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78/82

78 想定外はこっちのセリフだってば

 


「聖女様って、本当に日本の人だったんですね。この落書き、日本では有名なネズミなんです」


 さり気なく捲った何枚目かの紙の隅に書いてあった、味のある絵って言ったらいいのかな、ちょっと微妙な落書きを指差すと、シオンさんが後ろの机で何かを見ていたゲインさんをチラリと見た。


「あぁ、何だったかな。ミニー?」


「ミッキーです。ミニーは女の子の方」


 私が答えると、シオンさんがニッコリ笑った。


「その聖女ちゃんは、随分古くに正式に呼ばれた人らしいんだ。そして初めて書を残した人だからね、必ず皆に見てもらってるんだ」


「皆って誰ですか?」


「君達と違って、非公式に呼ばれた聖女ちゃん達だね」


 なるほどね。

 何人もの聖女がこれを見てるから、ある程度の内容は把握してる、と。

 で、内容に大きな違いがないか、私が嘘ついてないか、ゲインさんが確認していたって感じかな。

 で、あえてミッキーではなくミニーって言って、私の反応を見た感じ?今までこれを見た人は、喜んだのかもね。懐かしいって。

 でも、そうか。私と違って、たった一人日本から連れてこられたら、寂しくて辛くて、日本語に感動するかもしれないよね。


 うーん。なんかムカムカするんだけど。

 内容はどれ位知られてるんだろう。

 知られたくないような事が書いてあった場合、どの程度ごまかせるのかな。




「日記の様に日々の生活について書かれている物が多いようだ。まだ隣の部屋にも沢山あるから、取り急ぎ、君には帰還の魔法陣について書かれている物を探して欲しい」


 ゲインさんが、立ち上がってドアを指差した。その部屋にまださっきみたいな紙とか冊子の山があるってことか。


「帰還の魔法陣、ですか」


 私の呟きを拾ったシオンさんが、


「先代の筆頭聖魔道士が、聖女ちゃん達と研究してたんだよ。最後色々トラブルがあって、その後、その魔法陣は消滅してね」


「失敗したってことですか?それとも完成はした?」


「そうだね、完成したって聞いてるよ。その研究の内容もこの中のにあるはずだから、探して欲しくてね」


 ふーん。なんかさ、協力するの当然って感じもだけど、軽く馬鹿にされてる感じが、すごく鼻につくんですけど。





「普通、筆頭聖魔道士の人が残した物の方を探しませんか?何か残っているハズですよね?正式な物」


 だってさ、筆頭魔道士だよ?しかも教会所属の聖魔道士って、選ばれた精鋭だって聞いたよ?しかも聖女召喚の魔法陣は、教会の秘技だって言ってたよ?


「聖女召喚の魔法陣の対になる魔法陣ですよね?帰還の魔法陣は。そしたら、その先代の聖魔道士さんがこちらの言葉で書き写している物を探したほうが早くないですか?」


 おかしいことこの上なくない?わざわざ私を拐ってくるくらいだよ?みんな日本語読めないんだよね?

 しかも時間無いって言ってたよね?なのに内容は日記の様な物が多い?それってさ、全然見つけられてないってことじゃ?

 聖女様助けたいって言ったよね?じゃあ、なんでこの人達こんな状況でモタモタしてんのよ。拐ってきた聖女もどきが奥の手って、何なの?


 大体さぁ、助けたい助けたいって言うけど、一方的過ぎない?呼ぶときもだけど、勝手に元の世界に返そうとか、それって本当に聖女様の為?本当に助けになると思ってる?

 だって、帰還するって本当に元に戻れるの?同じ時間の同じ場所に?

 何年も経ってから戻されても、戻った後の自分が大変なだけなんだよ?行方不明で急に戻りましたなんて、職場も学校も迷惑なだけじゃん。

 警察に事情を聞かれたって、まともに答えられる答えを持ってないし。興味本位の人達の視線にさらされるとか、超勘弁なんですけど。


 あームカついてきた。




「チッ」


 ゲインさんが舌打ちして頭をガリガリ掻いた。シオンさんは、分かりやすく苦笑いを浮かべて。


「はぁ、向こうの女の子って、みんなこんなに頭回るの?なんか想定外なんだけど」


 






「とっとと全部吐いて下さい。時間の無駄です」


 強気にもなりますとも。

 だって、私がいなきゃ、これ読めないんだもんね?

 




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