40 侍女のリーさん
「トルエンリードと申します。カテリーナ様、よろしくお願いいたします」
「リーエンディードと申します。カテリーナ様、よろしくお願いいたします」
見た目が私と同じ年頃の女性が、全く同じ動作で深々と頭を下げるから、思わず瞬いた。
「トリー、リディと呼べばいい」
バルトール殿下は私の反応に少しだけ笑って、
「また、後でな」
と、なぜか私の頭を軽く撫でてから、部屋を出ていった。とにかく今、殿下はすごく忙しいらしい。
この前、迷子の私を探しに来てくれて。それからなんと言うか、色々と気を使ってくれてると思う。
そして、最近なんだかスキンシップが多い気が、しなくもなくもない。
頬が熱い気がするけど、これは気のせいだと思おう。気のせい気のせい。
「カテリーナです。トリーさん、リディさん、どうぞよろしくお願いします」
双子だよね、どう見ても。超そっくり。
身長も体型も髪型も同じだし、わざとドレスも揃えてるんだろうなぁ。
髪の毛の色は暗めの茶色でメイクが薄めなのか、顔立ちは可愛らしい感じなのに、印象が薄い。あ、眉毛が薄いからかな?
侍女さんメイク?と思ったけど、この前沙羅様のところで見かけた侍女さん達は、ハッキリメイクだったしなぁ。
「どちらか1人が必ずカテリーナ様の側におりますので、何でも仰ってください。先ほど殿下はああ仰いましたが、私共のことはどちらもリーと御呼び下さい」
どうしてリー?と疑問を顔に出せば、
「その方が色々と都合がよろしいのです」
とキッパリ言われてしまった。まぁ、色々と言うんだから色々あるんだろう。
と思っているうちに、1人が頭を下げた後、退出してしまった。
「分かりました。では、リーさん早速教えてもらいたいんですけど」
もう、残っている人が、トリーさんなのかリディさんなのか、判別出来ないため、リーさんと呼びました。
そして、まずは侍女の仕事って何かって所から教えていただきましたよ。だって、どんなことする仕事なのか知らなかったら、何をしてもらえばいいのか分からないし。
距離感もさっぱり分からないしね。
で、なんと。方向音痴問題と食事問題は即解決しましたよ。本当にありがたいことです。
この時は、二人と少しでも仲良くなれたらいいなぁ、とか困った時に相談出来るから良かった、とか殿下がすぐに動いてくれたから助かったなぁ、なんて本当に単純に考えてた。
二人がレオナードさんの元部下で、実はこの国の数少ない魔導師の二人で魔法にも詳しく、しかも護衛も出来る程の強さを持つ、スーパー侍女さんだってことは全く知らないし、この先助けてもらうような事件が起きるなんてことも、全然分かってなかったし。
ただただ、私以外の人の気配のあるこの部屋が、少しだけ暖かくなったと感じられて、気持ちが軽く弾んでいたのかも。




