-散り終わるまで後一日-
彼は私のことが好きでもないし嫌いでもない。だけど私は彼が好きだ。
そんな彼が私の告白を受け入れてくれた、たった一週間だけだけど。
一緒に登下校して、休み時間に何気ない会話をする。仲が良ければ誰でも出来るようなことだけど、彼はそんな関係を誰とも築かなかった。なのにクラス一なんてことの無い私なんかの願いを叶えてくれている。
しかし後一日、つまり今日で終わりなんだ。その最後の日に私は彼をデートに誘った。最初で最後の私と彼のデートが始まる。
始まったと思ったらもう終わりが近づいていた。時間は誰もが同じく平等に分け与えられるものだけど、あまりにも時間の経過が早すぎる。
「そう落ち込むなよ、楽しくなかったのか?」
「楽しかったよ!楽しかったから、今日が終わるのが寂しい。ううん、辛いかな。」
もうすでに彼の前では化けの皮が剥がれていた。でも気にしない、だって今日まではどんな私でも一緒に居てくれるから。それに彼の笑顔は演じている私じゃ引き出せない。
「誠也君は楽しくなかったの?」
「俺も楽しかった。」
彼の言葉を信じたいけれど、今日まで一度も笑顔を見せてくれなかったから、やっぱり私といてもつまらないんだって思ってしまう。露骨に私が落ち込み始めたのを見たからか、彼は珍しく困った顔をしていた。
「えーい、やけくそだぁ。この仏頂面男が~。」
彼の頬を引っ張ったり、指で押してみたり、無理やり口角を上げさせたりする。彼はそこまでやっても笑わなかったから、最終手段を使うことに。
(私の渾身の変顔をお見せしてやる。)
「この顔を見て、笑わなかった人は今までいないからね!どうよ!」
「ああ・・、凄いな。」
そ、そんな。笑うどころか感心されちゃうなんて、恥ずかしさで穴があったら入りたいくらい。
「小夜、ありがとな。」
そう小さな声で、でも私には確実に届く声で彼は呟いた。初めて私の名前を呼びながら、僅かに微笑む顔は今まで見た彼の表情の中で一番心に残っている。
「私の名前、知ってたの?」
「そりゃそうだろ、俺の彼女なんだから。」
「そういや、いつかの答え言ってなかったな。」
「俺はお前と、小夜と付き合えてよかったぜ。何もない俺の世界に、お前は彩を加えてくれたんだ。大分、大雑把な色だったけどな。」
私は彼の前で、二度目の涙を流した。涙と一緒に桜が散って行く。




