10 月が落ちる?
「結界、ですか」
「今回の魔素の異常な増加について、過去の文献をさらった所、ある程度の原因が分かった」
バルトさんは立ち上がって、窓際に行くとカーテンを引いて加奈子に言った。
「月が見えるだろう?」
言われて窓越しに空を見上げれば、青白くて大きな満月が。
思わず目を見開いた。
いや、大き過ぎない?え、あれ月なの?
「ち、近すぎません?落ちてきそうなんですけど」
あまりの大きさに驚きを隠せなくて、素になるけど、しゃーない。だってぶつかる、って思うくらいの近さだよ?
「文献によると、月の接近は百年に一度、起きる現象なんだそうだ」
息を詰めるみたいに月を見上げていたけど、過去に何度も起きている自然現象なら仕方ないのかな?
でも、百年に一度って結構な頻度じゃない?なら、この世界の人にはまぁまぁ慣れたことなのか?
とりあえず、落ち着こう。
「では、前回の時の被害や対策などが、文献に残っていたのですね」
そこに聖女召喚の方法が載ってたのかな?
何をすればいいのか分からないと、危機に対して対策も練れないものねぇ。
「いや、前回も、その前も、大した被害は出ていない」
え?どーゆーこと?
魔素が増えたら魔物が増えるから、討伐が間に合わないって話だったよね?私の疑問に答えるようにバルトさんが
「それが、結界により守られていたことが分かったんだ」
と言った。
文献によると、古くから大陸の全域にわたるような大きくて、強力な魔方陣が作動してて、この結界の中では魔素の量が調節されて、魔物による被害を少なくしてるんだそーな。
それが何百年かに一度、結界が弱まる時期があって、そうすると今回のような被害が出るらしい。
で、その結界は何百年前だかの聖女様の魔力で作動しているから、威力を元に戻すには、聖女様の魔力が必要になる、と。
なるほどー。
それで聖女様の召喚が必要ってことに繋がるし、魔方陣の内容にも頷けるわ。
納得は出来ないけどね。




