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31 変わっていく気持ち ー沙羅ー

 


 少しずつ、私を取り巻く環境が変わっていくのを肌で感じてた。




 私のことを沙羅様と、名前で呼んでくれる人が少しずつ増えたこともそうだし、いろんな事を聞かれるようになって。

 例えば、食事の内容や、その日着る服とか髪型とかを、どちらがいいか、とかどんな物が好きか、とかそんな事を。


 自分の物が、何も無かったこの部屋にも、少しずつ少しずつ、私の物が置かれるようになり。

 それは本だったり洋服だったり、ミレー様がくれた髪紐だったり、カナさんがくれた栞だったり。

 あとは最初の頃にお世話になったマットさんが、なにかと気にかけてくれて。この前は綺麗な箱に入ったカラフルで可愛い砂糖菓子をくれました。




 それから、外にも出られるようになったの。ミレー様が偉い人に言ってくれたのかな?少しお庭を散歩したり、教会と同じ敷地にある孤児院にも連れていってもらえるようになって。


 小さな子供達がたくさんいて、一緒にかくれんぼしたり、絵本を読んだり、みんなすごく喜んでくれたの。


 子供の頃からの夢が、幼稚園の先生になることだったから、みんなと手を繋いで走ったり、一緒に歌を歌ったり出来て、すっごく楽しかったなぁ。また来てね、って言ってくれたから絶対に来るね、って子供達と約束もして。






「子供達、沙羅様に遊んでもらって嬉しかったでしょうね」


 なんて、私が嬉しそうにしてたからか、侍女さん達まで一緒になって喜んでくれました。





 魔力の基礎の勉強もして、この世界の事を色々と知って。

 今、この世界が直面している危機は、他人事と思ってたらダメなんだなって感じたの。


 仲良くしてくれてるカナさんとか、先生のミレー様とか、私の目の前にいる侍女さん達が、痛かったり悲しんだりするのはイヤだなって。






「沙羅様、魔力制御がとても上手になりましたね」


 ミレー様が優しく微笑んでくれて。


「私も負けてられませんね、沙羅様。次はこちらで勝負です」


 と、カナさんが新しい魔方陣を出して、ニコニコしている。これはカナさんがミレー様に作ってもらった魔方陣なんだけど、すごいの。


「用意はよろしくて?」


 私もカナさんも頷く。ミレー様の手が挙がったらスタートの合図。


「はい」


 挙がった。私は魔方陣の一ヶ所に人差し指を置き、自分の体の中心にある、魔力を探る。そして蛇口を捻るように少しずつ出口を解放して、魔力を流した。

 すると魔力は私の指先から、少しずつ魔方陣へと流れていく。

 小さい頃に大好きだった、遊園地の大きな迷路。あれを空から眺めるみたいなイメージで、魔力を行き渡らせていく。

 ゴールはスタートと同じ指先で。

 もうすぐゴールで魔方陣が光り始める、と思ったら、隣のカナさんの魔方陣が輝いて、パンっと小さな破裂音がした。


「やった」

「あー」


 私とカナさんの声は同じタイミングで、それから私の魔方陣からも小さな破裂音が聞こえた。


「参りました」


 私が頭を下げると、カナさんが笑って、


「年上だもの、たまにはいい所を見せないとね」


 と、魔方陣の上に散らばった、カラフルな包みのキャンディを私とミレー様に2つずつくれた。そして最後の1つをサッと口の中に放り込んで、


「おいし」


 って嬉しそうに笑うの。

 この魔方陣は、中々上手くいかなかった魔力の制御の練習にと、カナさんが発案した「魔方陣ゲーム」と言うもので、最大5人まで一緒に遊べるんだって。

 一番早く魔方陣に魔力を適切に流せた人が勝ちで、ちゃんと発動すると魔方陣の真ん中に箱が現れて、パンって破裂音と共に箱が開くの。

 箱の中からは順位の旗が出てくるんだけど、1位の箱だけキャンディが飛び出すなんて、素敵なアイディアじゃない?

 この魔方陣で練習するようになってから、魔力の制御がすごく上達したの。私も、カナさんもね。


 早くもっと上手くなって、好きになってしまったこの世界の人達を、私は守らないといけないって、誰かと笑い合うたびに思うようになってました。




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