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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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セラとの対話

「ちょっといいか?」

 アリアのところから抜け出した俺は今度はセラのところへ赴いた。

 元々、一度全員と話はするつもりだったのだ。アリアは機嫌が悪そうだったから最初に尋ねたわけである。ご機嫌取りとか言ってはいけない。

「あ、はい、大丈夫です!」

 セラのオーケーが出たのでドアを開けて中に入る。部屋の中はアリアの部屋と大して変わらない構造だった。まあ、カノンが作ったものだしな。

 セラはさっきのアリアと同じようにベッドに腰かけていた。まあ、椅子より柔らかいしそんなものなのかもしれない。

 なのでまあ、アリアの時もそうしたしという理由で俺もセラの横に腰かけた。そして、セラの方を見る。

「え、えっと、何か用ですか?」

 何かセラはちょっと焦っていた。顔も若干赤いし、あれ、距離を間違えたかな?

 しかし、冷静に考えるとそもそもセラとこうやって二人で面と向かって話すのは久しぶりだった。最後に二人で話したのってまだフランと一緒になる前だ。

 その時の事を思い出して俺もちょっと顔が赤くなりそうだった。ユーリと融合してなかったら危なかった。二人で見つめあうとかいうラブコメみたいなシチュエーションになるところだった。

「セラは、カノンの話聞いてどう思った?」

 なのでとりあえず本題に入る。セラは多分俺たちの中で一番常識人だ。だからこそ、結構な衝撃があったんじゃないかと俺は思っている。

 俺の質問にセラはちょっと首を傾げた後、

「正直、まだよく解らないです」

 と言った。

「だろうなぁ」

 何せいきなり世界のピンチだもんな。俺もユーリの記憶がなかったら正直信じたか微妙なレベルだ。

「でも!」

 俺がそんなことを思っているとセラが少し強めの声を出した。いつも控えめなセラにしては珍しい音量で。

「私が、少しでもユーリさんの役に立てるなら、頑張ろうって思ってます」

「セラ……」

 その言葉に、セラなりの本気を感じて、正直俺はどうしていいか解らなかった。

 セラの気持ちは嬉しいし、実際、セラがいないと拠点を作ることができない。それは解ってるのだが、出会った時に助けられてからセラはどうも俺に対して負い目のようなものを感じているような気がするのだ。

 気にするなとは言っているのだが、実際俺がいなかったらセラは奴隷として売られて酷い生活をしていたのだろうと想像することは難しくない。だから、俺もそれ以上どう言えばいいのか解らない。

 俺がそんな事を考えながらどう伝えればいいのか悩んでいると、それを察したのかセラが言った。

「ユーリさんは気にしなくてもいいんです。私がやりたい事をやってるだけですから」

「本当に?」

「はい!」

 思わず返してしまった質問にはっきりと返事をするセラ。その反応に俺はまた言葉を詰まらせてしまう。

 無理をしてほしくない。自由に生きてほしい。その俺の思いはきっとセラに伝わっている。その上でセラは手伝ってくれると言っている。

 だけど、セラにそれ以外の選択肢があったのかと言われると、無かった気もする。かといってこれ以上セラに何か言うのも違う気がするのだ。言葉って難しい。

 だからせめて俺はセラに言った。

「解った。じゃあ、何かして欲しいことがあったら言ってくれ。俺にできる事なら頑張るからさ」

「え!? 本当ですか!?」

 俺の言葉にセラが驚きの声を上げる。なんか、ちょっと予想してた反応と違うな? 俺にできることだぞ?

 とかちょっと弱気になる俺。そんな俺にセラはちょっと躊躇った後、

「じゃあ、頭を撫でてもらってもいいですか?」

 そう言った。どんな無茶ぶりが来るのかと身構えていた俺はそれに少し拍子抜けした。まあ冷静に考えると、セラがそんな無茶ぶりをするわけなかったな。フランとかアリアに毒されたのかと心配したぜ。

「それぐらいならいつでもな。ほら、おいで」

 俺はそう言ってセラの小さな体を抱き寄せ、その金と緑の混ざった髪を優しく撫でてやった。

「わわわ……」

 セラは最初こそ身を固くしていたが、すぐにリラックスしたかのように身体から力を抜いた。ユーリも俺も妹的な存在がいたからか、自分でもちょっと手馴れてるなと思わなくもない。

 だけどまあ、セラが気持ちよさそうだからいいか。と、俺はしばらくの間セラの柔らかな髪の毛を撫でてあげていたのだった。 

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