表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/82

41 変わらないこともある ー沙羅ー

 


 この世界に来てから、ずいぶん経ちました。

 周りの人に恵まれて、この世界の事を色々と教えてもらって。

 だから、皆が困ってるなら、この世界の人達を助けたいって思う位には、馴染んできたんだと思う。


 元々、両親を亡くしてから、親戚とも上手く付き合えなくなって。だから、私の世界はすごくすごく小さくて、家か学校、それから習い事だけ。

 だから、友達には会いたいけど、こちらの世界で出会った人達の方が、なんとなく心の距離が近いような気がして。戻れなくても、このままだったら、と思わなくもない今日この頃。



 もちろん、私が聖女だから特別なんだってことは分かってる。

 だって、ほら。この人達は、最初からずっと変わらないもの。







「聖女よ、魔力の制御は上達し安定したと聞いている。そろそろ、結界修復の旅に出られよ」


 聖ヘレナ教会の聖堂に呼ばれ、そこに着けば膝を折り頭を下げるよう言われた。

 何段も高い所から、いつもの通り上から目線で言う白いローブのこの人は、聖ヘレナ教の教皇様なんだって。

 私の周りの人からも、一応、丁寧な言葉遣いで対応するように言われている。

 例えば、年配の人と接するように、例えば、先生と接するように、と教えてくれたのはカナさんことカテリーナさんだったと思う。


 カテリーナさんは、何を教えるにしても、私に分かりやすい例えで伝えてくれるから、本当に好き。

 あの妖精みたいな見た目で、お兄さんのアレンさんのことを、ちょっとイラッとした感じで文句言ってる時も面白くて好き。

 普段はふんわり笑うのに、たまに悪いこと考えてるみたいに笑うのも、かっこよくて好き。

 なんて、目の前の人のことを考えたくなくて現実逃避してみる。




「こちらの世界で言えば成人の年齢と聞いているが、発育は良ろしくないようだな。戻り次第、聖女の儀を執り行う。それまでに少しは見られる様にしておけ」


 それだけ言うと、さっさと居なくなった。

 毎回、失礼なことばかり言われるから、もうため息しか出ない。はぁ。


 その後には、白い髭の長いおじいさんが、またプルプル震えながらいろんな事を言っていった。

 最近は、なんとなく聞いてる風に装う技を身につけました。


「勝手な言い分に、沙羅様が傷付くのは間違っています。だから、聞き流してしまいましょう」


 って、カテリーナさんが言ってくれて。


 いつも思う。この、勝手な事ばかり言う人達しか知らなかったら、私は頑張ろうなんて思わなかっただろうな、って。






 結界を修復する旅、かぁ。

 少し楽しみでもあるの。だってこの世界を自分の目で見て回れるってことだから。

 でも、本当は怖くもある。

 結界が直って、この世界の危機が去ったら。

 私の存在って、どうなっちゃうんだろうって。


 いらないって、言われちゃうのかな。

 今、側にいてくれるみんなも、どんどん離れて行っちゃうのかな。


 それだけが、今はとても不安です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ