12 罰が当たったのかな ー沙羅ー
私は、山岸沙羅。
都内の女子高に通っていた16才。そんな私がこんな昼間から学校にも行かず、こんな豪華なベッドの中で、何をしているのかと言うと、絶賛引きこもり中なんです。
どうして、って思ってる?私もね、好きでこんなことしてる訳じゃないの。
本当はね、どうしたらいいのか分からなくて、ただただ困ってるだけなのよ。
近所のスーパーで買い物しているときに、スマホが鳴って、出ようと思ったら父の従兄弟の息子さんからだった。
存在も知らなかった父方の親戚に初めて会ったのは、事故で亡くなった父と母の葬儀の日。
未成年で遺産の管理は大変だろうと、善良ぶって近づいて来た、たくさんの親戚の内の一人だった。
全て父の親友で弁護士の脇坂さんが、素早く私の為に動いてくれていて、成人するまでも、成人してからも、私が全く困らないようにちゃんと手続きをしてくれていた。
それは生前から父と母に頼まれていたんだよ、と脇坂さんは言っていた。何かあった時に、可愛い一人娘に不自由はさせられないから、って。
だから、父と母の死を悲しむでも惜しむでもなく、私の生活の心配をするでもなく、遺産の話をしてきた親戚類は、容赦なく縁を切る宣言をした。
それでも少なくない遺産目当てに、しつこいほど連絡をしてきていたのが、スマホを鳴らしている父の従兄弟の息子さんだ。私にとっては、はとこになるのかな?
その石川信吾さんは、私より11才年上のフリーターで、会社を起こしたいから融資してくれと本当にしつこかった。
本当に嫌気が差していて、もう着信拒否しようと話も聞かずに電話を切ったから...
そうやって困ってる人を切り捨てるようなことをしようとしたから...
だから、罰が当たったのかな。
何かがピカッと光ったから、驚いて足元を見れば、細く光る金の文字列が、私を中心にして円盤状になって、ゆっくりと廻りながら浮かんできた。多分だけど、驚きのあまり口がポカンと開いていたと思うの。
一度私の目線を通り越して、頭上まで上がってから、一気に足元まで降りて。
目を開けていられない程の光に包まれたら、エレベーターで一気に高い所まで昇った時のような浮遊感があって。でも、次の瞬間には高い所から落ちてる、と感じた。
眩しさに目を閉じたけど、次に目を開いたら、スーパーじゃなくて、全然知らない所にいるなんて、想像もしないと思わない?




