80 いつかの学生の後悔
「もちろん、やるだろ?」
目をキラキラ輝かせたオーツに、なんて返したら良かったんだろう。
オーツと俺は、子供の頃からちょっと特別扱いされて育った。それは人より多く魔力が、あったからで。
町で育つ子供は、基本的に学校なんか行かないし、なんとなく読み書き出来れば上出来な感じで大きくなる。
そもそも、農夫や職人に学なんて必要ないってのが、一般的だからそんなもんだ。
でも、魔力が多いと将来的に就ける仕事が変わってくるから、急に扱いが変わってくるんだな。
そんなこんなで、俺達は学校に行くことが決まっていたし、その前の勉強もしっかりと受けることができた。
「お前たちは、町の宝だからな」
オーツと俺にだけ、用意される家庭教師やおやつ。
農作業の手伝いも、小さい子供たちの面倒も、全て免除されて、本を読んだり難しいことを覚えれば褒められる日々が続いて、完全に調子に乗ってたんだ。
俺達はすごいって。
今、考えれば、あまり裕福な町でも豊かな土地でもないから、俺達に期待して大事にしてくれてたんだと思う。
町の発展には、知識がやっぱり必要だから。これからは学も必要になっていくだろうって。
町の皆に見送られて、意気揚々と辿り着いた学校には、俺達よりも遥かに頭が良くて、高度な知識がたくさんある子供なんて、掃いて捨てるほどいっぱいいたんだ。
今まで、甘やかされて来た俺達は、授業にもついていく事が出来ず、周りからも馬鹿にされて、やる気もなくし不貞腐れていた。
そんな時に、声を掛けて来たのがフランツだった。
「お前ら暇そうだな。俺の研究に付き合えよ」
って、最初声掛けてきた時には「なんだ?こいつ」って思ったけど、話せばちょっと変わった、でも面白いやつだって分かって。
フランツには魔道士になる夢があって、しかも運良く魔力があったから、今は魔術の研究をしてるって話で。
フランツの実家はすごく貧乏な男爵らしく、
「俺の代で盛り返してみせる」
が口癖だった。
で、なんで俺達に声を掛けて来たかって、
「暇そうだったし魔力あるしな。頭も悪くはないみたいだし」
「平民の俺達に声掛けるなんて変なヤツ」
って返したら、
「貧乏過ぎて平民以下だからな」
なんで平気で笑って言うから、俺らも笑っちゃって。
町の外れの林の中で、ちょっとした魔法陣の研究って名前のイタズラを繰り返すようになった俺達は、どんどんいろんな事か出来るようになって。
だから、フランツが大貴族だって言う、金持ちの男に資金援助してもらって、新しい研究を始めるって言った時も、
「俺達の研究も認められたって事か?」
なんて浮かれるばかりで。
「この世界を救うために、聖女を召喚してほしい」
なんて大貴族の言う胡散臭い言葉にも、
「これが出来たら俺達救世主?」
なんて。
新しいことが出来るようになることや、調べる事、面白い実験も、3人でやればひたすら楽しくて。
俺達なら、何でも出来るような気がしてたんだ。
後に、俺達の作った魔法陣のせいで、たくさんの聖女様達を苦しめる事も、魔法陣が厳重に管理されて勝手にイジることが出来なくなる事なんて、俺達は想像もしてなくて。
ただ、遊びの延長みたいなモノだったんだ。




