33 お兄様、ひどい
休日の過ごし方に困り果て、とうとうアレンさんに相談してみることにした。
「アレンさんって、お休みの日は何をしてるんですか?」
「そうだな、古代語の解読の研究か、魔方陣の改良の研究か、寝てるかのどれかだな」
見事にインドア。ってか研究ばかりしてるって殿下が言ってた。
なんでも、殿下の仕事に必要な実務を終わらせると、とっとと研究室に籠っちゃうんだって。
え、それって側近としてどうなのよって話だけど、まぁ、側近はアレンさんだけって訳じゃないのでいいらしい。
「この城の中に図書室はありますか?本が読みたくて」
と聞けば、知らないのか?と驚かれた。
いや、あなた、私に教えたの殿下と自分の執務室と、沙羅様と学ぶ応接室と食堂だけですけど。お忘れで?
アレンさんって本当に、バルトール殿下のことと魔力とか魔方陣とかにしか興味がないんだなぁ。
一応、長男なんだけど、これじゃ跡継ぎとしては無理って、早々に次男が継ぐことになったらしい。
だって、実家からの呼び出しとか総無視だってよ?いいのか、それで。
いや、まぁ、その兄弟の顔さえも知らずに養子になってる私が言うことじゃないけどね。
「じゃ、今から行くか」
と、連れていってくれたのはいい。
でも、着いたら一瞬で居なくなったよ、あの人。
え、司書さんに紹介とか、本の貸し出しのルールとか、しちゃダメなこととか、一切説明無し?
「ここだ」
ってドアを指差したから、そっちを見て振り返ったら、もう居なかった。本当にひどい。見た目と違って、全然ジェントルマンじゃないんですけど。
そーっとドアを開けて、小さな声で、
「失礼します」
と、言って中に入ると、すごく立派な図書室だった。吹き抜けになっていて、二階にまで続く背の高い本棚がたくさん並んでて、ものすごい数の本に圧倒される。
右見て左見て、ビックリしてまた右を見てたら、クスクス笑い声が聞こえて我に返った。
「もしかして、アレンのとこの新入りさんかな?」
慌てて振り返れば、カウンターの内側にいた男性が立ち上がった。
ビックリするほど背の高い男性に、思わず一歩下がって見上げてしまう。2メートル位、ありそうに見える。
「司書のレオナードです。分からないことがあれば、何でも聞いて下さいね」
そう言って、ふにゃっとした笑顔を浮かべた。なんだろう、この癒される感は。
髪の毛は明るい栗毛で、天パかな?ふんわりカールしていて、顔立ちも中性的だからかな?とにかく雰囲気が、ふんわりしてて、穏やかな感じ。
「あ、アレンさんのとこの新入りのカテリーナと申します。よろしくお願いします」
と挨拶すれば、レオナードさんはまたクスクスと笑って、
「アレンに連れられてここに来たの君で4人目なんだけど、同じ様に置いてかれて、キョロキョロするんだよね」
あはは、なるほど。いつものことなんですね、あのヤロー、と心の中で悪態をついてみる。
「アレンの家は本当面白そうな人ばかり養子にするからね。興味が尽きないよ」
え、新入りってそっち?
お兄様、養子に入ったばかりの兄弟に対して、扱いが雑過ぎませんかー?




