16 問題教師
曲が終わりお兄様は私をフィランダーに渡した後、エイダの元へ向かった。実は挨拶ついでに二曲目を踊ると約束していたのだ。
なので今はフィランダーと二人きり。しかも彼は少ししょんぼりしていた。
「変な画策すると、痛い目に合う事を今日知りました」
「遅いですよ。残念でしたね」
「えぇ……とても。……いけませんね。焦ってしまって……」
「焦る?」
「はい。学園祭に行って、貴女の剣舞を見ました。……惚れ惚れするほど素晴らしい舞でした」
「……そうですか。ありがとうございます」
「あれで惚れた人がどれだけいたのか……貴女は分かりますか?」
「……先程兄には聞いたのですが……剣舞の舞が良かったのは教えてくださった先生が良かったのでしょう」
「先生?」
すると音楽が流れ始め、私達は慌てて手を組み踊り始めた。
「先生とは?」
「冒険者のアーサー先生です」
「冒険者アーサー……高名な剣の指導者ですね。そうか……彼が教えたのか」
「お陰で一戦くらいは戦える様になりました」
「……一瞬忘れていましたよ。そういえばお身体が弱かったのでしたね」
「忘れないでくださいませ。三曲目まで踊ったら、私は確実に倒れます。……貴方と初めてお会いしたパーティーの時だって、ギリギリだったのですから」
「それは……失礼しました。私がお運びすれば良かったですね」
「……しないでくれて良かったです」
こんな会話をしているうちに曲が終わってしまった。
「もう!? ……早過ぎる」
「では、私はもう戻ります」
「一緒に行きましょう。それにしても……来年が楽しみです」
「……なぜです?」
「お兄様は騎士団へ行くのでしょう?」
「なぜそれを……」
「俺の父親が誰か、忘れたのですか?」
「……あ」
騎士団長でした。
「来年のファーストダンスは空けておいてくださいね?」
「……どうでしょう?」
「ステイシー嬢のお兄様方に頼んでも無駄ですよ? 伝手がありますから」
私は逃げ場を塞がれてしまった。
無事パーティーが終了し、次の日はいつも通り熱を出して寝込んだ。
その後何とか復帰して無事、一学年を終える事が出来た。
テナーキオ歴 百十五年 秋
新学期。
二学年に上がってもクラスはこのまま変わらなかった。
そのまま一年生の時と同じ様な日々が送れると思っていたある日、剣舞の授業で突然一対一の対戦をする事になった。担当教師のブロウ先生が不在で代わりに来た男性教師が言い出したのだ。
「いつも型ばかりでつまらんだろう」と教師としては気を利かせたつもりの様だ。多分私の事情を知らない教師なのだろう。私は教師に事情を話した。
「あの……私は体力がなくて、一戦しか交わる事が出来ません」
「何? 体力もない奴がなぜ剣舞を取っている」
「なぜって……正式な手続きを踏んでいます」
「ふん。俺は聞いていない。単位を取りたくば俺の言う事に従いなさい」
聞く耳を持たない教師に私は頭が痛くなった。
「大丈夫?」
「ステイシー……倒れたらよろしく」
「……分かった」
第一戦目は私のスピード勝利に終わった。
「動けるじゃないか」と教師は私を嘘つきの様な目で見ている。
ところが、第二戦目は嫌な人に当たってしまう。時間をかけて倒してくるタイプの令嬢だった。
ついてないと思いつつ、対戦が始まった。
私が懐に入ろうとすると、相手はすぐに間をとって後ろへと足を踏み切る。何回かそうされているうちに身体がぐらつく。そして……相手が私を倒そうとこちらへ駆け様とした時、私はふらついて倒れてしまった。
倒れる直前、「シェリル!!」と言う声が、聞こえた気がした。
気づくと私は保健室のベッドの上にいた。
うぅ……やってしまった。
「あの……どなたかおりますか?」と尋ねると、仕切っているカーテンがシャッと音を立てて開いた。
「起きた? 体調は?」
寄って来たのは茶色の髪を持つ女の保健医だった。
「大丈夫です」
「一応、回復の魔法をかけたからね」
「お世話かけます」
「いいえ。貴女の対応が正しかったの。あの教師……しばいてあげたから安心して」
「え?」
話を聞くと、私はステイシーともう一人の令嬢の手で保健室に運ばれて来たらしい。そして私の体質の事を知っていた保険医は、私に回復魔法をかけてから、その授業に乗り込んだ。
「脳筋教師が!! 生徒の事も把握せずに授業するなぁ!!」
「え……うわぁ!!」
保険医はなんと同輩らしく、脳筋教師は剣でボコボコにされたそうだ。
しかも脳筋教師は回復魔法を使えたそうで、回復魔法を私に施さないまま「授業の邪魔だから連れていけ」と言ったらしい。その事も教師の失態になるとの事だ。
それがなんと学園長にも報告が行き、脳筋教師は謹慎処分になったのだと言う。
「元々授業に問題があった教師なのよ。貴女には悪いけど、良い結果になってよかったわ」
「でも……やはり授業中に倒れると……迷惑が……」
「大丈夫よ。剣舞の授業をしている皆は貴女をお手本としているし、ブロウ先生にも連絡をとったら『優秀な生徒だから辞めさせる様な事はしない』って」
「……そうですか」
「それに、私は貴女に感謝しているのよ。脳筋バカの事もそうだけど、魔法関係の事を積極的に学んでいるんだって?」
「はい。……テナージャの方にとっては、見苦しいかもしれませんが……」
「とんでもない! そう思っているのは一部のテナージャ人だけよ。むしろどうして気づかなかったんだって、皆頭を抱えたわ。テナージャ人とシランキオ人の理解が進まないのはそれも原因だろうってね。実は学園長、国王にもその事について報告に行ったの。もしかしたら早いうちに、シランキオ人も魔法系の授業を受けれる様になるかもしれない」
「本当ですか!?」
「実践は無理でも、魔法学とかは学んで損はないもの」
結果的には良い方向へと向かった様だ。
「ただ、無理はしないでね。特にシランキオの女の子は、たまに身体が弱い子が多いから……」
「どうしてでしょうね?」
「うーん。詳しい事は分からないのよね。男の子はそんな事ないのだけど……」
私の様なシランキオ人の体力のなさは、謎に包まれているのだそうだ。
登場人物紹介
名前 シェリル・アストリー
所属 貴族 アストリー伯爵令嬢
年齢 17歳
容姿
・髪 ストレートの黒
・瞳 黒
・体型 AAAカップ やや引き締まった身体
・顔 前世の姉に近い顔
・身長 161cm
魔法 なし
名前 ステイシー・ロドニー
所属 貴族 伯爵令嬢
年齢 17歳
容姿
・髪 くすんだ橙のゆるウェーブ
・瞳 黒
・体型 Dカップ 細マッチョ
・顔 つり目にそばかす 貴族の中では平凡
・身長 170cm
魔法 雷魔法 低
名前 エイダ・バーリス
所属 貴族 伯爵令嬢
年齢 17歳
容姿
・髪 黒のストレート
・瞳 黒
・体型 Bカップ
・顔 涼やかな瞳 メガネ 貴族の中では平凡
・身長 157cm
魔法 なし




