53 ある日のカテリーナ
カテリーナの部屋にて
「カテリーナ、いるか?」
ノックもせずに勝手に部屋に入ってきたのは、やっぱりアレンさんだった。
「ノックをして下さいと先日も言いましたよね?」
妹になったとはいえ、女性の部屋に勝手に入ってくるとか、ありえないんですけど。
でも、アレンさんはそんな事気にも止めないらしく、いつもの様に勝手に用件を話始めた。
そう、少し前から何かと部屋にアレンさんが来るようになったのだ。
多分、気に掛けてくれてるんだと思う。アレンさんなりにだけど。
「この前の魔方陣、アレいいな」
最近、私はミレー様の元、いろんな魔方陣の改良(と言っても私は案を出すだけだけど)を重ねている。
で、その改良した試作の魔方陣の効果確認とか色々をアレンさんが引き受けてくれたのだ。
「あいつなりにカテリーナを心配しているから、少し頼ってやれ」
ってバルトール殿下から言われて、まさかと思いつつお願いしてみたら、本当に快く引き受けてくれた。
アレンさんの魔力制御すごいとか、量もハンパないとか聞くし、一番最初にアレンさん見たときの、ダークグレーのローブのイメージからか、私はてっきりアレンさんは魔導師なのかと思ってた。
でも違うんだって。魔術師の資格は持ってるけど、魔導師の資格試験はそもそも受けていないんだそうだ。
「どうして魔導師にならなかったんですか?」
「あの時は、アーダルフェルム殿下が魔導師を必要としていたからな」
アーダルフェルム殿下は、バルトール殿下のお兄さんで、この国の王位継承権第一位のお方なんだって。
会ったことも見たこともないから、どんな感じの人か知らないけど、噂によると、とても立派なお人らしい。
「ちょうど、月が近くなる予兆があったし、仕方の無い時期だった」
いつか行われる、教会主導の聖女召喚の儀に、国として正式に関わる為にと、随分前から魔導師の育成に力を入れていたんだそうな。
だから、その時期に魔導師になった人はもれなく国の御抱え魔導師になる訳で。
まぁ、突然一気に受かる訳じゃないから、結果的に今でも、ほとんどが陛下直属か、王太子殿下直属なんだって。
「だから、魔導師になる選択肢は俺にはなかった」
アレンさんの場合は、バルトール殿下の側近じゃなくなるのがどうしてもイヤだった、ってことらしい。
普通は陛下や王太子殿下の魔導師になるなんて、かなり名誉なことなんだろうけど、そこには惹かれなかったんだね。
まぁ、バルトール殿下至上主義のアレンさんらしいっちゃ、アレンさんらしいけど。
男同士の友情って、なんか尊いよね。
「お前、魔術師の資格取ったら、魔導師を目指すのか?」
そうなんです。今、私は資格を取るために勉強中なんですよ。頑張ってます。
「お前が受けるんなら、俺も受けるかな。お前、面白い魔方陣作りそうだし」
アレンさんが試作の魔方陣を見ながら、ニヤリと笑った。
え、なんか面倒臭くなりそうなので、すごーく遠慮したいんですけど。




