!サイードのお仕事は?」

「俺も自分の仕事をさぼる訳にいかないので、お昼頃でどうでしょう?こいつらと一緒に昼飯を食ってます」

「ありがとうございます!助かります!」


やったやった!!

やっと脱衣所と洗い場と仕切りができるよ~!

勝手の分からない異世界で人と接するのに不安はあるけど、私もいい年した大人だし何とかするわ!

それよりも切実に!快適にお風呂に入りたい!!


「ユーリン、シリン、明日の昼の鐘の頃、東の広場にみんなで来てくれ」

「うん!わかった!」

「明日町まで行くの?にいにもローラも?」

「みんなで行くよ!」


わーい!とみんな大騒ぎになった。

ずっと家にいて、家の事だけをしていたんじゃつまらないよね。

遠足のようなはしゃぎように、こっちまで楽しくなる。


「さあそれじゃ夕ご飯を作っちゃおうね!みんなが帰ってきちゃうよ!」

「「はーい!」」


今夜のメニューは、またもや忙しくなっちゃったので簡単に生姜焼きにしちゃおう!

ご飯を炊いている間に具だくさんのお味噌汁を作る。

上の子たちは初お味噌汁だけど大丈夫だろう。お昼に出したら下の子たちが喜んで食べていたからね。

野菜切りはローラも手伝ってくれた。

ちょっとあぶなっかしい。


それからキャベツの千切りを大量に作らなければ!

これはお手本を見せたらユーリンとシリンがやってくれた。この二人は手先が器用だな。

お料理が好きそうだし、色々教えたい♪


豚肉は軽く塩コショウで下味をつけて焼く。

お醤油とお酒とお砂糖で合わせタレを作っておいて、豚肉に火が通ってきたらからめる。

すりおろした生姜は香りが飛ばないように最後に入れる。


「おかえり!手洗いうがいをしておいで!もうすぐできるよ!」


帰ってきた子供たちにいつものように声をかける。

いい匂い~!とか、腹減った~!とか言いながら井戸に向かう子供たち。


戻ってくる間に熱々を食卓に運ぶ。

今日はサイードも手伝ってくれたよ。


生姜焼きは大好評だった。

美味しい、美味いとみんなガッついている。

わかるけどね!甘辛味は美味しいし、香ばしい匂いも食欲をそそるよね!


ちょっとオリエンタルな感もあるけれど、見た目西洋人っぽいのに、お醤油系の味を喜んでくれてよかった。

元の世界でも日本食は世界中で食べられていたし、いけるね!


タレのかかったキャベツもモリモリ食べている。

お味噌汁も予想通り大丈夫だった!

お肉もお野菜もいっぱい食べなさい♪


元々そんなに凝った料理ができる訳じゃないけど、成長期の子供たちのために栄養のあるものをたくさん食べさせたい。


賑やかな食卓を見ながら、私もお味噌汁を一口。

あぁ、やっぱりほっとする。日本人のソウルフードだね!




翌朝、慌ただしく出かけていく背中に声をかける。


「いってらっしゃい!じゃあジダン、お昼頃いくから!マリカ、下の子たちをよろしくね」

「…わかった」

「わかってるって!まかせといて!いってきま~す!」


昨日の夕ご飯の時に、明日ジダンが見習いに行っている工務店(でいいのかな?)に仕事を依頼しに行く事を話した。

ジダン、微妙な顔をしてたな~。

サイードの言った通りなんだろう。


ちなみに私が話をしている間、子供たちはサイードとご飯を食べる事になっていて、それならせっかくだからと、マリカが働きに行っているお店に食べに行く事になった。


お出かけするから今日は忙しい。

私たちも急いで朝ご飯を食べるとお洗濯をするために井戸に行く。


昨日スーさんが、たらいに水属性の魔獣を入れておいてくれるって言ってたけど…。

たらいの中を覗いても何もいないよ?

目に見えないものなのかな?

魔獣と言っていたし、見た目が怖かったらお近づきにもなれないもんね。


「魔獣さんいますか~?よろしくお願いしますね」


私は何も見えないたらいに向かって挨拶をした。

子供たちも不思議そうな顔をしながら挨拶をする。

子供たちには、魔法で(説明がしづらいものはみんな魔法だ!)お洗濯を手伝ってくれる怖くない魔獣さんがきてくれるんだよと言ってある。


「コハルさん、魔獣さん見えないけどいるの?」

「私にも見えないけど、始めたらわかるかな?さあ始めよう!」


結果からいうと、魔獣さんはいた。


声をかけながら、たらいに水と洗剤を入れたら水流ができたのだ。おぉ!

その流水の中に汚れ物を入れる。


しばらく洗ってもらったら、洗濯物を取り出して絞る。

汚れた水を捨てて洗濯物を戻したら、どんどん水を入れる。流水ゆすぎってやつね。

水が綺麗になったら終了~!


絞って洗濯ロープに干していく。

いっぺんに洗えるから、ゴシゴシ手洗いするより全然早いし、手も痛くならない。

やった~!



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