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全員転生  作者: 加藤カトル
1章 転生
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03中山翔一との出会い

 せっかく転生したのだ。なんとしても生き残らねばならない。

 だと言うのに、再びゴリラと出会ってしまった。しかも、今回は最悪なことに、バッチリと目が合ってしまった。


「ゲッ!」


 声を出してしまったことも迂闊だった。これで余計な刺激までしてしまった。

 ヤツは体のほとんどを草むらに隠していたが、顔だけをひょっこり出していた。草がガサガサ動きだす。飛び出して来る気か!?

 戦うか? 逃げるか? 一瞬の判断を迫られれる。


 一応、お手製の簡易ヤリは持っている。だが、これであんなデカブツと戦えるとは思えん。

 ならば逃げるか?

 しかし、相手はゴリラだ。足の速さで勝てるとは思えない。それに、肉食獣というものは逃げる相手を本能的に追うものだ。


 万策尽きたー! と、思った瞬間だ。


「おい! そこにいるのは人か?」

「えええ!? ゴリラが喋ったぁぁ!?」


 俺らが転生したのは知的生命体のいない星のはずだぞ。人語を解するゴリラがいるとは聞いていない。あの自称神、またしてもやらかしやがったか。


「おい! 誰がゴリラだ!」

「お前だよ! お喋りゴリラ!」

「よく見ろ! 俺は人間だ!」


 え? 人間? 待望の、俺以外の人間かぁ!?

 改めて草むらから出てきたソイツをじっくり見てみれば、たしかにゴリラより毛は薄いようだ。ヒゲはボーボーだが額から目の周り、そして鼻周辺には肌が見えている。

 何より、お喋りゴリラはちゃんと服を着ていた。俺が最初に着ていたのと同じ、白いTシャツとジーパンだ。どうやらそれが初期装備らしい。こんな格好で大自然に放り出しやがって! もうちょっと、なんかあるだろう。


「おおお! よく見れば! あんた人間か!」

「そうだ。俺も初めて自分以外の人間に会えたよ」


 お喋りゴリラはそういうと「わっはっは」と豪快に笑いながら近づいてきた。デカイ。2メートルはある。

 異世界って、普通は美少女に囲まれるもんじゃないのか? ウハウハハーレムじゃないのか!? 最初に会うのがお喋りゴリラって……。


「お前、名前は?」


 名前? そういやなんだっけ? なぜか元の名前を思い出そうとしても思い出せない。


『そうそう。せっかく転生だから、新しい名前で再出発してもらおうと思ってさ。元の名前は忘れてもらったよ~』

「うお! びっくりした! 神か!?」

『そうだよー。なんとか人間に会えたねぇ、このラッキーボーイ!』

「そのラッキーボーイはやめろ!」

『やめるよー。だから、自分で名前を決めてほしいんだ』

「名前を? 自分で?」

『そそ。カッコいいの考えてよ!』


 そう言われても……どうしたもんか。

「おっさん、あんたの名は?」

「おいおい! 誰がおっさんだ! 俺らみんな、同じ18歳なんだぞ?」

「そうだけど、その見た目じゃ30代にしか見えんぞ」

「実際、俺が死んだときは35歳だったからな。まぁ中身はおっさんよ」


 そう言ってお喋りゴリラはまた笑った。

「んで? 名前は?」

「俺は中山翔一だ。よろしくな!」

「普通の名前だな。それって元の世界の名前?」

「いや、やっぱり俺も元の名前は全く思い出せん。なんとなく思いついたんだ」

「そっか……」


 俺の名前。

 何にしよう? あらためて好きに付けていいって言われると、案外困るものだ。

「俺はまだ、考え中」

 とりあえず、そういうことにした。

「ふむ? そうだな。焦って付けることもあるまい。じっくり考えれば良い」

 翔一はそう言って腰に手をあて、うんうんと頷く。


「しかし、良いのが思いつくまで不便だしなぁ。とりあえず銀と呼ばせてもらおう」

「銀? ああ、髪の色か」

「うむ。随分変わった色にしたもんだ」

 そうあらためて指摘されると恥ずかしい。俺の厨ニ趣味全開の見た目だからだ。

「おしゃゴリも随分と、ムキムキにしたもんだよなぁ」

「おい! そのニックネームは何だ?!」

「お喋りゴリラ、略しておしゃゴリ」

「それは分かってる! 中山翔一だと言っただろう! それは止めろ!」


 だってなぁ。なんかあんまりにも普通だし。

「んじゃぁ翔一でいいか?」

「ああ。それで良い」

「翔一はどういうステ振りにしたんだ?」

「それは見ての通り、筋力に全振りよ!」


 翔一はそう言うと、両手を肘から曲げ、力こぶを作ってみせた。

「おっさん、せっかく魔法が使えるってのに、筋力に全振りしたのか!?」

「筋肉こそ男の最高のファッション。そうは思わんか?」

 知らん。

 完全に知らん。


「あと、おっさんじゃねぇ! 同い年だ!」

「元年齢は35だろ? 俺は18だ」

「18ピッタリだったのか。危なかったな」

「ああ。運が良いんだか、悪いんだか」

「17以下はこれから産まれてくるらしいからな。それまでに、俺達は子供を育てられる環境を作ってやらないと」


 確かに。翔一の言う通りだ。だが、生き延びるだけで精一杯の俺は、そこまでは頭が回らなかった。


「確かにそうだな。だが、まずはどっかに定住しないことには。環境もクソもないな」

「銀の言う通りだ。ここに来て、どこか住むのに適した場所はあったか?」

「いや、まったく。ケモノから逃げ回るのに精一杯だったよ」

「俺は洞窟を見つけた。ひとまずはそこに行かないか?」

「それは助かる。まだまともに熟睡できてねぇんだ」


 ベッドをくれ、とは言わないまでも、ゆっくり眠っていられる状況ではなかった。夜行性の肉食獣だって、絶対いるはずだ。眠ることなど命取りになる。


「それは俺もだ。二人いれば、一人休んでいる間に見張ることもできるな」


 そう。それができるのがデカイ。

 俺たちは早速、翔一の住処としている洞窟へと向かった。

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