4 まさかのファンタジー?
「この者が?」
白いローブのおじさんは、目の前まで来ると、ジロジロと私を眺めた。
いたたまれなくなって身じろぐと、全身鎧の人が、私の顔が動かないよう槍の柄でグッと胸を押さえつけた。
「聖女と同じ世界の者かと」
ダークグレイのローブの人が、私の髪を引っ張り、瞳を除き込む。見えた瞳がすごく綺麗なエメラルドグリーンでハッとした。
「黒い髪に、黒い瞳。そして絹の様に滑らかな素材で出来た衣服。それから恥ずかしげもなくさらす素肌。こちらではあり得ませんので、間違いないかと」
な、なによ、恥ずかしげもなくとか言うな。スカートの下の足を意識して、なんだか急に恥ずかしくなる。
確かに今日は仕事帰りにスーパーに寄ったから、ビジネススーツのままで。タイトスカートの下のストッキングはとうにボロボロに電線しまくってますけどね、でも好きでこんな状態なんじゃないし。
こんなところに閉じ込めて、拘束して、こんな状況にしたのそっちじゃん。と、思いながらも目の前に槍の刃の部分があるから、動いてしまう事が怖くて言葉を発することも出来ない。
槍が本物かどうか、なんて私には分からない。なのに私の胸を押さえつける力があまりにも容赦なくて。
何かあれば、躊躇いなく目の前の刃の部分で傷つけられる、と変に確信しちゃってるから余計に怖くて。呼吸すら、無意識に潜めてしまっていた。
「ふん。聖なる力は感じるか?役に立ちそうか?」
「いえ、先程の女と比べると、大した力はないかと」
バカにしたような物言いにカチンと来るけど、表情に出したら絶対ダメ。だってこいつら、自分たちで聖女を召喚したくせに、「先程の女」扱いだよ?
崇めるでも敬うでもなく、確実に蔑んでる。自分たちの都合で勝手に呼んだくせに、あんな言い方するなんて。異世界から来た人間になんて人権認めないやつらだよ、絶対。
「力がないなら捨て置け。邪魔なら消しても構わん」
白いローブのおじさんは、ダークグレイのローブの人にそう言うと、私を槍で押さえつけた方の全身鎧を引き連れて、部屋から出ていった。