アリアとの対話
しばらく失踪してましたが帰ってきましたのでまたちょこちょこ書いていきます。よろしくお願いします
「アリア、今いいか」
俺はそう尋ねながらアリアの部屋の扉をノックした。
今、俺たちがいるのはカノンが存在していた、世界と世界の狭間にある空間に、カノンの疑似楽園創造で作った楽園である。
流石に本来の使い手ではないうえに、少しでもヴァラハギカの復活を遅らせようと力を使っているカノンのそれを楽園と呼ぶには些か以上に過言であるが、まあ、とりあえず一戸建ての家ぐらいにはなった。
そんな仮拠点をゲットした俺たちは、とりあえず全員の行動を決める前に三日ぐらい時間を取ろうという話になったのだ。
フランはともかくセラとアリアはいきなりすぎて困惑してたみたいだし。
そんな訳で様子を見にまずはアリアの部屋を訪ねた次第である。
「いいけど、なに?」
「とりあえず入るぞ」
声をかけて扉を開ける。こういう時にお決まりなラッキースケベも特に起こらず、アリアは普段通りの服装でベッドに腰かけていた。部屋は広くもなく狭くもなく、ベッドや机にテーブルなども置かれている。
俺がどこに座ろうかちょっと悩んでいると、アリアがちょっと横にずれてスペースを開けた。流石にそれをスルーすると怒りそうなので素直にアリアの横に腰かける。
「…………」
「…………」
さて、何から話せばいいのか。まあ、気になってることを聞けばいいか。
「アリア、ひょっとして嫉妬してるのか?」
「……バカ」
俺の言葉をアリアは否定しなかった。まあ、そうだろうなとは思ってたけど。セラはアリアより先に一緒だったし、フランはあくまで二人を尊重してたからな。いきなり出てきた(アリアから見たらそう見えるだろう)カノンにちょっと思うところがあるのだろう。
そして、俺はと言えばこの状況にちょっと困ったなぐらいにしか思ってない。これは眠っていたユーリの魂と同化したからだと思われる。簡単に言うと落ち着きを手に入れたのだ。もちろん、俺は有坂悠里であり、ついこの間までは童貞丸出しだったが、まあ精神年齢だけがちょっと増えたというイメージだな。
その結果、女性経験に落ち着きのある童貞とかいう意味の解らない何かが生まれたわけだが。ユーリとカノンがそういう事してたのかは解らないしな。まあ、とりあえず今はアリアである。
「最初に会った頃の態度はどうしたんだよ。殺そうとした後にいきなり人の事押し倒してキスした挙句に舌まで入れてこようとしたのに」
「あれは……あの時はまだ、よく知らなかったし、お互いに……。でも、ユーリにはもう弱い所も全部見られてるから」
「なるほど」
乙女だなぁ。アリア。めちゃくちゃ可愛い。でもここで押し倒そうという思いが全く沸いてこないのが童貞の所以である。あるのは落ち着きだけで勇気はないのだ。そうだよ、俺はヘタレのままさ……。
「思うに」
「ん?」
「私、多分対人関係がめちゃくちゃ素人なのよ。今まで私の事を理解してくれた人も、理解してくれようとした人もいなかったから。その、初めてできた好きな人たちとの関係に戸惑ってるっていうか……」
「ふむ」
「私はユーリの二番なんだーってずっと思ってたから、そこが揺るがされたのも大きいんだけど」
「二番?」
「もちろんセラが一番よ」
「ああ」
俺もだけどアリアもセラには甘いなぁ。
「まあでも、あの子もユーリにとっては大事な人なんでしょ?」
「まあ、な」
もう文字通り他人事じゃないしな。
「だったら、私も折り合いつけるわよ。そのための三日間のクールタイムだろうし」
「そっか。じゃあ来たのは余計なお世話だったな」
「それ、本気で言ってる?」
「はい?」
「はぁ……まあ、別にいいけどね。ただ、セラには優しくしてあげなさいよ」
「?? それはもちろん」
よく解らんが、まあ、言われるまでもない。
とりあえず頷く俺を見てアリアはようやくいつもの笑顔を浮かべた。そして、これもまた見慣れたニヤニヤ笑いで言った。
「あ、そういや一つお願いがあるんだけど」
「ん、どうした?」
「実はあのラグナロクって凄い魔剣見てから身体が火照って仕方がないのよねー、って遠い!」
もう身体がの段階で俺はドアの前まで避難していた。
「そういうのは自分で解決してくれ! じゃあな!」
これ以上いつも通りに戻ったアリアにからかわれてはたまらないので俺は颯爽とアリアの部屋を去るのだった。
まあ、最後のやり取りはきっとアリアなりの気遣いなんだろうな。最後に見えた表情はいつもの病気を発症してる時の奴だったが俺は無理矢理にそう思うことにしたのだった。
アリアは本当にシリアスと性癖のギャップが大変だぜ。




