09魔石探しの薪割り
「おおー! 脳に直接メッセージが!?」
魔石を使用したエリサは無事、魔法を獲得できたようだ。
「どうだ?なんて言う魔法だ?」
「……これは……まさか、こんな魔法が……」
「おっ? なんだなんだ? スゲーのが出たか?」
「これ……どうしても言わないとダメですか?」
「へ? なんで? 俺たちにも言えない魔法か?」
「ハイ。理由は言えませんが……」
「なんでぇ、ケチケチするなよなー!」
エリサは妙に深刻な顔をしている。一体、何が出たんだ?
「まぁまて銀。人にはそれぞれ事情ってもんがあるんだ。分かってやれよ」
「まぁそうだけどさ」
「ホント、ごめんなさい。時が来たら教えますので」
エリサは申し訳無さそうに頭を下げる。
「そういうことなら、無理にとは言わないよ。とりあえず、今すぐ使えるってもんではないってことだな?」
「ハイ。それは言えます。使うチャンスが来たら必ず教えますので」
「わかった」
どんな魔法なのかすっげー気になるが、これ以上、追求するのはよそう。俺だって、もしかしたら人に言えない魔法が出るかもしれないのだ。
「おおーい! また魔石があったぞ!」
「え! また翔一かよ!! 俺、全然見つかんないんだけど!?」
「ん~! なになに。魔法名は『ハーボッシュ』空気からパンを作る魔法、だそうだ」
「え、なにそれスゴイ」
「でも消費MP10だから、一日一回が限度だなぁ」
「いや、それ、俺が習得したら食料問題が一気に解決だったじゃねぇか」
「確かに。ままならんなぁ」
「っかぁ~! なんで俺には魔石が見つけられないんだよぉ!」
「一番魔石が出そうな薪割りの仕事をやってもらってるのになぁ」
そんなことを喋っていると、エリサが手を振りながらこちらに走ってきた。
「二人共~! すっごい魔法が出ました~!」
「今度はエリサかよ! で? どんな魔法だ?」
「魔法名は『カクヘン』。なんと、対象者の魔石の発見率を一時的に上げる魔法です!」
「うおお! それ! 良いじゃねぇか!! 対象者ってことは、他人にもかけられるんだろ?」
「多分いけます! これで銀も魔石が見つけられますね!」
「よっしゃ! 早速俺に書けてくれ!」
「あ、でもですねぇ……消費MP100なんで、僕はまだ使えないですね」
「なんじゃそりゃぁ! レベルを上げろ! 今すぐだ!」
「ちょ! 今すぐなんて無理ですよ!!」
ここへ来て何日経っただろうか?
数ヶ月は経っているはずだが、正確なところはわからない。何かに印でもつけて数えておくんだった。それだけ経っても気候に変化がみられない。たぶんここが赤道付近だからだろう。
この期間で俺達の生活は、かなり変化をしていた。
ちゃんとしたレンガ作りの小屋を建て、雨風をしのげるようになった。レンガを一つ一つ手作りするのは根気のいる作業だったが、経験値が入ると思うと不思議と苦にならなかった。
それから、罠を使って小動物を捕らえられるようになった。加えて食べられる植物が分かるようになったおかげで食糧問題はグッと楽になった。これには翔一が覚えた『カショクカ』の魔法が役立った。対象物が食べられるかどうかが判別できるという便利な魔法だ。
そんな生活を続けてきたおかげでレベルも上がった。今の俺のステータスはこんな感じ。
レベル 32
HP 50
MP 560
筋力 5
体力 5
敏捷性 5
知力 25
精神力 20
魔力 56
運 0
当然、魔力に全振りである。二人を見るかぎり魔法が絶対的に便利なことが分かっているからだ。
確認していないが、翔一とエリサのレベルもこんくらいだろう。
しかし、だ。
未だ俺の覚えた魔法はバクテマだけ。なぜだ。なぜ魔石が出ない!
「よし、レベルアップ! これでやっとカクヘンが使えますよ!」
「やっとか。待ってたぜ、この時を」
ようやくエリサの魔力がカクヘンを使えるまで上がった。エリサは最初こそ運に全振りすると豪語していたのだが、なにかの魔法を覚えてから魔力にも振るようになったのだ。相変わらず、それがどんな魔法なのかは謎だが、よほど使えるものなのだろう。
「じゃあ、早速、銀に使ってみますね」
「すまんな」
しかし、これはタダではなく食事当番一回と交換だった。頼む! 何か出てくれ!
「よし、それじゃ俺も『ドネス』を使うぞ」
ドネスは翔一が覚えた魔法で物体の硬度を上げるというもの。コイツはこれと持ち前の筋力で、大木を小型の石斧だけで切ってしまうほどなのだ。
しかも、翔一は無償で力を貸してくれた。持つべきものは友である。
この状態で、このために大量に用意しておいた木材。これでひたすらに薪を作る!
パカン!
小気味良い音を立て、木が二つに割れる。使っているのは小さな石斧だが、ドネスのおかげでなかなかいい調子だ。
パカン!
無心で薪を作る。
たとえ何も出なかったとしても、薪は使える。この作業は無駄にはならない。
パカン!
どれだけ時間が経っただろうか。山ほど積んであった木材もあと5本程度まで減ってきた。
だめか……そう思った時だった。
パカン!
割れた木の隙間から漏れる光。
「で……出たぁぁぁぁぁ!!」
間違いない、魔石だ!
「おお! 出たか!」
俺の叫び声を聞きつけ、翔一もやってきた。
「やりましたねー!」
エリサも嬉しそうに笑顔で駆け寄ってくる。
「よし……使うぞ」
ゴクリ。俺は緊張のあまり喉を鳴らした。
じっくり魔力を流し込む。同時に頭に直接流れ込んでくるメッセージ。久々の感覚だ。