41 変わらないこともある ー沙羅ー
この世界に来てから、ずいぶん経ちました。
周りの人に恵まれて、この世界の事を色々と教えてもらって。
だから、皆が困ってるなら、この世界の人達を助けたいって思う位には、馴染んできたんだと思う。
元々、両親を亡くしてから、親戚とも上手く付き合えなくなって。だから、私の世界はすごくすごく小さくて、家か学校、それから習い事だけ。
だから、友達には会いたいけど、こちらの世界で出会った人達の方が、なんとなく心の距離が近いような気がして。戻れなくても、このままだったら、と思わなくもない今日この頃。
もちろん、私が聖女だから特別なんだってことは分かってる。
だって、ほら。この人達は、最初からずっと変わらないもの。
「聖女よ、魔力の制御は上達し安定したと聞いている。そろそろ、結界修復の旅に出られよ」
聖ヘレナ教会の聖堂に呼ばれ、そこに着けば膝を折り頭を下げるよう言われた。
何段も高い所から、いつもの通り上から目線で言う白いローブのこの人は、聖ヘレナ教の教皇様なんだって。
私の周りの人からも、一応、丁寧な言葉遣いで対応するように言われている。
例えば、年配の人と接するように、例えば、先生と接するように、と教えてくれたのはカナさんことカテリーナさんだったと思う。
カテリーナさんは、何を教えるにしても、私に分かりやすい例えで伝えてくれるから、本当に好き。
あの妖精みたいな見た目で、お兄さんのアレンさんのことを、ちょっとイラッとした感じで文句言ってる時も面白くて好き。
普段はふんわり笑うのに、たまに悪いこと考えてるみたいに笑うのも、かっこよくて好き。
なんて、目の前の人のことを考えたくなくて現実逃避してみる。
「こちらの世界で言えば成人の年齢と聞いているが、発育は良ろしくないようだな。戻り次第、聖女の儀を執り行う。それまでに少しは見られる様にしておけ」
それだけ言うと、さっさと居なくなった。
毎回、失礼なことばかり言われるから、もうため息しか出ない。はぁ。
その後には、白い髭の長いおじいさんが、またプルプル震えながらいろんな事を言っていった。
最近は、なんとなく聞いてる風に装う技を身につけました。
「勝手な言い分に、沙羅様が傷付くのは間違っています。だから、聞き流してしまいましょう」
って、カテリーナさんが言ってくれて。
いつも思う。この、勝手な事ばかり言う人達しか知らなかったら、私は頑張ろうなんて思わなかっただろうな、って。
結界を修復する旅、かぁ。
少し楽しみでもあるの。だってこの世界を自分の目で見て回れるってことだから。
でも、本当は怖くもある。
結界が直って、この世界の危機が去ったら。
私の存在って、どうなっちゃうんだろうって。
いらないって、言われちゃうのかな。
今、側にいてくれるみんなも、どんどん離れて行っちゃうのかな。
それだけが、今はとても不安です。




