調停者会議3
「という訳で調停者としてみんなも協力してくれないかな」
全ての説明を終え、カノンはそう言った。確かにここにいる面子は調停者の名を持つ言わば管理者だ。だったら今回の事にも協力してくれる。というのはやはり楽観すぎたようだ。
「…………」
無言のまま席を立ったのはベルゼルガと呼ばれた黒白髪の男だ。
「ベルゼルガ」
カノアがその名を呼ぶ。するとそっちへと鬱陶しそうに目を向けてベルゼルガは言った。
「話は聞いただろ。後は勝手にやってくれ。俺は雑魚とつるむ気はねえんだ」
「でも、このままだとこの世界がピンチみたいよ?」
「知るかよ。弱けりゃ死んで強けりゃ生き残る。それだけだろ」
モニカの言葉にもう顔も向けずにそう言ったベルゼルガはそのまま窓から飛び降りていった。
うーむ、気難しそうなやつだ。一回ぶっ倒せば仲間になってくれるのだろうか。あいつめっちゃ強そうだけども。
んで、目線を戻してみれば、何人かいなくなっていた。みんな気配の消し方が凄い。普通に帰っていってもいい気がするけど。
残ってるのはゼノとバンホルト、モニカとエレミア、ルージュとゴードンにカノアとヤクモだ。
「俺はもちろん協力するぜ」
「調停者としての責務を果たすのみ」
何故か俺を気に入ってくれたゼノとカノンに何か思うところがあるっぽいバンホルトは了承してくれた。
「私ももちろん協力するよ」
そう言ったのはエレミアだ。これで三人。だが、残りのメンツは帰りはしなかったものの協力してくれるかは微妙な感じだ。
「僕はまだ貴方たちを信用できない。だから答えは保留にさせてもらいます」
「そうねぇ。私もカノンはともかくそっちの坊やは判別つけかねるわ」
ゴードンとモニカがそう言う。それにルージュとカノアは頷いて同意を示した。
「試すか」
ヤクモがそういう。
「そうですね」
「いいと思いますわ」
「ん……」
それに他の連中も同意した。
「そんじゃ、それは俺にやらせてくれないか?」
「え?」
そう言ったのは何故かゼノだった。お前は協力してくれる側じゃないのかよ。
「兄貴に負けてから俺も久しぶりに鍛えたからよ。ちょっと試してみたいんだわ」
「おいおい」
消耗してたとはいえ四人がかりでやっとだったゼノとタイマンするのか? ちょっときつくない?
「まあ、妥当なところか」
「そうね」
「頑張ってね、お兄ちゃん」
だが他のみんなは賛成なようだ。っていうかカノンお前まで……。
「それじゃ、地下に移動しようか」
「地下?」
なんでまたそんなところに。下手したらこの城壊れるぞ。そんな俺の心配とはよそにカノンは笑顔で言った。
「この城の地下はやばいやつを閉じ込めるように何重にも結界がはってあるの。もめ事を解決する時とかにもよく使うんだよ」
「マジか」
バンホルトとか見てると閉じ込めるより抹殺って感じだったけどな。まあ、考えてみたらこいつらが地上でまともにやりあったらそれこそやばいか。
「じゃあ、移動する」
カノアがそう言った次の瞬間。俺たちは既に円卓部屋から消えていたのだった。




