43 沙羅様の不安
「沙羅様にそんな事言ったんですか?あの鯰」
と、私が言うとミレー様がクスクスと笑い、
「カテリーナさんが言っているのは、あの髭が似ている魚のことかしら?」
と、言ってくれた。
うわ、ヤバかった。この世界に鯰はいないのね。ミレー様のフォローがなかったら、沙羅様に私が日本から来たことがバレちゃうところだったかも。
昔に召喚された聖女様も日本から来たみたいで、物の名前が同じものもたくさんあるから、ちょっとしたミスは、大抵大丈夫なんだけど、ちょっと迂闊だったか。
ミレー様がウィンクしてくれた。この気配りに、この微笑み。あぁ、本当に素敵な女性過ぎます、ミレー様。
「本当だ。鯰、鯰、ふふ、似てますねぇ」
沙羅様は口元を押さえて吹き出した。あぁ、良かった。イヤな事があったとしても、笑い事に変えてしまえれば、大抵のことは大丈夫な気がするんだよね。
「それにしても。失礼なことばかり言いますわね、毎回毎回。人間性を疑ってしまいます」
宗教って人を救うためのものじゃないんだっけ?なんせ典型的な日本人だから、信仰心とかよく分からないんだけど、違ったかな?
「前教皇様がお亡くなりになられた時、後継者問題で色々とありましたの。本来、継ぐべきだった方が亡くなられたり、行方不明になられたりと、教会内も一枚岩ではないのです」
そう言って、沙羅様の表情を気にしている。
まぁ、ね。結局のところ、今はミレー様と、この国の王族に守られて、教会側と少し距離を置いてるけど、この先はなぁ。
特に結界を修復する旅は、教会主導だし、メンバーもどうなるんだか。
陛下と王太子殿下達が交渉を頑張ってるらしいけど、うーん。
その流れで、バルトール殿下もかなり忙しいらしい。最近は、夕方に顔だけ見せに来る感じで、ゆっくり話をする時間もないんだよね。
「私、本当に結界を修復出来るんでしょうか。魔力の量も足りるのか、心配です」
沙羅様が心配するのも分かる気がする。
とんでもないサイズの魔方陣なんだよね。ま、そりゃそうか。だって国を跨いで全域って、考えただけでも規模が大きすぎるもんね。
だから魔方陣に魔力を供給するための魔方陣があって、各国三ヶ所位だったかな?で、六ヵ国回って最後の魔方陣に魔力を注ぎ込むと、結界が再構築されるんだって。
なんか色々と疑問に思うところがあるけど、教会の秘技でしょう?一般的に情報は出てないんだよね。
各国だって色々と思うところがあるだろうに、教会に歯向かえないんだろうな。だって、結界が直らなかったら困るしね。
昔の結界修復の旅についての文献があったらいいのになぁ。そしたら少しは沙羅様の不安も解消出来るかもしれないのにね。




