39 ある日のカテリーナ
バルトールの執務室にて
「くそっ、なんだよ」
「言葉使い」
私が、注意すると悔しそうな顔を隠さないアレンさんが、
「もう一回だ。勝つまでやるぞ」
やだよ。こんなになるなら勝つんじゃなかった。負けませんよ、と調子に乗った私が悪かったんで、許してもらえませんかね。
えー、何をしているかと言いますと、アレですよ、アレ。「魔方陣ゲーム」ですよ。
「カテリーナ、お前スゴいな」
と、ある日アレンさんが、普段見たことのない笑顔で話しかけてきた。
なんだろう?と思っていると、
「ミレー様にお願いして、俺も作って貰ったんだ」
と子供の様に目をキラキラさせて「魔方陣ゲーム」を私に見せてきた。あー、はいはい。それね。
「さぁ、やろうぜ」
「は?」
えっ、誰と誰が?わざわざ、こんな子供騙しみたいなゲームをやる?
これ、日本の一筆書をイメージしたんだよね、1番省エネな魔力の使い方なんだって。必要な所に必要な分だけ魔力を流すのが、基礎の基礎だって聞いたから。
「いや、あの、私と沙羅様は、魔力を体から出すことに慣れていないので、意識して少しずつ流すことだけを練習したかったんですよ」
あなた達は慣れてるでしょうよ、と伝えたかったんだけども、全く伝わらず。
「その基礎の練習を、こんなに楽しく練習させることがスゴいだろ」
といそいそとテーブルに設置している。バルトール殿下まで、やる気なのかニヤニヤしながら位置に着いている。
「殿下、俺にもやらせろ」
そう言って寄ってきたのは、殿下の側近のテオドール様だ。何でも、元騎士団団長だったそうで、腕の立つお方らしい。お子さんが3人いて、このゲームが欲しいんだと言っていた。
「お前も来いよ」
アレンさんに呼ばれているのは、やはり側近のガイ様で、やれやれって表情を浮かべてやって来た。
「それでは私がよーい、ドンって言ったらスタートです。よーい、ドンのドンですからね」
「不思議な掛け声だな」
そうですか?まぁ、そうですよね。ほっとくと、根掘り葉掘り聞かれそうなので、アレンさんの興味津々な顔は見なかったことに。
「よーい、ドン」
最近は魔力を体から出すことにも大分、慣れてきたから、いい勝負が出来そう。
しかも、アレンさんが用意したのは、上級者用の魔方陣ゲームだし。
これは、ミレー様と作る前にすごく盛り上がっちゃったから、結果として大分複雑な魔方陣になったんだよね。
魔力を適切に流すのが、難しい仕様になっております。
でも。
私が考えましたからね、ふふ、楽勝でした。
「マジか」
「・・・」
「こりゃいいな」
「カテリーナ、もう一回」
誰が何を言ったのかは、ご想像に任せるとして。1位の箱からは飴じゃなくて、紙が出てきた。なんだ?
「アレンさん?」
景品の中身は設定した人が決める仕様になっている。今回はアレンさんが設定したハズだけど、これは。
「あ、いーだろ、それ」
とてもいい仕事をした、みたいな顔をしているアレンさん。
だけど、私が紙を持って微妙な顔をしていたからか、殿下が覗きこんできた。内容を見て、殿下もやっぱり微妙な顔をした。
ですよね?
勝ったヤツの言うことを1回聞く、だって。
子供か。




