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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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初めてのダンジョン

 冒険者がお金を稼ぐ方法は様々だ。便利屋のように誰かの依頼をこなしたり、ギルドからもたらされたモンスター討伐の依頼を受けたり、様々な場所を探索したり。

 そして、その探索する場所は大きく三つある。一つはモンスターの巣。一つは遺跡。そして、最後がダンジョンだ。

 モンスターの巣はその名の通りモンスターの巣であり、モンスターが大勢いる代わりにその素材や散っていったものたちの遺品が主な収入となる。ギルドでは特定のモンスターを一定数狩るごとに報酬が出ることもあり、意外とこれが人気らしい。

 遺跡はかつて存在した神代と呼ばれる時代の人たちが残した建物であり、魔法では説明のつかない様々なアイテムが多く存在している(恐らく科学用品だと思われる)が、警護用のマシンが数多く配備されているらしく、見入りはでかいが危険も大きい。

 そして、ダンジョン。これも神代の時代に造られたものであり、内部にはモンスターやマジックアイテム、宝箱や罠など、所謂俺たちが考えるダンジョンである。しかも一定周期で内部構造含む全てがランダムで一新される所謂不思議系のダンジョンである。

 ダンジョンはそのランダム性ゆえに稼ぎが安定しない代わりに、内部で手に入る魔道具マジックアイテムが魅力の一つとなっている。俺が城から拝借したこの水が無限に湧き出る皮袋や無限に使えるたいまつもその類らしい。

 貨幣の価値といい頭に入っている知識と実際の内容に若干の齟齬がある気がするが、まあ、何せ知識を残したのが滅ぼされたとはいえ魔王様なのだから、その辺は仕方が無いのかもしれない。

 ともかく、そんな訳で俺たちは早速ダンジョン探索に赴くことにした。


 俺たちがやってきたのはリオネルから徒歩で半日ぐらい東に行ったところにあるダンジョンだ。ダンジョンはその性質上何度でも挑む事が可能だから、街から近いダンジョンの周りには簡易的な集落みたいになっているところが多く、ここもその一つだ。

 現代で言うプレハブみたいな建物やテントが並ぶ中、俺たちは早速ダンジョンに入る事にした。相変わらず周りからは結構見られているが、ギルドの時のように突っかかってくる奴らはいなかった。

 ダンジョンの入り口は洞穴のようになっており、その洞穴に入って直ぐのところに魔方陣があった。これは転移の魔方陣で乗ってから五秒後に作動するため、パーティがはぐれる事は無く、内部にある脱出用の魔方陣は一瞬で作動するため、安全性も優れている。

 何かレクリエーション施設みたいな親切設計だななどと思うが、まあ、便利な分には文句のつけようもない。

「じゃあ、行くぞ、セラ」

「はい」

 セラに一声かけた俺はワクワクしながら魔方陣へと足を踏み入れ、そして俺たちの初ダンジョンアタックは始まったのだった。


 視界が一瞬ブラックアウトし、その闇が消え、俺たちがいたのは出口の二つある小部屋だった。部屋の大きさはゲームで例えるなら縦横三マスづつぐらいで、左右に通路が続いている。

「さて……」

 ここからは意識を多少切り替えていく。何せ俺にはセラがいるのだ。後ろから奇襲されたりするような事は絶対避けなければいけない。ゲームのようだがダンジョンでの死亡例も普通に存在するのだ。

 本当はセラを置いてきて、俺一人で潜った方がいいのかもしれない。だけど、その間にセラに何かあったら困るし、そのような事を遠まわしに提案したところ、非常に悲しそうな顔をしながら、

「ユーリさんに従います」

などと言われ、とてもじゃないが俺には無理だった。考えてみればまだ幼いのに一人になってしまったのだ。例え怖い人(誤解)だろうが知ってる人の傍にいたいのかもしれない。

 というわけで、周囲の気配を探るが、今のところは問題なさそうだ。

「んー、セラはどっちにいったらいいと思う?」

「私ですか? えっと……」

「あ、直感でいいよ」

「じゃあ、右で」

「よし。それじゃ右のほうに行こう。セラは俺のちょっと後ろからついてきて」

「はい」

 というわけでまずは探索を始める。一応セラのために松明は持ってきているが、今のところ壁自体が薄明かりを発しているため問題なさそうだ。

 そのままちょっと進むと今度は十字路に出た。うへー、流石ダンジョン。今度は相談無しで更に右へと曲がる。道筋覚えておかないとなー。

 更に進むとまた小部屋に出た。他に出口は見当たらず、行き止まりのようだ。だが、その中央には宝箱が一つドンと置いてあった。ゲームの時には特に何も思わなかったがリアルで見ると不自然さマックスである。

「宝箱ですね」

 セラはそれを見てちょっと嬉しそうにそう言った。俺もその様子にちょっとほっこりする。だが、ここからが問題だ。というか俺も今気づいたんだが、

「駄目元で聞くけどセラって宝箱にかかった罠とか外せる?」

「ごめんなさい……」

「まあ、当たり前だよな……」

 そう、俺たちには致命的に探索係が足りてなかったのだ。完全に戦闘の事しか頭になかった。しまったな。

 悩むけど、とりあえずあけてみる事にする。宝箱の魅力には勝てなかったよ。

 一応セラには部屋の隅に離れてもらい、俺が宝箱を開けることにする。

「うーむ」

 ぱっと見た感じ罠はなさそうだ。箱に触っても問題ない。大きさもかなり小さいし、中に何らかの仕掛けがある可能性も低そうだ。っていうかこれは安全な宝箱なのでは?

 そんな事を思いながら、俺は宝箱を慎重に開けた。それは普通にあっさりと開き、中には短剣が一つ置かれていた。俺がそれを認識するのと、スコンという音が前方からしたのはほぼ同時だった。

 宝箱に意識を集中していた俺にとって完全にそれは不意打ちであり、壁から発射された矢は、見事に俺の頭部へと一直線に飛んできたのだった。

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