11 主犯は誰だ
「それほどまでに聖女様の魔力が必要な、大変な時なのに、引きこもらせてしまった原因は何なのですか?」
率直に尋ねれば、男性二人は微妙な表情を浮かべた。
「お二人が対応なさったのですか?」
と聞けば、
「いや、教会のもの達だが、正直、なぜ聖女が今の状態になったのか、誰にも分かってないらしいんだ」
「教会?」
バルトさんの説明によると、
召喚の主導は、この国の国教である聖ヘレナ教会なんだって。
昨日、鎖に繋がれていた時に見た、偉そうな白いローブの鯰のおじさんは、聖ヘレナ教の教皇なんだそうな。
そうか。あいつが主犯か。
教皇ってのは、教会のトップのことを言うそうな。あいつがトップじゃ、ろくな教えじゃないと思わない?命を大切にしない宗教なんてあるんかいな。何を教えてるんだかね。
まぁ、いいや。とりあえず、この人達が聖女様召喚の主犯じゃなくて良かった。
「バルトさん、一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、なんだ?」
これ以上引き伸ばしても仕方ないし、そろそろ本題に入っていただきますか。
「聖女様と私は、元の世界に戻れますか?」
来てしまったものは、しょーがない。それよりも、これからどうするのか、が大事だよね。
聖女様が、結界の修復して世界が安定し次第、元の世界に戻れるのなら、全力で聖女様をバックアップさせていただきますよ。
そうでしょ?一緒に帰らせて欲しいから、私だって頑張りますとも。
でも、元の世界に戻れないなら。
「いや、すまない。帰還の魔方陣は確立されていないんだ」
申し訳なさそうに、バルトさんが頭を下げた。バルトさんのせいでもないのにね。
それに、きっと言いづらいことなのに、本当のことを教えてくれた。それだけで・・・
とりあえず、他に知ってる人もいないし、鯰のおじさんサイドは完全に無理だから。
少しも、微塵も、全くもって信用出来ないから、だから。
本当はあまり関わりたくないけど、背に腹は代えられないから、もう、勝手にこの人を信じると決めた。
ずっとベッドの背もたれに背中を預けたまま話を聞いてきたけど、ベッドから降りる。
少しだけ服を直して、私の目線に合わせてくれていたバルトさんの前で、片足を折った。
「そうですか。でしたら、聖女様に接するお仕事、引き受けさせて頂きます。そのつもりで助けていただいたのですよね?」
バルトさんのコバルトブルーの瞳が大きく見開いて、それから二度、瞬きをしたら、急に表情を代えた。
何かの力を感じた。
バルトさんを包む空気が変わったというか、纏う気が変わった、というか、私には何も見えないけどオーラが違うみたいな感じ?
バルトさんは立ち上がると私の頭に手を乗せた。大きな手だな。
「その覚悟、しかと受け取った。バルトール・ダ・エインデンブルグの名において、市村加奈子の身元保証人となろう」
こうして私は身元保証人を、無事ゲットした。




