女子会
ユーリが各々の部屋を回り、会話を終えた後、その日の夜
「…………」
女子陣は何故か同じ部屋に集まっていた。
ちょっと不機嫌そうにカノンを見るアリア。その二人を見て少し困った顔をしているセラ。いつも通り笑みを浮かべているフラン。そして、この女子会の発起人であるカノンである。
「それで? これは何の集まりなのかな師匠?」
「女子会よ」
フランの質問に胸を張ってこたえるカノン。尚、その胸は張ってもお察しレベルである。
「女子会、ですか?」
「ええ、男を抜きにして親睦を深めあう異世界の儀式よ」
「異世界……つまりユーリがいた世界だよね?」
「そう。よく解んないんだけど、女子会をすると仲が深まるらしいのよね」
そう言ってちらりとアリアを見るカノン。その視線を受けて不機嫌そうにアリアは言う。
「何よ」
「んー? 何って言われても私は貴方とも仲良くしたいのよ。だってお兄ちゃんが好きな子たちだもの」
アリアの言葉に笑顔で答えるカノン。フランもだが、神として悠久の時を過ごしてきたカノンはそれ以上に精神性が大人びている。なので今の言葉は完全に心の底からの言葉だった。
「ま、まあ、ユーリにも言われたし、私もあんたと喧嘩したいわけじゃないし」
そして、アリアは二人と比べるまでもなく精神年齢が低かった。ユーリが好きな子と言う認定だけでちょっと、いや、だいぶ機嫌がよくなっていた。実にちょろい少女であった。
アリアが一瞬で陥落(彼女の名誉の為にユーリの言葉があったことも影響していることを記述しておく)したのを見つつ、次に口を開いたのはセラだった。
「カノンさんは、その、ユーリさんと恋人だったんですか?」
「あ、それはボクも気になるね」
「…………」
セラのその質問は三人ともが気になっていることだった。ユーリの説明では家族になったとだけ聞かされていたし、実際カノンはユーリをお兄ちゃんと呼ぶ。しかし、男女の関係とは解らないものだ。
果たしてその言葉にカノンは答える。
「んー、恋人っていうか。そもそも私たちは精神生命体みたいなものだったから、人間でいうところの当てはまる言葉がなかったのよね。一番近い関係だから便宜上家族って言ってるけど」
「そうなんですね」
セラはその言葉を聞いて安堵の息をついた。幼い少女らしい真っ直ぐさである。それよりも数年長く生きているアリアは気づかれないように息をついた(セラ以外は無論気づいている)。そして、フランはいつも通りである。だが、
「でも今はお互い器があるし、恋人みたいなことをするのもいいかもね」
「「!?!?」」
続いたカノンの言葉でフランも含めた三人の表情が驚愕と焦りに染まる。それを知ってか知らずかカノンは続ける。
「あ、もちろん順番とか私はどうでもいいわよ。私はお兄ちゃんのナンバーワンじゃなくてもいいの。だってオンリーワンだし、ね?」
そう言って三人に悪戯っぽく笑いかけるカノン。どうやら知ってるどころか確信犯だったようである。
「私、やっぱりあんたは嫌いだわ……」
「私は好きなんだけどなー。もしアリアとユーリがくっついたらアリアお姉ちゃんって呼びたいな」
「おねえ、ちゃん……!?」
未知の衝撃を受けるアリア。すぐに案外悪くないかもしれないという表情になる。二回目だがやはりちょろい少女であった。
「師匠、ボクは?」
「フランはフランでしょ」
「酷い塩対応!?」
「あ、あの、私は」
「セラはお姉ちゃんって感じじゃないのよね。むしろ私の事をお姉ちゃんって呼んでみてほしいな」
「カノンお姉ちゃん?」
「…………」
「師匠?」
自分でセラに呼ばせておきながら動きを止めたカノンを不思議そうに呼ぶフラン。それにカノンは首を振った後、
「何でもないわ。ただ、他にも家族が増えるってだけ」
「???」
カノンの言葉の意味が解らず首をかしげるセラ。そして、事情を知っているフランは何も言わない。ちょうどそのあたりでお姉ちゃん呼びの衝撃から帰ってきたアリアが会話に加わったことで、四人はまた騒がしくも姦しい女子会に戻っていったのだった。




