17 魔法にかかる
皆が当然のように知っている魔法について、純粋に驚いたり、喜んだりする私を見て気を良くしたのか、アレンさんは魔法と魔方陣について、詳しく教えてくれた。
魔方陣には、古代語で魔法の発動条件や詳しい内容等が組み込まれていて、それに上手く魔力を込められれば魔法が成立するらしい。
え、古代語?日本語ではなく?と不思議に思ったけど、これ多分、触れちゃダメなヤツ。
聖女様と一緒に召喚されたから、私にもチートな能力が付与されたとか?それとも、聖女様も読めるのかな?
ちなみに、魔方陣を作成することが出来るのが魔導師で、作られた魔方陣に魔力を流して魔法を発動させられるのが魔術師らしいよ。
魔方陣はやっぱり作るのが難しいらしく、魔導師はこの国に7人しかいないんだって。
読めるって、結構なチートなんじゃないの?読めたら書けそうな気がするし。
それにホラ、魔方陣の研究機関に監禁とかになったら怖いしね。いや、そんな機関があるのかどうかも知らないけど。
まぁ出る杭は打たれるって言うし、とにかく目立たず、周りに溶け込むことをモットーに頑張るんだから。
下手に目立って、鯰のおじさんに目をつけられるとか最悪じゃない?絶対避けたいし、絶対に逃げてやる。
「元の姿に戻す魔法だな」
ページを捲っていたアレンさんの手が止まった。そのページの真ん中に手を翳し、
「そこへ」
と、言って私の少し横を指差した。そこってどこ?と思ったら、聖女様が召喚されたの時の(まぁ、私が巻き込まれた時のとも言う)あの光る輪が床に現れましたよ。
急いで真ん中に立つと、輪の中に光る文字も浮かび上がってきた。
範囲内の者を正しき姿に戻す
って書いてある。あぁ、本当に読めちゃうよ、なんて地味に驚いていたら、光る輪がゆっくりと廻りながら浮かんできて、私の頭上で止まり、急に落下した。
その光の残像が、薄いカーテンの様にフワリとして、キレイだなぁと思ったら輪が強く光り出す。
「あ、魔法かかる時って、何か感じるわけじゃないんだ」
ピリッとしたり、暖かくなったり、何か感じたりするのかと思ってた。思わず手をグーパーグーパーしてみるけど、特に異常はなくて。なんだかホッとして笑ってしまう。
「おい、なぜ今姿を戻した」
前髪がちゃんと元の色に戻っているのに感心しながら、怒ったような声を出したアレンさんを見れば、ガルルって今にも牙を剥き出しにして噛みつきそうな顔をしていた。
「あぁ、そうですよね」
私はおもむろにコンタクトレンズを外すと、もう一度アレンさんを見つめた。




