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72 窓の外の景色だけが激しく変わっていった

 


  「随分と慎重なのねぇ」


 私とリーさんは今、あのチャラい男、アベルさんとその弟だと言うゲインさんと一緒に見知らぬ部屋巡りをしています。



 意味分からないよね。

 転移する魔方陣が組まれている部屋から部屋へと移動を繰り返してるから、私の中では部屋巡りなんだけれども、実際は結構な距離を移動してるっぽい。


 とりあえず、私とリーさんは両腕を縛られている。余計なことは一切するな、と言われて。


「町に着けば、解放はする。が、基本こちらの指示に従ってもらう」


 ゲインさんはそう言って、私の腕を引いた。

 部屋には必ず3つ扉があって、印が付いている。どの扉を開けるとどこに行く魔方陣がある、と分かるようになっているみたい。

 アベルさんは私の前を、リーさんの腕を引いて移動していく。


 部屋を7回移動した頃には、どこに行く印なのか分かるかなと期待してたんだけど、やっぱりそんな単純じゃなかったな。

 それもそうか。簡単でバレる様な印なら、目隠しとかするもんね。


 いや、逃げる気は全く無い。

 どうやらこの人達、組織立った人達みたいだし、過去の聖女様の事を知る何かがあるのなら、是非知りたい。

 しかも、沙羅様を助ける何かを見つけられるなら、絶対見つけたいし。

 ま、でも。この人達からすれば、私を信じられる要素なんて無いに等しいから、この扱いも仕方ないなぁと思ったりする。


「これから行く場所は、何処なんですか?」


 答えてくれるとは思っていないけど、聞くだけ聞いてみる。


「聖女の里だ」


 え、答えるんだ。ゲインさん、真面目か。しかも聖女の里って。


「あー、ぽいですね」


「ぽいってなんだよー?古くからある里なんだよ?すごいんだよー?」


 私の返事が面白かったのか、チャラい男アベルさんが、笑ってる。

 その後もいくつか部屋を通過して。


「聖女の里へようこそ」


 アベルさんが、執事か、とツッコミたくなるような仕草で扉を開けた。


「まず、里の長に挨拶に行くぞ。言っておくが、この里から勝手に移動は出来ない。だから、縄はほどこう」


 ゲインさんが、私とリーさんの腕の縄を解いてくれた。少し痛かったけど、召喚された時の、あの重たい鎖に比べたら、ねぇ。


「あ、先に言っておくね。あっちの聖女様さぁ、もう薬を飲み始めちゃったらしいの。だからね、半年位しか時間が無いと思うんだ」


「は?薬って何」


 何そんな重要なこと表情を変えもせず、ヘラヘラ軽く言ってんの。そもそも薬って何?半年ってどーゆーことよ。説明、説明が足りないってば。


「んー、魔力を通す道を広げる薬、かな」


 魔力を通す道を、広げる?え、薬で?

 ちょっと、待って。焦る私に、


「だからさ、頑張ってね。もう一人の聖女様」


 チャラい男アベルさんは、手をヒラヒラさせてどこかへ行ってしまった。

 ちょ、待てよ。いや、説明プリーズ。


 何よ、何を頑張れって言うのよ。

 チャラ男、カムバーック。




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