56 知らない部屋、再び
って感情移入して大泣きしてしまう程、昔の聖女様の事がすごく気になってたし、沙羅様の出発も迫ってた時期だったから余計に。そう、余計に聖女様の為になんて言う人達の話を聞いてみたいと思っちゃったんだな、きっと。
だって、本当の意味での聖女様の味方なんて、この世界には一人もいないと思ってたから。
「なるほど。あれを読んだのか」
聖女様の為になんて大義名分なんじゃないの?本当に聖女様の為なんて、思ってるの?って聞いた私に、どうしてそう思う?って返すから、思わずあの本の話をしてしまった。
目の前で大きく頷いて、何かを考えている様な表情のこの人は、私を拐った一味のその1です。床に転がっています。
ちなみにその6までいて、現在、6人共に手足を縛られ、全員もれなく床に転がっています。
え?もちろん、私とリーさんでパパっとやりましたよ?こんな時に便利な魔方陣があるんですよ。
まぁ、とにかく。この人達にはよく話を聞かないとだし、暴れられても困るしね。
「で?どーいうつもりで貴族の娘を拐ったんですか?その後に、自分達がどーなるとかって考えました?」
私達に捕まった6人が、なんだかフワフワして、緊張感が全く無いもんだから、私の方が心配になるんですけど。
「あー、いーのいーの。聖なる魔力を使える娘さえ捕まえれば、OKだから」
「は?」
この人何言ってるの?
転がされてるのに、誰も焦った様子がなくて変だとは思ってたけど、なんでこんなに余裕なの?
え、待って待って、聖なる魔力って。
「あんたなんだろう?聖女様と同じ世界から来たのは。聖なる魔力を使える人を魔方陣は選んで連れてくる」
え、いや、待って待って。何を言ってるの?
6人の内の一人が笑って、
「ホラ、お迎えだ」
って言ったときには、部屋の床に魔方陣が展開されてて。隠蔽する魔方陣が重ね掛けされてたってことに気が付いた時にはもう全部遅くて。
あ、って思ったときには魔法発動。
あの部屋の人間が揃って転移って、超大掛かりなんですけど。やだ、様子なんて見ないで帰らなきゃいけなかったってヤツ?
詰んだ?詰んだの、これ。
気が付けば、またもや知らない部屋にいて。
目の前には、背が高く柔らかそうな茶髪で、ヘラっと笑うチャラそうな男の人と、正反対に背はあまり高くなく、焦げ茶で堅そうな髪質で短髪の苦い様な顔をした男の人が立っていた。
チャラそうな男の人は口角を上げると、
「ようこそ、聖女様」
と私に言ったんだった。
もちろん、あの6人は私の周りで今も床に転がってます。




