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01 デート

新連載ですが、全部書き切ったものではありません。

長々とお待たせさせたり、大幅な修正も時にあるかもしれませんので、それらを踏まえてお読みください。

この作品は不定期で一章毎の更新を予定しております。


第一章は全16話。ほぼこの話の過去部分の話です。




「え……誰? ……これ……」


 今、鏡に映っているのは、五、六歳くらいの黒髪黒目の女の子。


「私の小さい時の姿じゃないし……」


 じーっと鏡を見ると、姉の小さい頃に似ている事に気づいた。しかし……


「この部屋には……覚えがないなぁ……」


 実家の私の家より遥かに立派な天蓋付きのベッドが、部屋の真ん中にドンと置かれている。部屋をキョロキョロ見渡してから私は視線を鏡に戻した。


「一体誰? ……貴女……」


 ジト目で鏡に問いかけても、当然答えは返ってこない。


「私は『ホリー・コリンソン』だったのに……」


 そう、私の名はホリー・コリンソン。

 シランキオ王国の王城で、王女に仕える女騎士……のはず。


「どうしてこんな姿に……」


 私はとにかく今までの記憶を思い出した。頭に浮かぶのは、ホリー・コリンソンの記憶。まだシランキオ王国が平和だった頃。


 あの頃の私は幸せで……そして愚かだった。


 平和だった国が一変するなんて、全く信じていなかった……あの頃の記憶。


















 シランキオ歴 二百十一年 冬




 シランキオ王国といえば、二百年以上続く平和な国だ。気候も温暖で通年に渡り過ごしやすい土地としても知られている。

 しかし今年は例年よりも寒い冬に、人々は参っていた。王女の護衛騎士であり、男爵令嬢の私もその一人。







「クシュン! ……あー、失敗した。もっと厚着してくれば良かった」


 今日は騎士団の同期でもある彼氏のビルとデートの日。


 私は非番で向こうは早番。なので夕刻には上がれるため、私は白シャツにラフなパンツスタイルで、王城内の生垣の影になっている場所でビルを待っていた。一つにまとめた長い三つ編みが背中で揺れているのが分かる。

 今日は……いつもの冬以上に寒い。夕方だからこの後更に寒くなる可能性もある。けれど、今から戻ってもまともな上着は持っていないし……どうしようと思った時にビルがやって来た。


「お待たせ、ホリー……どうした? 寒いの?」


 茶色の髪と瞳に整った顔を持つ美形の男が、心配そうにこちらを見ている。


「あ、ビル。……クシュン!!」

「え……これ着ろ、ホリー」


 ビルは隊服ではなく私服だった。自分が着ていた上着を慌てて脱ぎ、私の肩へと掛ける。


「だ……大丈夫だよ。これはビルのなんだから……」


 私が脱ごうとすると、ビルは私の両肩に手を置き脱がすのを阻んだ。


「俺は平気。それより上着は? 今日は寒いだろう」

「……冬でも上着なしで過ごしていたから……上着持ってない。隊服はあるけど……」

「……そっか。いつもはなくても平気だもんな。……まだ店は開いているし……服買いに行くぞ、ホリー」

「え……いいよ」

「よくない。俺が買うから心配するな」

「私が払う」

「彼氏らしい事させてくれよ」


 端正な顔を向けられると、黙るしかない。私は借りて来た猫の様にコクリとうなづいた。


 城門へ向かい行き先を伝えてから、二人並んで街へと進む。門が遠くなるとビルは、何気なく私の手に自分の手を絡ませて来た。


 私はこの瞬間が一番好きだった。

 ビルの手の温もりを感じる。自然に口角が上がりビルを見つめると、すぐに私の視線に気づいて見つめ返す。


 そしてゆっくりと、街へと吸い込まれて行った。







「これ、良いんじゃない?」


 平民がよく利用する服屋へ入ると、ビルは入ってすぐにコートを手に取って勧めてきた。色は違うが軍服をカジュアルな色と形にした様なもので、私の今の格好にも似合う。値段も良心的だ。


 普通、貴族令嬢と言ったら貴族専門店で服を買うのが一般的。しかし騎士の給料のみの場合は、平民向けの店で購入しないとすぐにすっからかんになってしまうのだ。


 私は仕送りに頼っていないので、それを知っているビルが気を使ってこの店を選んだのだろう。ビルが支払いをするのだが、あまり高いものは私が受け取らないことも知っているから出来る芸当だ。


「これ裏地に綿が入っていて、ボタンで外せるんだ」

「へぇ。便利」


 即決して会計を済まし、その場で買い上げたコートを羽織る。


「ありがとう、ビル」

「どういたしまして。さぁ、行こうか」


 店を出るとさっきの寒さが嘘の様だ。そして私達は目的地である食堂へと向かった。







 ビルが案内してくれたのは、大衆的な食堂だった。


「良い感じのお店だね」


 冒険者達がほどほどにいて、それぞれの席で談笑している。店の雰囲気もおしゃれ過ぎず、温かい雰囲気。店員さんの顔も笑みで溢れていた。

 男の店員さんに案内され空いている席に座ると、ビルが嬉しそうに口を開いた。


「前にミックと来たんだ」


 ミックこと、ミック・ゴレッジ男爵令息とは、私とビルの親友であり、騎士団の同期であり、私の幼馴染だ。領が隣同士なため、小さい頃から親交があった。そんなミックは今、ビルと同じ隊に所属している。






そんな嬉しそうな様子のビルに、私は「デート?」と疑いの目を向け言ってしまった。


「バッ……違うって。たまたま一緒に買い物行った帰りに……」

「二人きりで出掛ける事がデートでしょ」

「……デートじゃなくて……男同士で話したい事ってあるだろ? からかうなよ」

「……二人見てると楽しそうなんだもん」


 「私といるよりも」と心の中でつぶやくと、ビルはきょとんとした顔でこちらを見つめてくる。


「……嫉妬?」

「…………ちょっと」


 私が視線をビルからそらしてつぶやくと、なぜかビルは私の頭を撫でた。


「何?」

「可愛いものを撫でて何が悪い」


 普段真面目な顔のビルが、悪戯っ子の顔に変わる。私の黒い頭を大切な宝物の様に撫で、店員に声を掛けられるまでそれが続いた。

 

 


導入部分がいつも下手で申し訳ありません。


上記に出てきたコートはトレンチコートのイメージです。



※登場人物紹介


過去ーーーーーー


名前 ホリー・コリンソン

年齢 20歳

容姿

・髪 黒のストレート 三つ編みで一つにまとめている

・瞳 黒

・体型 AAAカップ 細マッチョ

・顔 涼やかな顔立ち 貴族の中では平凡

・身長 164cm



名前 ビル・ロッドフォード

年齢 20歳

容姿

・髪 茶のストレート

・瞳 茶

・体型 細マッチョ

・顔 真面目な印象 イケメン 

・身長 186cm



現代ーーーーーー


名前 ???

年齢 推定5〜6歳

性別 女

容姿

・髪 黒のストレート

・瞳 黒

・体型 標準

・顔 可愛い系の顔立ち 貴族の中では平凡

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