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全員転生  作者: 加藤カトル
1章 転生
19/29

19魔法レベルってなんだ?

 人払いをすると、ラルはいきなり土下座し、頭を地面に擦り付けた。

「頼む。リルに会わせて欲しい!」

「お、おいおい! そんなことしなくたって、会わせるって!」

「良いのか? ワタシを信用してくれるのか? あんな酷いことをしたのに」

「信用もなにも……なぁ?」俺は二人に振る。

「ああ。ここまで同じ顔なら疑いようがない」

「名前も似てますしねー」

 本当のことを言うと、罠にかけられ、拘束されたということに何のわだかまりもないといえば嘘になる。だが日頃から盗みの被害にあっていたらしいし、警戒し、慎重になるのは無理もない。責めることはできないだろう。それにエリサが同意している。タクニンの効果はまだ消えていないはずだ。


 タクニンでここに来た方が良いと出たのも、きっとラルに会うためだったのだろう。

「俺たちの集落はここから大体30キロくらい離れている。今から行くと日が沈んでしまうから、明日にしよう」

「30キロ……そんな近くにいたのか。やはり、これは奇跡だ」

 大げさなやつ、と思ったが、この星が地球と同程度のサイズとするなら、確かに双子が30キロ圏内にいるだなんて、かなり奇跡的かもしれない。

 ちなみに、30キロというのは大体だ。ま、リルのテレパシーが届いていなかったなら、最低でも20キロは離れているはずだ。




 翌日、朝早くから身支度を整えた俺たちは、早速、出立することにした。

「では、村のことは頼んだ。ワタシは早ければ明日には帰る」

「しかし、せっかくの双子の再会なんですから、遠慮せずしばらくは向こうに滞在されたら如何で?」

 手下の大男がなかなか気の利いたことをいう。どうもコイツはこの村のナンバー2らしい。

「まぁ、今後のことは一度帰ってから決めるよ」


「ボス~絶対帰ってきてくださいよ~」

「ボスお気をつけて!」

 村人は総出でラルを見送る。



 手をふる村人たちが見えなくなったところで、俺はラルに話しかけた。

「ずいぶん慕われてるんだな?」

「慕われているのかな? たぶん、ワタシの魔法を頼りにしているんだろう」彼女は少し寂しげな顔をした。

「どんな魔法だ?」

「『ソウブンゼ』っていうレベル6の持続魔法だ。相手の嘘が見破れるっていう魔法」

「な、なんだ。どんな魔法かと思ったら、そんなのかよ」

「いや、これは危険な魔法ですよ」エリサが言う。

「危険? かぁ?」


「エリサの言う通り。この魔法のせいで、村人たちはワタシに怯えるようになってしまった」

「確かに、嘘を付いても絶対バレるってのはやりにくいかもなぁ」と翔一。

「でもさぁ、あのデカイのが力で支配してきたらどうしようもなくない?」

「ああ、あの男は……ワタシに惚れてるんだ」

「あ、そうなんだ……」

 なんか色々気になるところもあるが、その辺は踏み込むのは止めておこう。

 ほぼ初対面の俺たちに、ラルが一人だけでついてきたというのも、その魔法で信用を得られたからなのだろう。


「ところでさ、さっきの持続魔法ってなんだ?」

 そんなものがあるとは聞いていない。神は説明不足なのだ。

「あ、それは一度使うとしばらく効果が持続する魔法って意味みたいです」とエリサ。タクニンと同じだから知ってるわけか。

『そそ。大体のものは5時間に設定してるよ』

「なるほど。あと、今更だけど魔法レベルってのは?」

『魔法レベルは1から10まであって……』


「おいおいおい! 神! なに自然に会話に入ってきてんだよ!」

『あっはっは! 気づくのが遅いよ、キミィ?』

「相変わらず軽いな……。んで? 魔法レベルは何なんだ?」

『1から3までの初歩魔法。4から6までの中魔法。7から9が大魔法というふうに分けてるよ。そして最高レベル10は特大魔法だ。レベルが上がるほど数は少なく、レアになってる。特大魔法は、それぞれが世界に一つだけしかないよ。君の覚えたバクテマなんかはそうだね。そのかわり消費MPもレベルと共に上がっていくよ』


「なるほど。てかさぁ! そういうの最初に説明してくんねぇ?!」

『いや~、どうせいっぺんに言っても覚えられないって思ってさ』

「そんなに複雑なのか?」

『ま、その時がきたらちゃんと説明するからさ。ゆるしてちょ』

「本当だろうな……?」

『説明する暇がないときもあるけどねぇ。そのせいかなぁ? 実は、転生者の約10万人がもう死んじゃったんだよね』

「は? え?」

『じゃ、またね~! ばいばい』

「おまっ! 待て!」


「10万……だと……」

翔一はあまりの数字の大きさに驚きを隠せない。

「10万なんて……確かに危険な生物もいますが、多すぎませんか?」エリサも白い顔がさらに白くなっている。

「確かに。ひょっとしたら俺たちは、これでも安全な場所に転生したのかもしれないな」

 ケモノに襲われ命の危険を感じたことは確かにある。しかし、それ以外は概ね順調だった。食物や水が危機的に不足したことはない。気候も暑いとはいえ、生存に問題はない程度だ。


「極端に生きにくい場所に転生してしまった人もいるかもしれないな。極寒の土地とかだったら最悪だぞ」翔一も頷く。

「それに、やっぱりシステムの説明が少ないよね」とエリサ。

「確かに。最初にあるべき説明がない」

 ひょっとして神のやつ、楽しんでいないか? 俺はふとそんな疑問が浮かんだ。

 神が見ていることは間違いない。観戦モードとかなんとか言っていたし。神が苦戦する俺たちを、寝転がって菓子など頬張りながらニヤニヤと眺めている、なにかそんな映像が浮かんでしまった。この転生、本当に詫びだけが目的なのだろうか?

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