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きみがすきだったけれど
ばかみたい、というか本当にばか。
泡立つこころを鎮めようとして、目を閉じて頭を空っぽにしようとするけど、できない。
こういうとき、自分の大好きなものの記憶ー読み古した愛読書の世界であったり、焼きたてのスコーンの匂いとか、お気に入りの曲のリズムであったりーは一切 頭から吹き飛んでしまう。
聞こえるのは、ただ動揺してどくどくと脈打つ自分の鼓動と心の中の悲痛だけ。
衝動に堪えきれなかった。でも、そんなので済むものじゃない。
サム。わたしの幼馴染。彼はわたしの憧れだったのだ。
わたしにはないものを持ち合わせていたから。
彼は最初、私の一番の友達だった。私は嬉しかった。彼のようなひとと仲がよくなれたこと。
けれど、そのうち、わたしたちの仲には亀裂が入った。なぜ、どうして?わたしは未だに考えている。
わたしはわからなくて、諦めきれなくて、ついに衝動に駆られて行動してしまった。
それが彼の心を抉るかもしれないとうすうす感じながら。
傲慢だ。
偽名を使ったけれど、彼もきっとわかっている。
わかっているなら、こたえてほしい。
どうしてわたしにあのことばをかけたの?