18 ワインの試飲
『じゃあ、私も帰るわね』
オーロラも消えてヘインズ領の邸に戻った様だ。
周りを見ると、クライグとアンブローズがため息をついていた。
「……妖精と契約って……すごくね?」
「あの大きい子は妖精じゃないんじゃないかな?」
「大妖精だよ」
「……頭痛くなってきた」
「お前らさぁ……もっと常識ってもんを持ってくんない?」
どうやら二人は困惑している様だ。
「シェリルと一緒にいれば非常識も常識だよ」
「え、そうだったの!?」
「思えば結婚式の頃からそうだったし」
「……そういえば、全属性の精霊から祝福もらったんだったっけ?」
「……新聞の誇張じゃないのか?」
「全部真実」
そう言うと二人は机に突っ伏した。
すると部屋のドアがノックされた。
「デザートが来たみたいだから、とりあえず食べよう」
最後に来たのは旬のフルーツがふんだんに乗ったタルトだった。
「うまぁい」
「うん。いい味」
「……何かさ。今日は色々ありすぎて……現実感湧かないんだよなぁ」
「本当それ」
私に怒られたり、影に入っていた敵を見つけたり、その敵が行方不明の人だったり、大妖精が現れて妖精と契約したり……確かに盛り沢山だ。
「シェリルがいなかったらこうはならなかったね」
「……それ、どういう意味?」
「シェリルのお陰で色々気付けたって意味。……特に王太子にしてやられたのはショックだったよ」
「俺も」
「まさかだよね。……もっと早く気づければよかったんだけど」
あぁ。あれね。
ちょっとしんみりしていると、アイボリーが戻ってきた。
『……ただいま』
「おかえり。タルト食べる?」
『……いらない。花がいい』
「……花、食べるの?」
『違う。ベッドにする』
そういえば花壇の事をベッドって言ってたっけ。
「……何か言ってた? 父上か母上」
『……定期的に連絡してくれって。……あと邸内の敵より味方を集めたいから、俺が少し協力した』
「ありがとう」
『花壇、ある?』
「クライグ。花壇あるか?」
「あるぞ。母上が育ててんのが」
『……先に帰ってる』
ふよふよとクライグのところへ飛んでいき、蔓を彼の額にくっつけた。
『じゃあ、クライグの家の花壇で寝る』
そう言い残してアイボリーは消えた。
「……これが日常になるのか……」
「慣れれば楽だよ。ただ、アイボリーはクールな子みたいだから、ちょっと簡潔なところがあるかもだけれど」
「おしゃべりよりいいじゃねぇか」
「……それもそっか。フィランダー、シェリル。ありがとう。今日は色々勉強になった」
「俺も。情報が多すぎて処理できてねぇけど」
「それは俺もだよ。……色々改めないとね」
こうして食事会はお開きになり、クライグとアンブローズは裏口から密かに帰ったのだった。
私達は表から馬車で邸に戻った。
「すっかり遅くなっちゃったね」
予定よりも一時間も遅くなってしまった。
「その分ゆっくり食べれたから俺は満足」
「うん。料理美味しかった」
馬車の外を見ると、まだきらびやかな灯が目に入る。
「……ゆっくり夜の街を見るの初めてかも」
「建国祭の後は?」
「……いつも疲れて寝るか、家族とおしゃべりしてて……窓の外見てなかったなぁ。行く時はたまに見てたけれど……」
「じゃあシェリルの初めての瞬間に立ち会えたって訳だ」
「……大げさ」
何となく余韻がよく、窓の外を見ながらそれを楽しんだ。
そしてクラッとめまいがして隣のフィランダーに寄りかかる。
「シェリル?」
「……結構疲れてたみたい。ごめん、おやすみ」
「……おやすみ、シェリル」
その声を聞いてから私はまた重い瞳を閉じてしまった。
「……ん……あ」
次に目が覚めた時は王都の邸の自室だった。
「……まだ夜中?」
『はい。そうです』
突然聞こえた声に思わず驚いた。
「え!?」
『シェリル様? 寝ぼけてません?』
「あー……ごめん。まだちょっとボーッとしてるの。この声は……サミー?」
『そうです。食べられそうなら夜食をと思ったのですが……』
「……やめとく。フラフラするから今は食べれそうにない」
『分かりました』
「今いつ?」
『朝が来れば倒れてから二日目の朝です』
「あ、思ったよりも早く起きれたんだ」
『どうします? このまま寝た方がよろしいかと思うのですが』
「そうだね。おやすみ」
『おやすみなさいませ』
次に目を覚ましたのは二日目のお昼だった。
「……朝に目を覚ますつもりだったのに……」
「でもお昼に間に合ったからいいんじゃない? はい、あーん」
フィランダーはあーんする役目は譲らなかったらしい。
「……仕事は大丈夫?」
「うん。平気。シェリル。ノーラは覚えてる?」
「アンブローズの家の侍女さん」
「そうそう。彼女、しばらくシェリルの影をするからそのつもりで」
「は?」
「他に配置しようとすると色々支障が出そうだからさ。シェリルの警護なら大歓迎だし」
「……うん。分かった」
「だって」
天井を見上げならがフィランダーが言うと、声が返ってきた。
『よろしくお願いします』
「え、今日から?」
『はい。昨日十分休暇をもらいまして……久々にベッドで寝れて感激でした』
「え……どこで寝てたの!?」
『任務任務の連続で……人様の影の中で寝たりしていましたね』
うわぁ……過酷。
「疲れたら休んでいいからね」
『……そう言ってくれるのはシェリル様だけです。というか、こんなに自由なんですね。影は必要な時じゃないと発言できないのに……鞍替えしたくなります』
「いつでもどうぞ」
『ふふっ。困った時はよろしくお願いします』
仲良くできそうで安心。
結局その後二日寝込んでから完全復活した。
その後一時的にだが、ノーラに忠誠を誓ってもらった。
復活してからは忙しかった。
パーティーの準備にお茶会の準備。
そして……私のワインの試飲だ。
「赤と白両方用意したけど、どちらがいい?」
「うーん。とりあえず赤で」
赤はエグ味があるから飲めるか心配だし。
赤ワインがグラスに注がれると、二人で乾杯してから飲んだ。
「うん。美味しい。これなら問題なさそう」
「よかった。次はどれくらいで酔うかだね。とりあえず二人でボトル一本飲もうか」
「そうだね」
前世はそれくらい余裕で飲んでたし。
しかし領から来たばかりニールから待ったがかかった。
「失礼します。若、せめてグラス一、二杯にしといては?」
確かに前世の通りに行くかわからないのでニールの案を採用した。
すると……二杯は余裕だったので三杯目も頼み、半分飲み進めたところで異変は起きた。
「何か身体が温かくなってきた気がするー」
「ん。シェリル? 酔いが回っちゃった?」
「えー酔ってないよー。あ」
そう言って私が立ち上がると、テーブルを回り込み、対面にいたフィランダーに横から抱きついた。
「シェ……シェリル!?」
「ん〜いい抱き心地……」
「シェリル……嬉しいけど、ここでは……」
そういうと、私は次の目標へと向かった。
「ネルにもギュー」
「え!? シェリル様!?」
その様子を見たフィランダーはすぐさま立ち上がり、私を回収して部屋の連れて行かれた。
そして翌日。
起きてから私の失態を知った。
「シェリルは飲み過ぎると抱きつき魔になる事が判明しました」
「えー。おかしいな。前世ではそんな事なかったのに……」
「シェリルは前世のお姉さん似だからそっちかもしれないね」
「あ、そうかも」
「それで、二日酔いは?」
「ないよ」
結局ワインはグラス二杯と半分で限界な事が判明した。
「ワインは意外と度数高いからね。今度は度数低めのカクテルに挑戦してみようか」
「あ、じゃあウォーレンの店行きたい」
「それは領に帰ったらね」
「王都でも入れるなら行きたいなぁ」
「……とりあえずウォーレンの店にしたら?」
「ん、何で?」
「王都は色々厄介だからさ」
「ふーん。そうなんだ」
何か隠してるみたいだけれど……危ないなら行かない方がいいか。
慌ただしい日々が続いたある日、久々にお義父様と食事をした。
「実は、明日から遠征に行く事になった」
私とフィランダーの手が止まる。
「え……もうそろそろ、建国祭も始まりますよね?」
「その前に爵位授与式があるの、忘れてない?」
あ、そうだった。
「もしかしたら、爵位授与式には間に合わないかもしれない」
「行き先はどこです?」
「……悪いが言えないんだ。機密でな。だから家に何かあったらフィランダーに任せる」
「承りました」
私は何だか心がざわつくのを感じたのだった。
登場人物紹介
貴族ーーーーーーーーーーー
ヘインズ侯爵家ーーーーーーーーー水
名前 シェリル・ヘインズ
所属 貴族 次期ヘインズ侯爵夫人 元アストリー伯爵令嬢
年齢 18歳
容姿
・髪 ストレートの黒髪
・瞳 黒色
・体型 AAAカップ やや引き締まった身体
・顔 可愛い系の平凡な顔
・身長 162cm
魔法 なし
特殊能力 魔獣と話せる(ただし暴走状態の魔獣とは話せない)
従魔 ヒュー(ホワイトフォレストレオパルト) オーロラ(大妖精)
備考 この作品の主人公 フィランダーの妻 女神の愛子(森の巫女)
名前 フィランダー・ヘインズ
所属 貴族 次期ヘインズ侯爵
年齢 25歳
容姿
・髪 ゆるウェーブの金髪
・瞳 水色
・体型 ヒョロッとした身体(細マッチョ)
・顔 軽薄そうな顔 美形
・身長 180cm
魔法 水魔法 高+(高)※
※カッコ内は本来の魔力量
シェリルに忠誠を誓った人は魔力が一段階上になる
備考 シェリルの夫 社交界では『遊び人』で有名
名前 パトリック・ヘインズ
所属 貴族 侯爵 王城騎士団長
年齢 45歳
容姿
・髪 ゆるウェーブの金髪
・瞳 水色
・体型 がっしり
・顔 真面目な顔 美形
・身長 178cm
魔法 水魔法 高
備考 フィランダーの父 戦いの事以外はポンコツ
ラングトン侯爵家ーーーーーー氷
名前 アンブローズ・ラングトン
所属 テナージャ派 侯爵家 次期侯爵
年齢 25歳
容姿
・髪 ストレートの銀髪
・瞳 緑の瞳
・体型 中肉中背
・顔 垂れ目で柔和な顔
・身長 175cm
魔法 氷魔法 高
備考 前世はピーター・ラングトン 前世でホリーを氷魔法で倒した張本人 現在王太子の側近の一人
バックリー伯爵家ーーーーーーーー土
名前 クライグ・バックリー
所属 中立派 伯爵家 次期伯爵
年齢 25歳
容姿
・髪 ツンツン頭の茶髪
・瞳 茶色
・体型 がっしり
・顔 精悍な顔
・身長 190cm
魔法 土魔法 中
備考 黒は入っていないがテナーキオ人 シランキオ人でもたまに茶髪に茶色の瞳の人が生まれる事もある
使用人ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヘインズ領都組ーーーーーーーーーー
シェリル専属使用人ーーーーーーーーーー
名前 ネル
所属 平民 ヘインズ家侍女
年齢 23歳
容姿
・髪 ストレートの紺色
・瞳 水色
・体型 Fカップ 標準
・顔 魅惑的な顔 タレ目 ぼってりした唇 美人
・身長 162cm
魔法 水魔法 中
備考 シェリル専属の侍女 副執事長ユーインの妻 フィランダーに忠誠を誓っている
名前 サミー
所属 平民 ヘインズ家影
年齢 21歳
容姿
・髪 ゆるウェーブの水色
・瞳 深い青色
・体型 中肉中背(細マッチョ)
・顔 一重 涼しげな瞳 若干可愛い系寄りの顔
・身長 175cm
魔法 水魔法 中
備考 旅行中のシェリル専属の影 既婚 ジェレミーとトミーは兄 三兄弟の一番下 フィランダーに忠誠を誓っている
名前 ニール
所属 平民 ヘインズ家料理長
年齢 27歳
容姿
・髪 赤髪のオールバック 実はゆるウェーブ
・瞳 黒色
・体型 がっしり
・顔 つり目の美形 狐顔
・身長 185cm
魔法 炎魔法 中
備考 ルースの夫
名前 ノーラ
所属 平民 ラングトン侯爵家 現在ヘインズ侯爵家で一時預かり
年齢 22歳
容姿
・髪 ゆるウェーブの水色
・瞳 紫
・体型 やせ型(Cカップ)
・顔 可愛い系美人
・身長 158cm
魔法 闇魔法
備考 侍女兼影 しかし捕まりケネット侯爵家の影に 現在一時的にシェリルに忠誠を誓っている
名前 ウォーレン
所属 平民 ヘインズ侯爵家
年齢 32歳
容姿
・髪 オールバックの銀髪
・瞳 紫
・体型 痩せ型
・顔 柔和な印象の顔
・身長 185cm
魔法 氷魔法 高(中)
備考 シェリルに忠誠を誓っている ヘインズ家の影的な存在
従魔ーーーーーーーーーーー
名前 オーロラ
所属 ヘインズ侯爵家 大妖精
年齢 妖精に年齢という概念がない
容姿
・髪 ゆるウェーブの桃色の髪
・瞳 茶色
・体型 標準
・顔 大きい目のつり目 可愛い系
・身長 114cm
魔法 土魔法
備考 シェリルの従魔 バラの花の様なドレス姿
名前 アイボリー
所属 ラングトン侯爵家 妖精
年齢 妖精に年齢という概念がない
容姿
・髪 ゆるウェーブの白髪
・瞳 茶色
・体型 三頭身
・顔 眠そうな顔
・身長 手乗りサイズ
魔法 土魔法
備考 アンブローズの従魔 パジャマにナイトキャップ




