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22 エインデンブルグ王国 ーバルトー

 



 聖ヘレナ教会が、古くからある文献に基づき、異世界から聖女を召喚するのだと言う。


「魔導師はなんと?」


 今、起きている魔物による被害の報告と共に、召喚の儀の報告を聞いた王は、疲れたようにため息を吐き、第一王子である兄に尋ねた。


 リュミエール・ダ・エインデンブルグ。

 このエインデンブルグ王国3代目の王で、俺の父でもある。


 この大陸には現在7つの国があり、建国してからの約70年程は境界や国内での小さな小競り合いはあれど、大きな戦争には至っていない。

 200年もの間続いた全大陸での激しい領土を巡る戦争に、国力の衰退を危ぶんだ良識ある大国の提案で、80年前に和平が結ばれたからだ。


 元々、大国に抵抗するための連合国だった、エインデンブルグは言語も、宗教もバラバラで、和平後、どのように一つの国として発展していくか、問題が山積みだった。


 政治も経済も不安定な時代に、民衆の拠り所と成ったのは、大国より入ってきた宗教、聖ヘレナ教だ。


 聖乙女と呼ばれる修道女達が各地を回り、疲弊した民衆に対し、癒しの力を注いだのだ。

 病やケガを治し、明るい未来を説く。バラバラだった民衆は、聖ヘレナ教の元、ようやく一つの国に纏まった。

 そして、その求心力で国に対し力を示す。


「聖ヘレナ教を国教とせよ」


 当時の連合国代表達は、宗教国家になり自治権を全て奪われるよりは、と嫌々ながらも承諾。

 これにより、教会から遣わされた一族を王室としたエインデンブルグ王国が建国された。




 隣に位置する大国、ブリュエール皇国は建国675年だと言い、建国当時からすでに聖ヘレナ教の教会があったと言う。

 そんな全大陸で長きに渡り強大な力を持つ宗教と、たかが建国して70年程度の一国の王族では、力関係一つ見ても今回の召喚に対して、何かを言う立場にはなり得なかった。




「はい。すぐに動ける魔導師が二人だけでしたので、確実ではありませんが」


 と一度前置きをして、兄アダムは魔導師から聞き取りしたことを王に伝える。


「魔方陣は条件が満たされれば、発動すると言っておりました」


 そもそも、聖女召喚に使われる魔方陣は、聖ヘレナ教の開祖が残した文献に記述があり、過去に教会付きの魔導師達が研究を重ねようやく再現された、聖ヘレナ教の教皇しか持ち出せない秘技中の秘技らしい。


 だが、我が国で召喚を行うということで、何か良からぬものを喚ばれては敵わないと、無理やり魔導師を送り込んだのだ。

 とは言っても、魔方陣に不穏な記述がないか、確認させてもらうだけで精一杯だったようだが。






「聖女の魔力を持つもの、等の記述ががあったようです」


 うちの魔導師の実力では、解読済みの言葉や、単語の並び等でおおよそ、この様な事が書かれているようだ、程度の解読しか出来なかったのだが。








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