9 魔素、ですか
「当たり前にあった生活や世界から急に切り離されて、知らない場所に突然、勝手に連れてこられたら、その相手のことは信用出来ないと思いませんか?」
そう言うと、バルトさんが分かりやすく私の方を見た。
「あぁ、その通りだな」
バルトさんは、ため息をつきながら頷いた。
え、今気が付いたの?
だってそうだよね?好きで来た訳じゃないし、きっとパニックにもなる。
しかも、呼んだ側の鯰があの態度じゃなぁ。不安は尽きない感じで。
「申し訳ないのですが、そもそもなぜ聖女様を召喚することになったのか、お聞かせ頂けませんか?」
私の問いに、一瞬躊躇ったのち、バルトさんは説明してくれた。
この世界は地球で言うところの大気が空気と魔素で構成されていること。
月の満ち欠けによって、魔素の量が変わること。
魔素の量が増えれば、魔物がエネルギーを得て活発に行動するようになること。
なので、毎月、騎士団が魔物狩りに行くことで、人に対する被害を押さえていること。
と、実際にはもっと複雑な感じで説明してくれたけど、割愛割愛。
「魔物は動物の中で、魔素を取り込めるものが変位したものと言われている。だから、魔素の絶対量が増えれば、」
「単純に個体数が増える?」
アレンさんの言葉の続きを呟けば、バルトさんが頷いた。
「去年の半ばから、急に魔素の量が異常な程、増え始めた。もう騎士団の討伐では防ぎきれない程に魔物が増え、至るところで被害が増加している」
「え、聖女様に魔物退治をさせるつもり?」
ビックリして言葉がおかしくなった。仕方ないよね?だって無理でしょ。魔物退治なんて。
思わず両腕で自分を抱き締めた。魔物がどんなのか知らないけど、知らない世界の為にそんな怖い思いをしろと?
いやいや、無いわ。
ロールプレイングゲームじゃないんだから、そんな事言われてもって感じで、私だって引きこもるよ。
ん?でも逆に、身を守るすべがあるなら、冒険者もいいのかな?
戦うと経験値積んでレベルアップみたいな?
聖女様なら魔法も使いたい放題なのかな?魔方陣にも書いてあったしね。
おや?そうなると、聖女様ってチートなのかもだよね?
え、なにそれ、ちょっとワクワクするんですけど。
「いや、聖女に求めるのは、結界の復旧だ」
バルトさんの声で現実に引き戻された。