調停者会議1
暗い暗い雰囲気に、幾たびの風雨にさらされ今にも崩れそうな外壁。そんな幽霊でも出そうな外観の城に今、俺はいた。
隣にいるのはカノン一人でセラたちの姿はない。あっちはアリアとセラの修行の為にフランと一緒にダンジョンに潜っている。
フランが付いているとはいえ心配は尽きないが、ヴァラハギカを討つにあたりどんな危険が襲い掛かってくるかは解らない。だから多少危険でも俺たちは強くならなければならないのだ。
それに俺の方だって決して安心とは言えない。何せ今から会う面子は……。
「お兄ちゃん、ひょっとして緊張してる?」
俺のそんな不安を見透かしたのかカノンが声をかけてくる。
「そりゃ、まあ、一回殺されかけたしな。そんなあのバンホルトみたいなのが十人以上いるんだろ? 緊張するなって方が無理だ」
そう、この城は一見朽ち果てた城にしか見えないが、その実はバンホルト達十三の調停者の会合場所となっている。外観はただのカモフラージュで、実際中は魔法で保護されてるのかピッカピカである。
十三の調停者。かつて世界を守るために記憶のなかったカノンが作った組織であり、その活動内容は主に不穏因子の抹殺。そして、一人一人が魔王の中の魔王らしい。要するに化け物の集団である。
そんなところに俺たちが来た理由は二つ。一つは俺たちの安全の確保。この先もあんな風に襲撃されたんじゃたまったもんじゃないからな。
もう一つはカノンによる正式な説明と、ヴァラハギカ討伐のための協力者確保のためだ。実際、活動内容に積極的なのは半数ぐらいで残りは色々あるらしく、全員を味方にするのは無理だろう。
だけど、バンホルトレベルの協力者が増えるのはかなりありがたいので一人でもこちらに引き込んでおきたいところだ。
ちなみに今この調停者たちを統率しているのはカノンの妹であるカノアという少女らしく、その子は確定で仲間になってくれる。と思ったのだが、カノンの反応は思わしくなかった。まあ、最後にあったの百年以上前の話らしいしな。
「ところで、タブーとかあったりするのか?」
できれば穏便に済ませたい俺はそんな事をカノンに聞いてみる。
「んー、一人ひとり個性豊かだからなぁ。いきなり殺しにかかってくる奴もいるかもしれないし、まあその時は頑張って一緒に逃げようね」
「おいおい……」
「実際、私も解らないんだよね。面子が入れ替わってる可能性もあるし。私、今まで外の様子は最低限しか確認してなかったから」
「なるほどな」
結界維持の時の事はぼんやりしか知覚できなかったみたいだし仕方がないか。ちなみに今、結界の方はユーリの力とカノンの力を合わせて強化してある。なので、カノンが離れても大丈夫なのだ。
そんな事を話しているうちに目的の場所、円卓の間へとついた。
「マジかよ……」
ついた瞬間俺が感じたのは圧力。ただそこに存在するだけでプレッシャーを感じたのだ。恐らく中の連中の誰かが俺たちが来たのを察してわざと気配を隠すのをやめたのだろう。
こんなのがマジで十人以上いるのかと改めてやばさを実感する。これはマジで逃走経路は確保してないとまずいかもな。
「準備はいい?」
「ああ」
俺の言葉を聞いたカノンがゆっくりと扉を開ける。そして、俺は十三の調停者たちと邂逅したのだった。




