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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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アリア・ザ・ブレードマスター

そう言えば書くの忘れてたんだけどセラの服はちゃんとリオネルで買ってます。ユーリくんは鬼畜ではない

  アリア・ザ・ブレードマスター。それがその女の子の名前らしい。もちろん自称である。外見年齢は俺とセラの中間ぐらいらしく、髪色は黒と赤。その戦い方から魔剣の射手と呼ばれているらしい。

 自称してる名前からして既にやばい奴臭がしているが、この子が変人と呼ばれる所以は別にある。というのもアリアは超がつくほどの武器マニア(斬属性に限る)らしく、興味のある武器や新しい武器を見るとちょっとやばいぐらいの行動をするらしい。ようはウェポンフィリアという奴だ。

 その様子はアリアの外見が美少女だから尚更やばめに写るらしく、その結果アリアによってくるのはその能力目当てか身体目当ての奴らだけ。そして、そんな奴らすら結局は扱いきれなくなって今はフリーになっているらしい。

 イゴールから話を聞いた際は、やっぱりやめよっかなーと思ったのだが、まあまずは行ってみろ駄目だったらまた探すの手伝ってやるからと言われ、半ば強引に送り出された次第である。

 さて、そんな訳でリオネルの端のほうにある居住区へとやってきた俺たち。アリアがいるのはそんな中でも更に端にある一軒家で殆ど町外れみたいな場所だった。

 まずは扉をノックしてみる。ドアノッカーがガンガンと予想より大きめな音を立てるが、反応は無い。だが気配を探ると中に人がいるのは間違いない。どうしようかとセラの方を見るとセラは俺に向かってコクコクと首を縦に振って見せた。どうやら行けという事らしい。

 俺は念のためにもう一度ドアノッカーを鳴らしそれでも反応が無いのを確認してから、ゆっくりとドアを開けた。

「おじゃましまーす」

 声をかけながらドアを開けると、鍵はかかってなくあっさりとドアは開いた。気配は奥の部屋にあるので、声をかけながらそっちへと向かう。

「アリアさーん。冒険者ギルドの方から来ましたー」

 何か詐欺師みたいな言い方になってしまったが、相変わらず反応は無い。そのまま奥の部屋の扉を開ける俺。ここまできたら今更引く気はない。

 奥の部屋に入った瞬間目に飛び込んできたのは大量の武器だった。標準的な剣から、刀身の曲がったハルペーみたいな武器まで、刃のついた様々なものがそこかしこに置かれ、足の踏み場もないほどだ。

 そして、その部屋の隅っこに少女が一人立っていた。髪の色からもこの家の主であるアリアで間違いないだろう。腕の中には大剣。そして、口の端にはよだれ。気配で解ったが、さっきまでこの子は大剣を抱き枕のように寝ていたのだろう。だが、俺がこの部屋に入り込んだ瞬間その気配に反応して飛び起きた。

 あのよだれのつき方からして完全に熟睡していたはずだが、それでも気配を感じるのは流石である。これは戦闘能力にも期待ができそうだ。問題はアリアの目線が今にも俺たちに飛びかかろうとしている猛獣のようなものだというところか。

「なによ、あんた」

「ああ、俺たちは」

「覚悟は出来てるんでしょうねー、あぁん?」

 寝起きだからかお宝部屋に入り込まれたからか、その声は剣呑で、更に言うなら殺気だっていた。こっちの話もまったく聞く気配が無い。

「とりあえず、磔にしてから話は聞いてあげるわ」

 そんなアリアの言葉と共に、突如空中にいくつもの武器が浮かびあがる。そして、それが一斉にこちらへと射出された。その数は合計で五本。しかも、マジで俺に当たるコースだ。殺意高すぎだろ。

 だが、それでもこの身体ならば充分に対処の使用がある。見せてやるよ、これが空手最強の守り技(俺の中で)、回し受けじゃー!

 俺は両手を円のように動かしながら、手のひらで飛んできた剣の軌道を変える。そして、俺から僅かに逸れたそれらは鋭い音を立てて後ろの壁へと突き刺さった。後ろにセラがいないのはもちろん確認済みである(まだ部屋の外にいる)。

 うむ、我ながら完璧な受けだった。人間だった時には確実に無理だったろうけど、今なら漫画みたいに火炎放射器の炎ですら捌けそうだ。

 とりあえず、構えを維持したまま敵意が無いことを伝えようと、アリアの方を見ると、先ほどと様子が百八十度変わっていた。

 なんだか頬は上気し、息遣いが若干荒くなってるし、目線が熱い。ついでに寝起きだからか若干服がはだけている。何故か解らんが何かエロい。しかも、アリアは美少女なのでまるでエロ漫画の一シーンみたいになってる。

 そんな状態のアリアが言葉も発さないで、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。怖い。え、何、どういう事?

 とりあえず、怖いので後ずさる俺。しかし、当然ながらアリアは止まらない。更に言うなら俺の背はすぐさま壁へと当たった。

「ちょ、落ち着こう? な?」

 俺はそう言うが、やはりアリアの耳には入ってそうにない。そして、ついに手が届く距離まで来たアリアは、ゆっくりと俺へ腕を伸ばし、

「んんっ!?」

 その熱い吐息を俺に当てながら、そのまま俺のファーストキスを奪ったのだった。更にそのまま俺を押し倒しつつ、服の中に手を入れてくる。

「んー!? んー!?」

 もう訳が解らずパニックになる俺。何だこれは。俺が転生した世界はひょっとしてエロ漫画の中だったのか? というかこれ男と女の配役逆では? とりあえず、撫で回そうとしてくる手を全力で抑えながら、言葉も出せない俺は目線でセラへと助けを求めるが、

「わ、わ、わー」

唯一の救いは、両手で顔を隠しながら指の隙間から完全に観察している漫画とかでよくある形態へと移行していた。

 こうなれば頼れるのは自分だけである。致し方ない。今は緊急事態。俺の貞操の危機なのだ。そんな風に覚悟を決めたのと、俺の口内へと温かい何かが侵入してこようとしたのは同時であり、

「んんー!」

俺は正当防衛という名の元、アリアへと空手チョップを打ち込んだのだった。

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