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全員転生  作者: 加藤カトル
1章 転生
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04初の魔石

 翔一の暮らす洞窟は、入り口こそ縦横2メートルほどの大きさがあったものの、そこからどんどん細くなっていき、20メートルほどで人間が通れる隙間ではなくなっていた。まぁ二人で住むには十分な広さだ。


「で、魔石はもう見つけたのか?」

 その夜の食事は、翔一が捕らえた小型の哺乳類。でっかいネズミみたいなヤツだ。近くにある川から水を汲んできて、そいつをスープにした。それをすすりながら翔一が聞いてきた。


「いや、まだだ」

「そうか。銀は魔法系にステ振りしたんだろ? それじゃ大変じゃないか?」

「ああ。翔一みたいに筋力に振るのが正解だったな」

 こんなサバイバルになると事前に分かっていれば、俺もそうしていた。今のところ、魔法タイプの俺は不利すぎる。


「だろう? 筋肉こそファッションであり、最高の友だからな!」

 翔一はそう言って腰のあたりで両手の甲を合わせるというマッチョポーズを決める。

「アンタ、元々ボディビルダーかなんかだったのかい?」

 翔一は一瞬真顔になったかと思うと、目を瞑り、首を横に振った。


「いいや。それどころか、虚弱体質だったよ」

「へ? そうなのか」

「ああ。だからこそ、ずっとこういう身体になりたかったんだ。元は大のプロレスファンでさ。ヒョロヒョロの身体のくせに、情けないだろ?」

 そう言って自嘲気味に笑う。


「んなことねぇよ」

 俺は歯に挟まった骨の欠片を抜いて、そのへんに捨てながら言った。

「誰だって、自分に無いもんに憧れるもんさ。分かるよ」

 翔一はそれを聞くと、また豪快に笑った。

「だっはっは! そうだよなぁ? それじゃ銀は、元は何やってたんだ?」


「俺か? 俺は……」

 何と言うべきだろう。俺は――俺は何だ?


「ん? どうした?」

「俺は、何でもねぇよ」

「何でもねぇって何よ? まぁ18だし、学生か?」

「そ、そんなとこよ。おっさんはリーマンか何か?」

「俺はなぁ、なんと、市役所勤めよ!」


 公務員か。そっからゴリラにジョブチェンジとは、変わったおっさんだ。

「へ~。結婚は?」

「俺みたいなヒョロガリに彼女がいるとでも思うかぁ?」

「いや、今はムキムキなんだが」

「ああ、それもそうか。銀は? 彼女でもいたのか?」

「いいや。でも、結果的にはいなくてよかったな」

「なぜだ?」

「だって、こうやって離れ離れになっちまうんだから。また会える保証なんてないんだし」

「ふむ。確かに俺もこうなると独り身で良かったのかもしれんな」



「なぁ、翔一」

 翌朝。久々に眠れた身体を伸ばしながら、俺は言った。

「うん? なんだ?」

「ここは定住地としてはまずまずだが、もっと人が欲しい。そうなるとここでは手狭だ」

「ふむ?」

「だから、周辺を探索したい」


 翔一はちょっとだけ腕組みして考えたが、すぐに結論は出たらしい。

「だな。いつまでもここにいてもしょうがあるまい」

「だから肉は干し肉とか、加工して保存が効くようにしよう」

 そう決まると俺たちは、探索するための計画を練った。



 道が無いというのがこれほど不便とは思わなかった。

 洞窟の周りから探索を始めたものの、大自然に阻まれ遅々として進まない。せいぜい洞窟を中心として半径100メートルほどだ。

「思うんだが、川を下ってみてはどうだろう」

「川下りか」

 翔一の提案に、俺は少し思案した。


 川を下っていけば、いずれは海にたどり着くはずだ。海には資源がたくさんありそうな気がする。一度、行ってみるべきだろう。

「小舟を作るか?」

 俺はそう提案したが、問題はいくつかある。そもそも舟など作れるのか? 作るにしても道具が無いこと。なんとか簡易なイカダくらいならできるかもしれないが、危険な水生生物がいると考えると心もとない。


「危険な生物か……。ワニみたいな?」と翔一。

「このジャングルみたいな場所から考えて、それに近いものがいると思ったほうが良いだろう。そんなのに襲われたら、ひとたまりもないぞ」

「では川沿いに進んで行くか?」

「そっちのが、まだ良いかもな」


 とは言え、それはそれで苦労することが予想された。

 川沿いには低木ではあるものの、木が生い茂っていたからだ。いちいち切り開いて進むのでは、海にたどり着くのにどれだけかかるか、分かったものではない。


 俺たちは考えた挙げ句、とりあえずは川を調査し、危険な生物がいないかどうかを調べること。小舟を作る素材集めと道具作りに挑戦することを決めた。



 鉄があれば良いのだが、当然、この環境で作れるわけはない。となると、鋭い石を見つけるのが早そうだ。俺はそう考え、食材探しと並行して良さげな石も探していた。


 そんな折だ。


 石と石をぶつけて良い感じに砕いたら、鋭い石ができるのでは? そんなアイデアが浮かんだ俺は、早速実行に移した。

 両手でやっと持ち上がるくらいの石を、同じくらいの石に叩きつけてみる。パキッと小気味のいい音を立て、石は気持ちいいくらい、真っ二つに割れた。


「おお、こんなキレイに割れるとは」

 俺はそう独りごちて、石の断面を見てみた。

 するとそこに、発光する謎の物体があるのを見つけたのだ。


「これは!?」

『お~! ついに見つけたねぇ。おめでとう!』

「おおう!? 神かよ!いきなり話しかけんな! これが言ってた魔石ってやつか?」

『そうだよー。早速、魔力を込めてみようよ。何の魔法かなぁ? ワクワク』

「いや、魔石ってさぁ、こんな具合に石の中とかにあんのか?」

『そだよー』

「んだよ! どうりで見つかんねぇわけだよ!」


 俺は怒りのあまり魔石を叩きつけそうになったが、踏みとどまった。

『え~? だって、簡単に見つかったらつまんないじゃん』

「お前……こっちは命がかかってるっつうのに、楽しみすぎなんだよ!」

『まぁまぁ良いじゃん。それより早速、やってみようよー』


 まだ怒りは収まらんが、確かにこれが何の魔法なのかは気になる。それ次第によっては状況が一変しかねないからだ。

 なんか、この自称神の言うことを聞くのはしゃくだったが、俺は絶対に魔法を習得すべきだろう。

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