50 動き出した、何か
「カテリーナ様、お怪我はございませんか?」
「あ、はい。大丈夫そうです」
リーさんの問いかけに、とりあえず答えるけども、なんだろう。この、緊張感の無い感じは。
えーっと、リーさん?私達、両手両足をロープで縛られて、頭から袋も被せられてたと思うんですけど、どうやってほどいたのかな?
しかも、どこに行ってたの?そしてどこからこんなティーセットを持ってきたの?
「リーさん?私達、誘拐されたんじゃ?」
「カテリーナ様はどうされたいですか?すぐに帰りますか?それとも誰が何の目的で拐ったか確認しますか?」
え、帰れるの?私の驚いた表情で、リーさんは察したみたい。
「帰れます。帰還の魔方陣もありますので。ですが、カテリーナ様でしたら気になるのではと思いまして」
「そうなんですよね。聖女様を助けるために身を捧げて下さい、なんて言われると気になりますよね」
私とリーさんが図書室に行った帰り道、角を曲がったら、またしても待ち伏せされていた。しかも見るからに怪しい人達で。
フードを目深に被って、顔も布で隠した6人組は、私とリーさんの腕を掴み動きを封じると、頭にガポッて袋を被せた。
「聖女様を助けるために、身を捧げて下さい」
苦しげにそう言って。
「え、」
と思った時には、刺激臭がして。頭がぼんやりして、腕を掴まれたと思ったら、次に目を開けた時には床に転がってた。
目眩がしたけどぼんやりした脳を動かすべく、視線をさ迷わせて、目覚えの無い部屋に一人でいることに気がついた。
周りを見渡していると、部屋にリーさんが入ってきて、ロープを全て外してくれた。
「カテリーナ様、お怪我はございませんか?」
で、冒頭に戻る。
だけど、こんな優雅にティータイムってありなのかな?落ち着くけど。
「頭に被せられた袋に薬が仕込んでありました」
あ、そうなんだ。それで気を失ったのね。
「気配には気が付いていたのですが、どうも戦える者達ではなかった様なので何が目的かと」
あ、なるほど。捕まってみる気だったと。
なんだろうね。リーさんと一緒だと、何でもアリと言うか、安心感が半端無いから、まぁ、いいか、と思っちゃうんですけど。
沙羅様の今後に繋がる何かかもしれないし、情報仕入れるのも大事よね。
「じゃあ、何が目的なのか、分かったら帰りましょう」
「はい」
なんて、状況もよく分からないのに、そんな、軽く言うもんじゃないよね。
だって、まさかここから約二ヶ月も戻れないなんて思ってもみなかったし、この世界の色んなことを知ることになるとも、結界修復にも大きく関わることになるとも、全然ちっとも少しも微塵も考えてなんてなかったから。
この時に戻れたなら、速攻帰るを選んでたかもしれない。




