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21 一人になって

 


 暴走するって寸前で、アレンさんが魔法を掛けて止めてくれた。なんか薄い膜を全身に貼り付けて、魔力が抜けないようにして、体内で循環するようにするんだって。


 なんとなく体の中が温かくなった気がする。血行が良くなった時みたいな?


 小さい暴走には、この魔法で対処するそうな。でも前回の私みたいに全力での爆発的な暴走には効かなくて、色々と大変だったとブツブツ言ってた。


「明日、迎えに来るから今日はもう寝ろ。この部屋は自動で鍵が掛かるようになってるから、安心して休め」


 そう言い残してアレンさんは部屋を出て行った。


 気がつけば、もう夕方だったみたいで、窓から射す光が赤かった。この世界にも夕焼けがあるんだなぁと窓の外を見れば、大きな月が真っ赤でなんか不気味だった。


 はぁ、とため息をついてベッドに転る。


 この部屋は、アレンさんの執務室の近くにあるんだそうで、私のために整えてくれたらしい。

 驚くことに、この建物、お城なんだって。お城だよ?と言ってもね、目覚めたらこの部屋なんで、城感ゼロですけどね。

 それで、なぜお城にいるのかと言いますと、なんとバルトさん、王子様でした。

 いやぁ王子様って本当に存在するのね、って感じですけどね、第二王子様らしいよ。


 まぁ、政治的なことも、教会との関係も、色々とあって、今回の聖女様の召喚に関わることになったんだって。


 でも、まぁ、身元保証人だし保護者みたいなもんだし、普段は畏まらなくていいと言われたし。呼び方だけは変えるけども、とりあえず、私には関係ないから置いておいて。


 で、アレンさんは第二王子の側近だから、バルトール殿下の部屋と続きの執務室に詰めることが多くて、アレンさん自身の執務室も近くにあるから、そのまた近くに私の部屋を用意してくれたみたい。


 聞いただけだから、実際の位置関係はまだ、分からないんだけどね。




 はぁ。部屋を見渡す。

 クラシックで手の込んだ装飾のある、タンスなのかな?それから机と椅子。テーブルと二人掛けの椅子と一人掛けの椅子。それから今、寝転がっているベッド。奥にはトイレとシャワーがあるんだった。


 あ、トイレは水洗ではないけど、魔方陣が組み込まれているらしく、ボタンを押すと勝手に魔力を感知して、キレイになってた。便利便利。

 シャワーも、押せばお湯が出て来て不便はなかった。魔法すごい。


 みんなが魔力を持ってるから、魔方陣をそう組んでしまえば、魔力を流そうとしなくても、魔法が発動するんだね。

 アレンさんが言うには、単純な魔方陣には、魔力も単純に流せばいいんだって。よく分からないけど、そうなんだって。






 これだけ便利でも。

 テレビもなければ、スマホもないよ。寂しいときに、誰かと簡単に繋がることも出来ない。


 ずっと緊張の中、バルトール殿下やアレンさんとやり取りしてたんだなぁ。

 やっと一人になって、ホッとしたら気が抜けて、涙が溢れた。これはなんの涙だろう。もう、良く分からないや。




 夜になって、月が白く光るまで、涙は止められなかった。







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