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24 異分子 ー沙羅ー

 

 ある日突然異世界に召喚された場合。

 こっちで死んだら、遺体だけでも向こうに還れないかな、とか考える。

 ネガティブだな、と私も思う。でも、知らない世界で、知る人のいない世界で、生きたいと強く願うほどの何か、が見つからないでいた。


 だから、もう3日も何も食べてないのに、以外と私ってしぶといなぁって。

 だって、倒れたりもしなければ、意識が霞む、なんてこともなくて。

 結構私って頑丈なんだ、意外だな、そんな風に考えてた。


 今となっては恥ずかしいけれど。





 全く食べていないと思っていたのに、


「お薬効いて良かったですね」


 と言ったの。毎日、食事を持ってきてくれる女性が、手をつけられなかった食事を見て、少し寂しそうに、でも少しホッとした様に。


 え?って驚いて聞き返したら、お医者さんの指示で、夜中に水分と体力付くお薬を飲ませてくれてたんだって。


 なぁんだ。お薬、私にもちゃんと効くんだ。

 なぁんだ。そーなの、私、ここの人達と一緒なんだ、って思ったら、すっごくお腹が空いてきた。


 何度か見てもらったお医者さんに可哀想な子を見る感じで、


「ちゃんと食べるように言ったハズだが?」


 と、怒られました。

 食べたくなかったんじゃないもの。怖くて口に入れられなかっただけなの。心配掛けたかったり、優しくしてほしいからとかじゃない。


「心配かけて、ごめんなさい」


 周りにいた人に素直に謝ると、なぜか皆困ったような顔をした。







 その日は、久しぶりに食事を取ることが出来て、気持ちが少しだけ前向きになったような気がする。

 と、言っても。餓死はしたらダメだな、とかそんな程度だけども。


 だって、こちらの世界の食物を、食べられるということは分かったけど、何で出来てるのかも、味付けも、よく分からなかったし。

 パンだって、見た目パンだけど私の知ってるパンなのかな?って思う。


 それに、あぁ、カレーライスとかパスタとか、カツ丼天丼親子丼とか、唐揚げとかアジフライとか。もう二度と食べられないと思うと、悲しくて悔しくて、泣けて泣けて仕方がなかった。








 部屋を見渡す。

 多分、豪華なんだと思う。ベッドもビックリするほど大きくて、装飾が細かい。ベッドカバーなんか刺繍がすごいの。

 他にも、置いてある棚とか、触るのが怖い大きな花瓶には見たこともない花がたくさん飾ってあって。きっとすごいことなんだろうな、とは思う。



 だけど。

 私の物は一つも無い。ここに私の物は何も無いの。パジャマもコップも、何もかも。当然スマホも無いし、テレビも無い。

 知っている人もいないし、窓の外には見たこともない大きな月があって。全く知らない世界なんだって、毎回思い知らされる。


 みんなが普通に食べてる物を、怖くて食べられないなんて、私だけが異分子なんだって、おかしいんだって感じてしまう。


 みんなが聖女と呼ぶ、ここにいる私は、本当に山岸沙羅なのかな。考えたくなくて、豪華なベッドに潜り込む。




 明日なんて来なきゃいいのに。



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