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全員転生  作者: 加藤カトル
1章 転生
7/29

07エリサとの出会い

「た、助かりましタァ!」

 びしょ濡れの少女はそう言って頭を下げた。

「なに、当然のことをしたまでだよ。大丈夫だったか?」

 と、俺はカッコつけた。やっと待望の美少女に会えたからだ。

「ハイ!」


 溺れていた小さな女の子は、どうやら川で足を滑らせたらしい。

 元気よく返事をする彼女の目はエメラルドのような青。肌は透き通るような白さで、髪は輝くような金髪。

 うーむ。俺好みだ……。


「どうしました?」

「え? あ、ああ。すまない。翔一以外の人間に会うのは久々なんでな」

 おっと、いけない。ジロジロ見すぎたか。

「お嬢ちゃん、名前は? この辺に住んでるのか?」翔一が聞いた。

「名前はエリサ=べステマンです。今はこの近くに住んでます」


「エリサ=べステマンだと!?」


 俺の突然の大声に翔一はビクッと反射的に動いた。

「なっ、なんだ銀。知り合いか?」

「エリサって、やっぱりあの、『電気戦隊スパークマン』のヒロインのエリサか!?」

「ハイ! バレました? エヘヘ」

 少女は照れ臭そうに視線を下げた。


「でんきせんたい? スパークマン? なんだそれ?」

「翔一、知らんのか? 人気アニメだぞ」

「そうか。あんまアニメは見ないんでな。それに出てた子か?」

「出てたっていうか、それを目指してつくったんです」

 エリサは白い頬をピンクに染め、恥ずかしそうに笑う。


「そっかぁ。ある意味、コスプレみたいなこともできるんだな」

 翔一はまじまじとエリサを見つめて言った。

「いや、それにしてはコスチュームがだな。やはりエリサはパイロットスーツでないと」

 彼女も、俺たちとおなじ、白Tにジーパンという初期装備だった。

「こ、これはしょうがないじゃないですか~」

 エリサはちょっとピンクの頬を膨らませた。


 確かに、こんな状況だ。着るものに関して贅沢は言っていられない。

「すまん、すまん。とりあえず、家まで送るよ、エリサ」

 そう言って俺は精一杯の爽やか笑顔を作った。

 横で翔一が何か言いたげな顔をしているが気にしない。



「エリサ以外に何人くらいいるんだ?」

 歩きながら翔一がエリサに聞いた。

「一人です。僕も人間に会ったのは初めてですよ!」

 エリサは嬉しそうにニコッと笑った。カワイイ……。

「ん? 僕?」

 だが俺はその違和感に咄嗟に反応した。

「あっ」

 エリサはしまったとばかりに両手で口を覆った。


「「…………」」


「エリサたんは僕なんて言わない! お前、さては(もと)男だな!?」

「い、いいじゃないですかぁ! 今は女ですよ!」

「良くないわ! せっかくのエリサたんなのに中身が男だなんてよぉ! がっかりだよ!」

「いやエリサの言う通りだろ。元が男だろうとなんだろうと今は今だろ? 俺だって元ヒョロガリだしな」と翔一がフォロー。


「へ~。えっと、翔一さん? でしたっけ?」

「ああ。そういや自己紹介がまだだったな。俺は中山翔一。こっちは名無し。髪が銀だから銀って呼んでる」

「よろしく」怒りは一旦引っ込めて、俺も改めて挨拶。


「よろしく~エリサ・オ・タ・クさん」

「はぁ?! オ、オタクはそっちだろうがぁ!」

「僕もそうだけどぉ。そっちもさっき言ってたよね? 『エリサ()()』って」

「は!? い、言ってねぇし!」

「言ってたよね? 翔一」

「うむ。言ってたぞ」

「グッ!」


 なんとかごまかそうとしたが、二人対一ではどうしようもない。

「そ、そうだよ! 悪いか!」

「悪くわねぇよ。お前も、エリサも。見た目、性別を自由にできるのが俺たちに与えられた特典なんだし。おかげで今は『なりたい自分』になれたんだからな。感謝しないと」

「そういう翔一は何に憧れて、その身体なんです?」

エリサは人差し指を顎にあて、小首をかしげた。男のくせに仕草がカワイイのが腹が立つ!


「俺はさっき言った通り、ヒョロガリで身体が弱いっていうコンプレックスがあってな。その反動でプロレスをはじめとした格闘技全般のオタクなんだ」

「なるほど~。それでそのマッチョボディなんですね」

「二人はアニオタってやつかい?」

「おっ、俺はどっちかっつーとゲームだな」

「へぇ? それは俺も初耳だわ」

「僕はお察しの通り、アニオタでしたよ。ゲームも好きでしたけど。銀は何やってたんですか?」

「俺はその、対戦ゲームだよ」

「つまり、エロゲーですか?」

「ちげぇよ! 何がつまりだよ!」

「じゃあどんなんだ?」と翔一。

「なんつーかなぁ。銃で撃ち合うっていうか……」

「へぇ~。FPS(エフピーエス)ってやつですか?」

「そうそう! 何だ、エリサ、知ってるじゃねぇか」

「まぁ、やったことはないですけどねー。知ってはいますよ」

「まだまだ世間ではマイナーなジャンルだからさ。知っててくれて嬉しいぜ。エリサはどんなゲームやってたんだ?」

「僕は女の子と恋愛するゲームです」

「お前こそエロゲーじゃねぇか!」

「違います! 恋愛シミュレーションです!」

「一緒だろうが!」

「違いますよ! 純愛なんですよ! 純愛!」


「よくわからんが、落ち着け、二人共」俺たちのやり取りを翔一は呆れて眺めている。翔一からすれば同じオタク同士で何を争っているのか、という感じなのだろう。

「いや、これが落ち着いていられるか! だいたいなぁ、エリサたんの見た目で何、エロゲーやってくれてんだよ! オメェ何歳だよ!」

「18歳ですよ! みんな一緒でしょ!」


 俺はその設定をすっかり忘れていた。エリサがいかに幼女のような見た目をしているからと言って、年齢は18歳なのだった。

「そういやそうだったな。そんな子供みたいな見た目にもできるんだな? 俺はマッチョにしか興味なかったから知らなかったよ」

「翔一は逆におっさんみたいですよねー」

「だよなぁ。つうか、ゴリラだよな。好きな見た目にできるってのに、わざわざゴリラにするなんざ、相当変わってるぜ」

「うるさい! 俺はこれがいいんだよ!」

「そうですよ~。人の嗜好にあれこれ言うのは良くないですよ~」

「ああ。すまん。それもそうだな」

「で、ここが僕んちです」


 お喋りに夢中になっているうち、エリサの住まいに着いたらしい。

だが、彼女の指差す方向にあるのは、住まいと呼ぶにはちょっとはばかられる代物だった。


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