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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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冒険者始めました

 道中色々なことをセラから聞いた。まずセラの能力。セラは混色系でその髪色は金と緑、つまり回復と防御の合わさった能力が使えるはずだが、まだその能力は発展途上で治癒しか出来ず、尚且つ回復も多少の怪我なら治せる程度らしい。

 この世界ではどうも能力に目覚めるとその能力名が自然と解るらしく、セラの能力名は楽園創造(イデアル)というらしい。何かめっちゃ強そうなのでぜひこれからに期待したい。実際回復と防御とかめっちゃ便利そうだし。

 次にこのあたりの地理。何でそんな事を聞くのか不思議がっていたがとりあえず教えてくれたセラによると、俺が生まれた場所を中心に西に行くとザトリア帝国、東に行くとアイベルン王国、南にいくとギヤマン商国があるらしい。ちなみにここはほぼ北であり、ここより北には大きな国は無いらしい。

 そして、俺が向かっていたのは西で帝国側。そして、奴隷商人どももそちらに向かっていたようなので、とりあえず俺たちは南を目指すことにした。理由は単純に色んな人種が集まって一番動きやすそうだからである。

 他にも、いろいろ聞いたんだが、まあ雑談も多かったからそれはまたおいおいで。後は、持ってたアイテムに驚かれた。水が無限に湧き出る皮袋とか、ライトみたいに火をつけたり消したり出来るたいまつとか。何か結構な高額アイテムらしい。てっきり荒らされた城に残ってたもんだからたいしたものじゃないと思ってた。

 そう言えばその水袋で思い出したが、セラはどうやら身体が生身だからか食事や水分補給など、その生活は殆ど人間と変わらないみたいだ。その事に驚いたら変な顔をされたので、ちょっとそれ以上話を聞くことは出来なかったのだが

 まあ、そんな感じで話をしながら旅を続け(食料は保存食だ。意外と美味しい)三日後に俺たちはギヤマン商国の北の入り口であるリオネルに辿り着いたのだった。


 その街の最初の印象は予想していた以上の賑やかさだった。人が多いし、店も多い。もちろんエルフとかドワーフとかそんなファンタジー種族もわんさかいる。あまりにも普通にその辺にいるせいか、それとも事前知識のせいか、とがった耳を見つけても感慨とかも特になかった。

 とりあえず、まずは拠点の確保である。こちらの相場はある程度セラが知ってたので、部屋はすんなりと確保できた。城に残ってた硬貨も僅かながらの資金だと思っていたが、贅沢をしなければしばらくは充分に暮らせる額だった。

 ちなみに確保した拠点は安宿で、ベッドは二つあるが部屋は一つである。二部屋とるのは現実的では無いと俺とセラの見解も一致した。ぶっちゃけ俺たちは今贅沢を言ってられるような状況ではないのだ。なにせ二人ともプー太郎である。その上、俺に出来るのは空手だけ。セラも回復はできるが、この世界では珍しい事ではない。そんな訳でまずは職探しである。

「ちなみにセラは、働いた事は?」

「ごめんなさい。料理とか掃除ぐらいなら家でしてたんですけど……」

「だよねーー」

 まだ若いし致し方ない。となると、俺も男だ。いっちょロマンを追い求めてみるか。

 そんな訳でやってきました冒険者ギルド。ファンタジーといえば冒険者だよね。実際、遺跡の探索や魔物の退治などこの世界で冒険者のやる事は多い。それに加え、ちょっと自分強いのでは? と気づいたので少し難しめな依頼をぱぱっと終わらせてお金稼げるかなーと思った次第である。

 セラと二人で店内に入ると、その場にいた全員の視線が俺たちに注がれた。俺はともかくセラはまだ幼いしそれに加えて二人とも混色だからだろう。だが、その視線の中に特にやばそうな奴はいなかった。俺より全員弱い、多分。

 とりあえず、二人で受付へと向かう。ギヤマンの北の入り口だけあって、結構な人数がその場にはいた。情報交換したり依頼を見にきたりとそんなところだろう。

 受付にいたのは笑顔を浮かべたお姉さんだった。こういうところは現代とも変わらないのかな? でも、このお姉さんの笑顔は優しそうって言うよりやり手っぽいものを感じる。

「あのー」

「はい、なんでしょうか?」

「冒険者になりたいんですけど、どうしたらいいですかね?」

「何か推薦状などはお持ちですか?」

「いえ、特に何も」

 ついでに言うなら身元は明かせない。滅ぼされた国の魔族だって名乗ってもいい事なさそうだしな。

 受付のお姉さんはちらりと俺の後ろにいたセラを見たが特に何も言わず説明を続けてくれた。

「でしたら、必要書類に記入して貰ってから試験を受けて貰い、それに合格すれば冒険者になれますよ。冒険者になると、立場は保障されますが、逆にギルドの方針には従ってもらうことになります。それでもよろしいですか?」

「問題ないです」

「そうですか、では、こちらへ」

と、お姉さんが俺たちを案内しようとした時だった。どかどかと荒々しい足音が響き、四人組の男がギルドへと入ってきた。恐らく冒険者なのだろうその男たちはなにやら受け付けに報告しようとして、そして、俺たちを見つけてちょっと驚いた顔をした後、大声で笑い出した。

「おいおい、ここは子供が来るような場所じゃないぜ。おうちに帰ってママのおっぱいでも吸ってな」

 男のリーダーらしき男がそんなテンプレ台詞をはく。その男に怯えたのかセラが俺の服をぎゅっと掴む。だが、俺はこの世界にきて何度目になるか解らない、感心をしていた。何なんだこのお約束なイベントは。ちょっと面白くなってしまったぞ。

 という訳で俺もセラをかばうように前へ出て男に言い返した。

「俺はもう子供じゃないし、あんたより強いぜ」

「ひゅー、こいつは驚いた。どうやら口だけは達者みたいだ」

「口だけだと思うか?」

 あえて挑発的な言葉で言い返す。すると男はにやりと笑って受付のお姉さんへと声をかけた。

「おい、こいつに試験は必要ねぇよ。俺が見てやる」

 そう言って男は俺に向かって指をくいくいと曲げた。かかって来いということらしい。受付のお姉さんは何も言わない。というか、最初から表情すら変わらず笑顔のままだ。目の前の男よりも得体が知れない感が出てきたが、まずは目の前だ。

「あんたを倒せばいいんだな?」

 あくまで強気な俺の態度に、流石にリーダーの男もちょっと面食らうが、他の三人、いやこの場にいる全員がすっかり観戦モードだ。そして、セラはくいくいと俺の袖を引っ張り続けている。心配性だなー。俺は大丈夫の意味をこめてセラの頭を撫でると、そっと、その手を外した。さて、準備は整った。

「じゃあ行くぜ?」

「おお、こいこい」

 そう言って向かい合った男は、迎撃体勢をとった。いや、身体は動いていない。だが、能力を発動させたのだ。なぜか俺にはそれが解った。相手の髪の色は緑、つまり防御系。何だかんだ言いながら、能力による防御も計算のうちだったというわけだ。

 まあ、この世界ではこの能力があるから、子供でも弱いとは限らない。それでも男が俺たちを侮ったのは、それだけ自分たちに実力があると思っているという事だ。まあ、慢心なんだよなぁ。

 だが、相手の能力がどれくらいか解らない上に、やりすぎるのは駄目だと頭パーンが脳内をよぎる。くそっ、調整が思ったより難しそうだ。

 そんな、俺の姿に今更怖気ついたのかと外野から野次が飛んでくる。仕方が無い。まずはちょっと小突いてみよう。ボクシングじゃないが所謂ジャブ的な感じで。よし、行くぞ。

「はっ」

 俺は相手の胴体にめちゃくちゃ手加減した掌底を放った。男はそれをかわす気が無いらしく全く動かない。俺の掌が相手の腹部へとめり込む。そして、そのまま男は後方へとすっ飛んだ。

 どんがらがっしゃーんって感じでテーブルと見物人を巻き込む男たち。え、何かクリーンヒットしたぞ? 感触的に内蔵は損傷させてないはずだが。

「…………」

 しんと静まり返る周囲。誰も何も言わない。そして、男が立ち上がってくる様子もない。どうも、かわす気が無いんじゃなくて反応できなかっただけみたいだ。しかし、この空気どうしよう。

 俺が内心ちょっと焦っていると、声を発した者がいた。受付のお姉さんである。周囲が呆然としている中、やはり最初と変わらず、受付のお姉さんは笑顔で俺たちに言った。

「あ、じゃあ、試験は終わりましたので、こちらの書類に記入してくださいね」

 その言葉を聞き、俺は思った。やっぱこの人ただものじゃねぇわ。

 こうして、俺とセラはCランクの冒険者となった。

一応ランクはFからSSSぐらいを想定しています。いきなりCになったのは倒した男がCランクだったからです

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