死にそうになる
サラミがうまい
私の名前は…?
「あなたの名前はセン、センだよ」
セン…ね、妙にしっくりくるなあ
ありがとう、大事にするよ
名前の意味とかって…あるの?
「意味はね…ない!でもなんかあなたはセンって感じがしたから!センなの!」
そ、そう…ありがとう
名前が決まったところで…あの、私今すごくお腹が空いてるんだけど…昨日から何も食べてなくて
ご飯、どうすればいいの?狩りに行かなきゃとかなら狩りに行くんだけど
「それなら今朝撃ち落とした羽根つきトカゲの尻尾肉あるしそれ食べようよ!人間は…焼かないと肉食べられないんだっけ?ちょっと待ってててね、串持ってくるから!!」
異世界初の食事はなんたらワイバーンとかいう人体に良くなさそうな響き全開の謎のお肉でした
どうしよう、人間の体でそんなわけわかんないの食べたら100%お腹壊すよね…
せめて何か薬草的なのがあるか確認だけでも…
神からせびった鑑定スキルとやらで周囲を見渡す
あった!あんじゃん!
霊王草:市場価値Lv77 霊王の禁呪による不治の病をも癒し、生の一葉を食めば10年は寿命が伸びると言われている 古竜を始めとするの魔力残滓の吹き溜まりにのみ生えると言われている 古来より この薬草を巡った戦は絶えなかったが これを手に出来た人類種は一人もいない
実は野菜サラダにすると美味しいだけの野草
霊王の呪いも寿命も病は気からの精神、心の持ちようでどうとでもなるのだ、要はほとんど気のせいです
草じゃねーか!!!おい!!!
なんでそんなかっけえ名前ついてんだよコラ!!!
「おまたせー!これ串ねー、ちょっとそこの地面燃やすから5歩くらい下がってー」
串、長くない?2mはあるしなんか鍔みたいなのついてるし…いいや、下がろう
五歩後に下がる
えいっ!バゴオオオオオン!!!!
目の前には浅く広めの穴が開き、煮え立つ溶岩がふしゅふしゅと火花を吹いていた
えぇ…
「ちょっと…やりすぎちゃったかな、ほら早く、淵にその串刺してよ」
あ、はい…
淵に串を刺し、その先にワイバーン肉を刺していく
10分もすれば辺りには馨しい香りがただよってきた
美味そうなのが悔しい、私はここでまた死ぬのだ
またも理由がステーキで死んでしまうのだ
これ…どうやって食べようかな
「ナイフ、無いと食べにくいでしょ?私は人の食器とかは箸と皿くらいしか持ってないから…私の鱗だけど良ければ使って」
う、鱗か…でも…すごく綺麗
どこの鱗かはこの際聞かないでおこう
切れ味が良いのが見てわかるレベルだ
鱗の層の織り成すダマスカス模様が美しい
ありがとう、とりあえずケバブ的な感じで表面から削り取っていけばいいのかな?
…美味しい…いや美味しいよこれ…
何も味付けしてないのがすごく勿体無い…
美味しい…お腹壊すとかどうでもいいくらいに美味しい…
噛めば噛むほど旨みと脂が広がる
脂はしつこくなく、するりと消えるように喉へ落ちていく
これがなんたらワイバーン肉…
さっきの霊王草の葉で巻いて食すと更に霊王草のシャキッとした食感と涼やかな香りが鼻腔をくすぐりつつなんたらワイバーン肉にほどよいアクセントを加えてくれる
もう…心残りはないな…
死んでもいいや…って私もう死んでるじゃん…
「ちょっと!大丈夫!?起きて!帰ってきて!戻ってきてよ!!!ねえちょっと!!!」
「つめたい…!?」
勝手に殺すな
「あはは、いやだってそんなに幸せそうな顔してるし死んでもいいとか言っちゃうしつい…ね」
かくして、異世界初の食事は
前世で思い残した事を溶かしていったのだった
カンナビスはもっとグリーン