11 串焼き屋
宿で夕食を食べたあと、私はすぐに眠くなってしまい、部屋に戻ったらすぐに寝てしまった。
こういうところ、本当に子どもっぽくて嫌になる。
目覚めた時には日もかなり高くなり、早朝に起きれなかった事が悔しかった。
「寝過ごした……」
「昨日は大変でしたからね。熱が出ないでよかったですよ」
「………それもそうね。フィランダーは?」
「ツーベル中を駆け回っておいでです。騎士隊、冒険者ギルド、商業ギルド同盟からそれぞれ手紙が届きまして……」
「そっか。もうお昼近いのよね? 朝食はとっておけなかったのでしょう?」
「本日は……申し訳ございません」
もう時間は十一時だ。さすがに出す訳にはいかないと宿側から拒否されてしまったそう。
「なら、私達だけで食事に行きましょ」
私の願いは通り、皆で食堂へ行く事になった。
「デリックからオススメの店を教えてもらっているので、そこに行きましょう」
「どんな店なの?」
「鳥獣系魔獣専門の食堂だそうですよ」
「いいね。デリックはセンスあるね」
「分かりませんよ。行ってみないと」
「面白そうじゃない。楽しみ」
「面白いですよ。ゲテモノは出てこないので安心してください」
いつの間にか私の隣にはデリックが立っていた。
「え!? ……いいの?」
思わず「表に出てきて」と言いそうになる。
「ここに来てからずっと行ってる店なので、俺がいた方がすんなり入れますよ。それに堂々と護衛が出来ますし」
「そうね。女性だけだと不安よね」
「そうです。食堂にはどこ行っても男が居ますからね。何があるか分かりませんから」
「……あとで若に叱られるわよ」
「承知の上ですよ。シェリル様はちょっと羽伸ばさないと。若の横でちょっと気を張ってる様ですし」
「フィランダーにって訳じゃないけど、女性の目線が……ね」
「分かります」と皆でうなずいた。
もう少しで店に着くところで声をかけられた。
「シェリル?」
振り向くとそこにはフィランダーとトミーが立っている。
「フィランダー」
「宿でじっとしてて欲しかったんだけど?」
「皆で外で食べた方が良いと思って……」
「なら俺も行く。ちょうど食事しようと思って出て来たところだったし」
「いいけど……デリック。この人数でも店の中入れる?」
「あー……少ない時間帯なら大丈夫かと……」
「じゃあしっかり手を繋がなきゃね」
隣をいたデリックを押し退け、まるで当たり前の様に恋人繋ぎをするフィランダーに、私は心の中でため息をついたのだった。
「ここですよ」
デリックが示した建物を見ると、串焼き屋だった。
「定食もありますけど……串焼きの方が色んな種類が食べれるんですよ」
早速中に入ると……お客は誰もいない。
「いらっしゃい。あら! いつものお兄ちゃんじゃない。今日も串焼き?」
聞いて来たのはちょっと恰幅の良い四十代くらいの女将だった。
「今日は仕事仲間連れて中で。ここの串焼きが美味いからさ」
「あら〜嬉しい! 皆さんどうぞ。入って入って」
奥の席に通され、私、フィランダー、ルース、トミーは同じ席、他の三人は隣の席についた。
「定食はハーブ肉定食と、今日のオススメの二種類。今日のオススメはスタミナ定食ね。あと串焼きは単品で頼めるからね」
女将の言葉に私はどれを頼もうか真剣に迷う。
「どうしようかな……ハーブ肉定食も気になるけど、他にも食べたいし……」
「なら、ハーブ肉の串焼きがあるよ。女性なら野菜串もあるからね」
結局女性陣は皆、ハーブ肉の串焼きと、三種の鳥もも肉の串焼き。あと四種類の野菜の串焼きを注文。
男性陣は三種の鳥もも肉の串焼きに、三種の鶏胸肉の串焼き、手羽先のハーブ揚げに四種類の野菜の串焼きを注文した。
カウンター席の前で女将さんと同世代くらいの男性が串焼きを真剣な表情で焼いているのが見える。これは期待できそうだ。
「はい。お待ちどうさま」
焼きたての肉がどんどんテーブルに並べられ圧巻の光景だった。お祈りしたあと、鳥もも肉にかぶりつくと、口の中でじゅわぁと肉汁が広がる。
「美味しい……」
「美味い、これ。よく見つけたな、デリック」
「お褒めに預かり光栄にございます」
「お兄ちゃん。そんな口調出来たんだね。おばさん感心しちゃった」
「酷いなぁ〜。俺もしっかりしてるんだよ」
短期間しか来ていないはずだが、もう気安い仲の様だ。
ハーブ肉の串焼きも美味しいし、ちょっとだけフィランダーから手羽先のハーブ揚げを頂いたが、これも絶品だった。野菜のみの串焼きがあるのも嬉しい。
「美味しかった」
「美味しそうに食べるからこっちも嬉しかったよ。お兄ちゃん、連れて来てくれてありがとね。今日は幸先悪いと思っていたところなの。お兄ちゃん達のお陰で満席になったわ。ちょっとサービスしとくわね」
「いや、これは……」
「ここに来た時はまた寄ってね」
そう押し切られ、ちょっとだけサービスしてくれた。
「良いところだったね」
「図らずもシェリルと外食できてよかったよ」
「また戻るの? 今度はどこ?」
「……冒険者ギルド。でもここで出来ることは少ないし、明日にはここを立とうと思う」
「大丈夫?」
「うん。まだ警戒しないといけないけど、俺が出来る事はやったって感じかな。一応視察中だからさ」
確かにずっとここにいる訳じゃないけど……大分予定外の事が相次いだから最悪邸に戻るのかと思ってた。
「やっとランガ村に行けるのね」
「ここまで足止め食うと思わなかったよ。……想像以上にやらかしてくれたな」
「今分かって良かったじゃない」
「……うん。シェリルのお陰。やっぱりシェリルは俺の女神だなぁ」
「そうじゃなくて。領民達との会話が足りてなかっただけでしょ」
「……だよね。してるつもりだったんだけどな」
「……にしても、冒険者を一斉に辞めさせて何をする気だったのかしら?」
「分からない。もう皆、この街を出て行った様だし……。視察中にまた大きな問題が起きたら、ランガ村までまた行けないかもな……」
「早く行きましょ。私は寝てれば大丈夫だから」
するとフィランダーが苦笑した。
「もう、あんなに馬車飛ばさないよ」
翌日、私達はツーベルを出て、ランガ村へと向かった。




