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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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調停者会議2

 目の前の部屋の中から感じる強大な存在感。正直既に帰りたい。しかし、そういう訳にも行くまい。特にバンホルトとか話をつけておかないとまたいつ殺しに来るかも解んないし。そんな訳で、

「お邪魔しまーす」

 と、少々緊張感にかける言葉を吐きながら俺はゆっくりと扉を開いた。もちろん、意識は完全に臨戦態勢である。そんな俺に突き刺さる十二の視線。

 見るに全員が着席していることからこの十二人がメンバーで間違いないだろう。そのうちの二人はもちろん緑神の少年のゼノと、筋骨隆々の白髪の男バンホルトである。

 そして、彼らの中心、俺の真正面にいる黒髪の少女。彼女がカノンの妹であるカノアなのだろう。その目は何て言うか、控えめに言って怒ってる気がする。気のせいだといいな。

「ふうん、これが」

 そんな言葉をつぶやいたのはウェーブのかかった黄髪の女性だった。ちょっと雰囲気がソフィアに似ている。もちろん存在感は段違いだが。

 俺がそっちに目を向けるとその女性は妖艶な笑みを浮かべた。今、何か仕掛けられたというのが解る。もしこの特別製の身体じゃなかったらかかってたかも。

 でもそれと同時に解るのはこの女性はそれを意識してやったわけではないということ。もし、本気でこの女性が能力使ったらこの身体でも通るかもしれない。

 改めて化け物ばっかりだな。ってかこれ仮に逃げようとして逃げられるのか?

 そんな心配事をしている俺とは別に、カノンはいたって普通に俺の後ろから出てきて声をかけた。

「久しぶりね、モニカ」

「ふふ、本当に久しぶりだわ。どの面下げて戻ってきたのかしら」

「あれ、怒ってる?」

「どうだと思う?」

 黄髪の女性、モニカはそう言いながらも楽しげに笑っている。恐らく前からこんな感じだったのだろう。

「お姉ちゃん」

 その時、カノアが唐突にそう言った。それにカノンはモニカから視線を外しちょっと申し訳なさそうに笑いかける。

「ごめんね、カノア。久しぶり」

 その言葉にカノアは口を開きかけて、でも何を言えばいいのか解らないのか言葉に詰まり、結局何も言わなかった。ただ、何故か俺を睨みつけた。何で?

「ちゃんと全部説明するよ。これまでの事も、これからの事も。でもまずは紹介してもらっていい? 私も何人か知らない人がいるし」

「解った」

 カノンの言葉に頷くカノア。どうもお姉ちゃんっ子みたいだなカノアは。俺を睨んでるのも俺にカノンを取られたとか思ってるのかもしれない。まあ、説明すれば勘違いも解けるだろう。

「ゼノ」

 カノアが最初に紹介したのは緑髪の少年だった。というかゼノだった。

「よう、兄貴。こないだは悪かったな。知ってると思うが俺はゼノだ」

「兄貴?」

「おう。調停者サーティーンになってから負けたのは初めてだったからな。素直に兄貴と呼ばせてもらうぜ。よろしく頼むわ。今度、稽古つけてくれよな!」

 そう言って親しげに笑いかけてくるゼノ。何故か懐かれたらしい。ひょっとすると俺の魔人空手に興味が出たのかもしれない。まあ、友好的なのはいいことだ。

「次、エレミア」

「はいはい」

 名前を呼ばれてこっちにひらひらと手を振ってくれたのは青と緑の混ざった髪のツインテールの少女だった。混じり方は珍しく、っていうか混ざっていない。右半分と左半分で綺麗に色が別れている。

「私はカノンちゃんとも初対面なんだよね。まあ、二人ともよろしくね」

 そう言ってニッコリ笑うその表情からは邪気は感じ取れない。何か凄いいい人っぽいな。

「次、ゴードン」

「はい。どうもゴードンです。よろしくお願いします」

 そう言って礼儀正しくお辞儀をしたのは赤髪の少年だ。人が良さそうな笑みを浮かべてはいるが、警戒もしているのか必要最低限の挨拶で終わってしまった。まあ、まだ他にいっぱいいるしな。

「次、ベルゼルガ」

「…………」

 ベルゼルガと呼ばれたのは黒と白の混ざった混色の髪の男だった。返事もせずにこっちを一睨みすると退屈そうに目を閉じてしまった。

「次、ヴェロニカ」

 呼ばれたのは銀髪の少女だ。ただ、こちらも一瞥だけして何も喋らない。その一瞥も義理を通すために仕方なくぐらいのあれだった。まあ、やっぱ一筋縄じゃ行かないよなぁ。

「次、クルーエル」

「慣れ合うつもりはない。我は話を聞きに来たのみ」

 そう答えたのは黒と緑の髪の男だった。その視線は確かに中立だった。敵意や悪意はないが善意や好意もない。言った通り話だけを聞きに来たのだろう。

「次、バンホルト」

「…………」

 白髪の大男、バンホルトもやっぱり無言。ただ、俺じゃなくてカノンに対して僅かに頭を下げた。

「次、ルージュ」

「お初にお目にかかりますわお二方。わたくしはルージュ・ド・ゼクス・エインフェリア。以後お見知りおきを」

 そう言って優雅に頭を下げたのは白と青と金の髪の女性だった。その髪型はロールしており、俗にいうお嬢ロールというやつだ。名前もなんか長いし由緒正しい何かなのかもしれない。

「次、モニカ」

「ふふ、よろしくね」

 そう言って笑いかける黄色の髪の女性はさっきカノンと話していたモニカだ。ってか笑いかけるたびに何かしてきている感覚があるのはひょっとして自動発動系の能力なのだろうか。

「次、キルシュタイン」

「ふうむ……」

 呼ばれたのは黄銀の髪の男だった。この面子の中で唯一眼鏡をかけている。流石に目が悪いという訳じゃないだろうし何らかのマジックアイテムかもしれない。

 しかし、キルシュタインは何も言わずにこっちを見て何事かを考えている。っていうか部屋に入った時からずっとこっち見てるんだけど何なの? ちょっと怖いわ。

「最後、ヤクモ」

「よろしく」

 最後に呼ばれたのは黒と赤と黄色と銀というこの面子の中で最も髪色が多い青年だった。多分男、だと思う。フランみたいに女の子みたいなんじゃなくて、凄く綺麗で中世的な顔立ちの人物だ。

 その挨拶はいたって普通で短かった。どんな奴かはまだ判別がつかないな。ただ、直感でなんとなく解る。多分この中だとこいつが一番相手にしちゃいけない奴だ。

「お姉ちゃん、これでいい?」

「うん、ありがと」

 そんな一応の自己紹介(?)も終わり、さてここからがいよいよ本番である。

「さて、それじゃ折角集まってもらったんだし、ちょっと私たちの話を聞いてもらうわよ。自己紹介もかねてね」

 そう言ってカノンはユーリとカノンとヴァラハギカ、三柱の神の物語を話し始めたのだった。

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